3.異世界転生
「異世界に行く気はないかってどういう意味だ?」
「言った通りの意味じゃよ。お前さんが住んでいた世界とは別の次元の世界。そこに転生してはみないか?まぁ、正確には転移に近いがのぅ」
ファンタジーな状況下でさらにファンタジーな展開になってきた。アニメや漫画の主人公なら即決で異世界転生を望みそうだ。しかし、マコトには一つ疑問があった。
「なんで俺なんだ?」
どう考えてもマコトのような人間よりも適切な人材がいるのではないかと考えてしまう。
それこそ、ファンタジーなどに抵抗しない高校生あたりが良いのではないか。なぜにもうそろそろ三十を超えそうな人物を選ぶのか。
「一つ勘違いがあるようなので訂正しておこう。神とは人々の死ぬ時期が分かる。天寿を全うするのか、それとも病死か殺人か、はたまた己で命を絶つのかとのぅ。しかし、お前さんのように意図せぬ死、つまり事故死はわしら神でもわからんのじゃ。そういった人物にこの提案をしておる」
自分がまるで選ばれた存在みたいな発言をした数十秒前の自分を殴ってやりたい衝動に駆られる。
マコトは気持ちを切り替えるように別の質問をした。
「その異世界ってのはどんな世界なんだ?」
「簡単に説明すると剣と魔法のファンタジーな世界じゃ」
(王道な世界観だな。まぁ、そのほうが分かりやすいし楽しそうだ。となると、もう一つのお約束もあるのか?)
「もちろん、転生する際はわしから力を授けてやろう」
「心読まれるのはいい気がしないが会話が早く成立するのはいいな。それで、どんな力をくれるんだ?」
「ふむ、それはわしにもわからん」
詳細を聞いてたところ、そんなことを言うのでおちょくられているのか考える。
すると考えを読んだ神様は慌てたように説明を補足する。
「すまん、言い方が悪かったわい。正確には力を授けるのではなく力を開花させるが正しい」
「言ってる意味が分からん」
「誰しも人には才能が存在するのじゃ。しかし、その才能を開花させるのはほんの一握り。それをわしが無理やり開花させてスキルとして扱えるようにするのじゃ」
つまり、喧嘩の才能なら戦うスキルが、物を作る才能なら創作スキルがってことになるのだろう。?何だかめんどくさく感じる。神様ならばパッと望んだ力を与えられないものかと考えてしまう。
「神とて万能ではないってことじゃよ。それでどうする?行くのか?」
マコトはあまり考えることがなく割とすぐに答えが出た。
「まぁ、せっかく神様から第二の人生をくれるってんだから、ありがたくもらうとするよ」
なんだかんだ言いつつもマコトは楽しみにしていた。異世界転生なんて普通出来るような体験なのだ。心躍るというものだろう。
「では決まりじゃな。それではそこの魔方陣に乗るがよい」
さっきまで何もなかったところからいきなり地面に幾何学模様が浮かんだ。
「あっ、待ってくれ。さっき魔法の世界って言ってたけど俺は魔法は使えるのか?」
「そこは本人の素質次第じゃな。しかし、今まで送った者たちは問題なく使えておったし大丈夫じゃろ」
安心できる言葉ではないが、どのみちこの場で考えても仕方ないと割り切る。
そう考えマコトは魔法陣の上に乗る。
「それと伝え忘れてたが、スキルや魔力量は『ステータス』と唱えればわかるからのぅ」
「了解。そんじゃ行ってくるわ」
「うむ。お前さんに神の加護があらんことを」
いや、神はお前だろ!っと突っ込む間もなくマコトは光に包まれた。