8.敵の本拠地
クオリアたちが戦いが始めている頃
ヴァイオスたちはとある茂みに潜伏していた。
「団長、斥候によると伏兵の存在はなく敵はアジトにいると思われます」
「わかった、あとは合図があるまで待機だ」
「はっ!」
部下たちは武器を取り出して手入れしたり、ストレッチをしたりなどして各々時間をつぶしていた。
「レオン君」
「はい」
ヴァイオスが呼びかけるとレオンはすぐそばに来た。
今回、レオンはマコトの要望で騎士団と共にいた。
いつか騎士になるならこの機会に騎士団の雰囲気に慣れておけとのこと。
「君は騎士団に慣れてないだろうから今回は私の補佐として行動してくれ」
「わかりました」
緊張しているのか顔が若干こわばっている。
(さて、どうやって緊張を解いたものか・・・)
「緊張することはないさ!気楽やればいいのさ!」
「ジャ、ジャスパーさん!」
思案しているとレオンの肩に腕を回しながら話しかける人物がいた。
「ジャスパー、お前の持ち場はここではないだろ」
「問題ないさ、時間はまだあるはずさ!」
この男はジャスパー。ヴァイオスの補佐をやっており根っからのひょうきんものだ。腕はいいのだがどうにも緊張感が足りない。
「それよりも団長に聞きたいことがあるのさ」
「なんだ?」
「本当にここに盗賊団のアジトがあると思ってんのさ?」
その疑問は至極当然のものだった。
我が国での騎士団の追跡能力は自慢ではないがトップクラスだと心得ている。
そんなわれらが見つけられなかった盗賊団のアジトをジャスパーからしたらいきなり現れた男に見つけたと言われても信用する方が難しいだろう。
だが・・・
「安心しろ、マコトは私が認めた男だ。あいつが言ったのなら間違いない」
その言葉を聞いてジャスパーは面白そうに笑った。
「へぇ~、団長がそこまで言うなんて珍しいのさ」
「そうか?」
「そうさ!団長がそこまで信頼を寄せるなんて珍しいのさ」
「ヴァイオス団長に認められるなんて、やっぱり先生はすごい人ですね!」
レオンはマコトをのことを考えているのか、目をキラキラさせていた。
「一度会ったけど、確かに面白そうな奴ではあったさ!アジトの場所もしっかりとした理由付きで言ったしさ。それでもやっぱり疑ちゃうのさ、あんな場所にアジトがあるなんてさ・・・」
「私もマコトが言わなかったら絶対に信用してなかっただろうな・・・」
その時、東の方向で黒い炎が空に上がり、爆ぜた。
「お前たち、合図は上がった!準備はいいな!」
「「「おぉ~!」」」
「出るぞ‼」
ヴァイオスの掛け声でこの場にいる騎士団約三十名が一斉に飛び出す。
三日前
「悪いわね、ヴァイオス。来てもらっちゃって」
「いえいえ、クオリア王女の呼び出しとあればいつでも馳せ参じていただきます」
「フフフ、ありがとう」
ジャスパーを連れて、クオリアのお屋敷へヴァイオスが向かったところ、その屋敷の主たるクオリアとマコトの二人がいた。
「それで今回はどういったご用件で?」
「団長は忙しい合間をぬってきたので出来れば手短めに頼むさ」
「こら、王女様に失礼であろう」
「いいのよ、騎士団長であるあなたの方が忙しいのは事実だから」
ジャスパーの頭を小突くがクオリアは笑って流す。
「今回、あなたを呼んだのは盗賊団についてよ」
「!まさか、アジトを突き止めたのですか!」
「えぇ、マコトが見つけてくれたの」
クオリアは手で座るように促すので、とりあえず座らしてもらう。
「それでどこにあったのですか?」
「待って、順を追って説明するから落ち着いて?マコト、説明お願い」
私たちは被害に遭った村の調査の話を聞いた。
「・・・んで最後の村では、俺は別行動して備蓄庫に向かった。食料を譲ってほしいと言ってそこで麦や果物を買い込んだわけなんだが・・・」
