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異世界だろうが教師の在り方は変わらない  作者: 物語 紡
1時間目 異世界教師
5/160

5.騎士見習

 マコトは街を探索していた。考えてもスキルが変わるわけでもないし悩むのも俺らしくないという考えにいたり、当てもなく進んでいた。

 歩いているとなんとも香ばしい良い匂いがしてくる。嗅いでいるだけでおなかは「ぎゅるるる~」とうなり空腹を感じ始めた。その匂いにつられてふらふらっと進むと酒場が見えてきた。



 マコトはその酒場に入り適当に空いている席に座ると

「いらっしゃいませ~!ご注文はお決まりでしょうかぁ~!」

 と元気のいい店員に声をかけられた。

 いつもの調子でマコトは「とりあえず、生を一つ」と頼みそうになるのを間一髪で止まる。



(待て待て、落ち着け俺。ここは異世界、生なんて言って伝わるわけねぇだろ)

 しかし残念なことに店のメニューを見てもどれ一つとして聞き覚えのない単語しか書かれてないのでどれを注文したもんかと悩むことになる。

 実は異世界では日本と違う言葉が使われており、会話などのコミュニ―ケーションを取るうえで言語を理解するのは必要であるため神様の能力で言語理解能力は与えられていた。

 しかし読み書きに関してはその影響を受けない。だが、マコトは自身の持つスキル『全知』を無意識に発動しており、その結果メニュー表に書かれている文字を理解することが出来ていたのだ。

 当然無意識に発動しているため、マコトは言語が理解できる理由は知らないし、本人は何か理解できるな程度にしか認識していない。



「とりあえず、この店のおすすめを頼む」

「かしこまりました~!少々お待ちくださ~い!」

 ウンウン悩みつつ、最終的に最も無難かつハズレをひかない返答をした。

 定員がそういうと駆け足で厨房のほうへ向かった。ああいう元気な店員がいるだけで仕事の疲れが吹き飛ぶのだろうとマコトは思った。



 待っている間暇なだったためマコトは『全知』の力を使ってひたすら情報収集していた。

 そして分かったことは、ここはラインハルト王国の首都ドゥーベルといい貿易が盛んだそうだ。そしてここは王妃が治政を行う国で代々女が国王となるらしい。また、ここは魔法の世界ではあるが魔力を持っているのは全体の半数で魔力なしはどこにでもいるみたいだ。他にも一通りのこの世界での一般常識を調べていた。



 この世界で過ごすだけなら『全知』はかなりありがたい能力だなと感じているとマコトはふと気づいた。

(俺、この世界での金なんか持ってねぇ!)

 マコトは急いで懐に入っている財布を取り出し見るとそこにはキラキラと輝く金貨が入ってあった。『識別』を使うとそれはこの世界での金だった。おそらく転生する前にあの神様が入れてくれていたのだろう。俺は人生で初めて神に感謝した。



「お待たせしましたぁ~!当店一番人気のジャイアントマウスのから揚げです」

 そうこうしているうちに頼んだメニューが来た。この世界にもから揚げは存在するんだなぁ。

 飯はかなりおいしくさらにお手頃な値段だった。懐もさほど痛まず済んでよかったよかった。

 帰り際に店員に一番安い宿を聞いたところ

「それなら『ウサギ亭』が最も安いですね!この道を進んで三本目の道を左進み後はまっすぐ進むだけです!」

 というのでそこへ向かうとする。



 酒場から出て小一時間、端的に言うと道に迷った。

 マコトは特に方向音痴であるわけではない。

 だが、店員が教えた道をしっかり進んでいるのだが、この王都が広すぎたのと道が複雑だったため、まっすぐ進むことが出来ないのだ。一体どういう神経をしていたらあのグネグネとしていた道を真っすぐと言えるのだかと一人マコトは愚痴りつつも、当てもないのでとりあえずひたすら進む。

 それがどんどん迷う原因だと気づいているのだが、進み過ぎて引き返すことが出来なくなっているのだ。

 そうこうしているうちに道が開け、空き地についた。そこには一人の青年がいた。

「ふん!はっ!・・・せいっ!」

 大きく踏み込んで剣を振り下ろし、その勢いを殺さないように刃を翻して振り上げる。そのまま袈裟切りにつなげ、遠心力を乗せたまま横なぎを行おうとして

「って・・・どわぁ!」

 盛大に転んだ。



「おいおい、大丈夫か?坊主」

「あっはい!大丈夫です。お見苦しい姿を見せても申しわけございません」

 マコトが駆け寄り声をかけると青年は立ち上がりながら元気に言葉を返してきた。

 短く切りそろえられた茶髪に快活な笑顔、歳は十六、七といったところだろうか。

 見たところ全身汚れていて汗もダラダラかいておりかなり長い時間訓練していたと思われる。

「そんなに泥だらけになってまで剣の訓練とは精が出るなぁ」

「いえいえ、まだまだ僕なんか。騎士見習の中でもかなり弱くてもっと努力しないと足りないぐらいです!それに僕には魔力がないので剣術を極めるしかないんです」



 この世界で魔力なしは珍しいことではないので特に何も思わなかったが青年の前半の言葉に真は驚いた。

「えっ!お前見習いなの!?」

「はい!早く一人前の騎士になるためにまだまだ努力しないといけません!」

 青年は再び剣を構えると先ほどと同じ訓練を行った。そして、先ほどと同じところで盛大に転んだ。

「いてて・・・また失敗かぁ~」

 そういいつつも青年はへこたれずに何度も何度も同じ訓練行った。いろいろと試行錯誤しながら高みを目指して努力していることがわかる。

 そんな青年にひかれるものを感じた。手を貸してやりたいと思った。



「体重が膝に乗りきってないからだ」

 マコトの言葉に青年は驚いた表情をした。まさか訓練に対して口を出されるとは思ってもいなかったのだろう。そこらの騎士なら誰かもわからない男の言葉に耳を貸したりはしない。しかし、青年は真面目だった。かけられた言葉には返すのが礼儀と思っているため無視するという選択肢は存在しなかった。

「いえ、それだと踏み込みが上手くいかないんですよ」

「つま先と剣先が同じ方向を向いていないからだな。今さっきは踵に力が入りすぎてて他の部分がおろそかになっていたからそこを意識して変えるとできると思うぞ」

「なるほど・・・やってみます!」



 青年は言われたことを実践してみると先ほどとは打って変わって体制は崩れず転ぶことはなかった。

「おぉ、できた!できました!」

「よかったなぁ、それじゃあ俺はこれで」

 目的の宿に行くためこの場を離れようとすると慌てて青年が引き留めた。

「あっ、待ってください!お礼をさせてください!」

「いいよ、大したことしてないし」

「いえ、受けた恩は返すのが騎士ですから。ぜひお礼をさせてください!」

「わかったよ。じゃあ、『ウサギ亭』って宿の場所を教えてくれ」

「!そこならちょうど僕も泊っているのでぜひ一緒に行きましょう」

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