5.信じる心
「ただいまぁ~」
「おかえり~ってどうしたのさ?そんな疲れた顔して」
屋敷に帰ってきて出迎えに来てくれたコルナが驚いたように言ってきた。
(そんなに俺たちは疲れたように見えるのだろうか?)
「あぁ~っと、実はな・・・」
マコトはコルナに最後に訪れた村での事件のあらましを説明した。
「なるほど、そりゃ運が悪かったね。とりあえず食事の用意は終わってるから話の続きは食堂でしよ?」
「そうですね、お腹もすきましたので食事にしましょう」
そうしてマコトたちは食堂につくとそこではレオンがコルナの手伝いをしていた。
「あっ、お帰りなさい皆さん」
「おぅ、ただいま」
疲れたので挨拶は早々に席に着く。クオリアも同じように席についたが、メイドであるエリカとティナはコルナの手伝いを行っていた。
みんなに飯がいきわたったので食べ始める。
「それで何か収穫はありましたか?」
飯を食べ始めて少したってからレオンが今回の調査の結果を聞いてきた。
「それほど重要な手がかりなどは発見できませんでした」
「村人に話を聞いても盗賊団の居場所に関する手がかりは見つかりませんでしたね」
エリカとティナがお互いに今回の結果を説明した。補足するようになことは特に何もないので俺は黙っている。
「てことはまるっきり手掛かりなしってこと?」
「まるっきりないわけじゃない。多少は居場所の予想は出来る。ただそれでも、可能性がある範囲は広いし、確実にいるって保証もできない」
「それは手掛かりがないようなものだよね?」
その通りなのでぐぅの音も出ない。
沈黙が食堂を包む中、その空気をクオリアが破った。
「ごめんなさい、今日は疲れたからもう休むわね。ご飯美味しかったわ、ごちそうさま」
そう言って、クオリアは食堂から出ていきエリカもそれについていく。
「あの、王女様、どうかしたんですか?」
「ん?あぁ、レオンに伝えてなかったな」
マコトはコルナに話した内容をレオンにも話した。
「そんなことがあったんですか・・・」
「まぁ、あいつが表舞台に出れば遅かれ早かれこうなるのはわかってたことだが、思った以上に落ち込んでいたな」
「僕がここに来たのが二年前だけど、批判されたのを見たことが無かったから久しぶりに言われたんじゃない?」
「改めて自分の現状を確認して、落ち込んじゃったってところか・・・」
「何か王女様のためにできることはないんでしょうか?」
ティナが質問するがマコトは首を横に振る。
「これからあいつがどんなに実績を積もうとも批判は絶対にある。もしかしたらもっとひどい嫌がらせを受けることもあるかもな。多少なりともあいつを支えたりはしてやるが最終的に立ち上がるにはあいつ自身の力が必要だ。これぐらいでへこたれてるようじゃあ、王選で勝ち抜くことは出来ない」
「それでも王女様を助けようって意思はないんですか!」
突き放したような言葉にティナが立ち上がり怒り出す。
だが、意見は変わらない。
「これはクオリア自身が乗り越えるべきことだ。なら黙って見守るのが臣下の役目ってもんだろ」
ティナは何か言いたそうにしているが俺の言葉は正しいと思ったからなのか、反論の言葉は出てこなかった。
ティナはそのまま食堂から走って出ていった。
「先生、すいません。僕追いかけてきます!」
レオンが追いかけるように食堂を出ていく。
「青春だねぇ~」
「じじくせぇぞ、コルナ」
食堂に残された二人は茶を飲みながらのんびりしている。
「それにしてもマコト、少しひどいんじゃない?本当に手、差し伸べてあげないの?」
「んな必要ねぇよ。あいつなら絶対に立ち上がる。じゃなきゃ、まずあいつに仕えようなんて気が起きねぇよ」
「ふぅ~ん、ずいぶん信頼しているんだね。まだ会って数日なのに」
「お前こそ、クオリアのことを信頼しているからこそここに留まっているし、俺の言葉にも反論しないんだろ?」
「いやぁ~、僕は料理人だから。毎日、栄養満点の料理を提供するだけの人だから」
「嘘つけ。お前、生粋の料理人じゃねぇだろ」
コルナはマコトの言葉をはぐらかしたいのか口笛を吹きながら厨房に戻っていった。
ティナを追いかけて食堂を出たものの姿を見失ってしまう。
自分の部屋に戻ったのだろうかと考え始めたところに庭で体育座りをしているティナを発見する。
レオンは庭に出てティナに近づいたがなんと声をかければいいのかわからなかった。その場でおろおろしていると気配で察知したのかティナの方から声をかけてきた。
「私、ご主人様の言っていることが正しいことはわかっているんです」
うつむいた状態で話を続けていく。
「それでも、困っている人を助けたいって無性に思うんです。誰にも助けてもらえないのは寂しいですから」
その言葉には重みがあった。
奴隷としてどのくらい過ごしていたのかはわからないがその時の生活では味方がいなかったのだろう。孤独でいる辛さや地位によるいじめなども彼女は体験したのだと思う。
立場は違えどレオンにもわかる。平民ってことから教官に蔑まれ、同じ見習いからは敬遠されていた。
(もし、あの状態が続いていたら僕は自分の夢を諦めていたかも知れない。それでも・・・)
「大丈夫ですよ。先生は本当に困っているときはどんな人でもどんな状態であろうとも手を差し伸べてくれますから。先生が手を出さないってことは王女様は絶対に立ち上がるって信じているからだと思います」
今頃、王女様が立ち上がった後のことを考えて何かしら作戦を立ててくれてるのかもしれない。
「僕たちは僕たちに出来ることを頑張っていきましょう!それが王女様のためになると思います」
ティナはうつむくのをやめてこちらに顔を向けた。
「ありがとうございます、レオンさん。おかげで元気が出ました」
ティナは朗らかに笑いながらお礼を言ってきた。
「いえいえ、困っている人がいたら助けるのが騎士ですから」
二人は笑いあいながら屋敷に戻っていく。
「はっ!ご主人様にいやな態度をとってしまいましたが嫌われてはいないでしょうか!?」
「先生はそんなこと気にしないと思いますよ」
ティナが慌てているのがどこかおかしくてレオンは笑っていると頬を膨らませながら腕を小突かれてしまった。