「ちょっと待つさ、話を聞く限りアジト発見に至る情報は全く出てこないさ!」
ジャスパーは長々と話しているマコトにしびれを切らして、テーブルを力強くたたいた。
同じことを思った。今聞いた情報は我々も調査してわかっていることであり、資料を見たはずのマコトもそのことはわかってるはずだ。
「まぁまぁ落ち着け。正直、最初の村当たりの話はいらなかったけど一応経緯は説明しておこうと思ってな。ここからが本題だ、俺の話に違和感は感じなかったか?」
「いや、特に何も変なところはなかったが・・・」
マコトの話を思い返すが特に何も変なところは無かった。だが、マコトがこう言うのであれば何かしらあったのだろうがあいにくと全く思いつかない。
「最後の村で俺が麦や果物を買ったって言ったろ?それがおかしいんだよ」
「?何がおかしいのさ?どこの村にあってもおかしくはないと思うさ」
「そうだな、思うことがあるとすれば盗賊団の被害に遭ったのに他の人に食料を分け与えることが出来るのは復興が進んでいる証だと思うぐらいだ」
「じゃあ、これを見てほしい」
そう言って、マコトは手に持っていた紙を机に置いた。
それは最後に訪れた村の農産物だ。
「・・・何もおかしいな点はないと思うが」
もう一度読み返しても特に変なところは無い。主に育てている農産物が芋類としか書かれてないし・・・
「芋類しか育ててないのに、なんで麦だとかがあるんだ?」
「!」
マコトの言葉を聞いて、もう一度資料は見返した。
その村に育てている作物は芋類。それだけだ。
「そんなもの、他の村から買っただけさ」
「他の村でも盗賊被害があるのに何で買うことが出来んだ?街に行っても今は価格が高騰していてとても庶民が買える値段じゃないぞ」
「まさかと思うがマコト、盗賊団のアジトは・・・」
「あぁ、アジトはこの村だ」
(まさかアジトが村だったとは・・・)
今まで隠れ家などを考えていたせいで盲点としか言いようがなかった。
「じゃあ、なんで最初に盗賊団の被害に遭ったって報告したさ!」
「そうすれば、襲われた村が盗賊団に関係しているわけがないって先入観が生まれるだろ?」
事実、我々はその村が盗賊団とは全く思いもしなかった。相手の作戦は成功したといえるだろう。
だが、こうなってくると問題が出てくる。
「例え村人が全員盗賊団の仲間だとして、どうやって証明する?普通に捕えようとしても我々はただの村人だって言い張るはずだ」
「なぁに、簡単な方法がある」
マコトは一拍おいて、言った。
「騙せばいいのさ!」
騎士団全員が盗賊のような恰好をして村の正面から入る。
すると、村人がたくさん出てきた。
老人が一人、前に出てくる。多分、村長なのだろう。
「おぉ、おかえり。成果はどうだった?」
私は事前に用意した食料を無言で渡す。
部下たちも袋を掲げて、他にも戦利品があることをアピールする。
「よくやったお前たち。よし、今日は村を上げて祝杯とするぞ!」
老人は後ろにいた村人たちに声をかけると一斉に声を上げ、盛り上がり始めた。
「なるほど、本当にこの村にいる人、全員が盗賊だったというわけか・・・」
「ん?何か言ったか?」
「悪いが今回の祝杯は取りやめてもらおう。貴様ら全員、盗賊団の容疑で捕えさせてもらう!」
部下たちはいっせいに抜剣し、近くにいる人から襲い掛かる。
「抵抗するものは傷つけても構わん!ただし、殺すことは許可しない!」
「「「はっ!」」」
「き、貴様ら、まさか騎士か!?」
「気づいた時にはもう遅いさ!」
そういって、ジャスパーは背中に背負った二本の剣を巧みに操り、次々に制圧していく。
「お前たち、何をしている!武器を取り、敵を倒せ!」
状況を理解し始めた老人はうろたえながらもまだ無力化されてない者たちに声をかけていく。
「このまま、一気に制圧するぞ!」
「「「おぉ~‼」」」




