2.神の部屋
暗い。
とても暗い。
しかし、どこか心地よく普通ではありえない浮遊感を感じる。
そこでマコトの意識は覚醒する。
そこは不思議な空間だった。
照明や太陽があるわけでもないのに明るく、心地いい暖かさを感じる。全体的に黄色く視界を遮るものがない。というか何もなく黄色い空間が続いている。果てが見えない。
「どこだ?ここは?」
目を開けてみれば先ほどまでいたはずの場所とは似ても似つかないところにいる。なんで、こんな場所にいるのだろう。確か、考え事しながら帰ってたら突然なんかがぶつかってきた。そして、現在マコトは、不思議な空間にいる。
(うん、全然わからん)
「それはそうであろう。自分が認識する前に死んでしまったのだからのぅ」
そんなことを考えていると目の前に胡散臭そうな爺さんが現れた。
「誰だ、お前」
「初対面でいきなり胡散臭いとは失礼な男じゃのぅ」
どっからどう見ても胡散臭い。こんな奴が詐欺とかしても誰も引っかからないだろうというほど見た目が胡散臭い。
(・・・ん?つうか今、この爺さん、俺の心読まなかったか?)
「いかにも、お前さんの心を読ませてもらってるぞ。荒木マコト君」
その言葉にマコトは驚く。
(何もんだ、この爺さん。なんで俺の名前を知ってる?それにさっき俺が死んだとか言ってやがった が・・・)
「ほっほっほ、そう警戒するな。ちゃんと説明してやるからまずはそこの座布団にでも腰を掛けなさい」
そういって、この胡散臭い爺さんは何もない空間からちゃぶ台と座布団二つを出した。どう見てもこの不思議な空間にちゃぶ台と座布団ってあってない気がするがそこは口にはしない。
「さて、まずはお前さんの現状じゃな。先ほども言ったようにお前さんは死んでおる。覚えとらんかもしれんがお前さんはトラックにひかれて一瞬で命を落とした。そして、現世の魂は魂回廊と呼ばれる通り道を通って輪廻の輪に行きそこで時間かけて魂を浄化し転生させる。ここは魂回路の少し手前にあるわしの部屋じゃ」
「つまり、ここはあの世ってことか」
そう納得していると、爺さんは不思議そうな顔をしていた。
「思ったよりも冷静じゃの。ここに来たものは泣いたりわめいたり、または自分が死んだこと受け入れようとはしないものじゃぞ?」
「目が覚めたら不思議な空間にいて心読む爺さんに出会ったらたいていのことは受け入れられるよ。それに、死んじまったもんはしょうがねぇ。騒いだって結果が変わるわけじゃあるめぇし」
「ほっほっほ、お前さんは面白いのぅ。ここに連れてきてよかったわい」
マコトはそんな言葉を述べる爺さんに興味を述べる。
その言葉に俺は爺さんが何者かに興味を覚えた。
「そういや、まだ爺さんのことを聞いてなかったな。何もんだ?」
「わしはお前さんらでいうところ神様じゃ」
「はぁ?神様?」
マコトは改めて爺さんを見た。
ダボダボっとした白装束に胸まで伸びたひげ、よくよく見ていれば後ろから神々しい感じのオーラが出てる。確かに神様のイメージとは合致する。だが、なぜだろう。それを上回る程胡散臭さを感じる。
「お前さんは本当に失礼な奴じゃのぅ」
「まぁ、そんなことはどうでもいいや。それよりなんで俺をこんなところにつれてきたんだ?」
「お前さんが聞いたくせにどうでもいいとはなんじゃ。まぁよいわ。お前さんに一つ提案があるのじゃ」
神様は一拍おいてマコトに告げた。
「お前さん、異世界に行く気はないか?」