他国の少年
東棟も西棟とほぼ一緒だった。
違いと言えば、図書室が東棟の方はかなり広かったくらいかな?
図書室の中ではちらほらと黒制服の人もいた。
意外と内装とか豪華さとかの差はなくて、やっぱりそこも平等を謳ってるだけあるよね。
クラスメイト達は貴族がいっぱいというだけあって、どこかビクビクしてた。
そんな中で平常心なのは僕とメイーナだけ。
あ、ちなみにアッシュ君はめっちゃビクビクしながらも、相変わらずのギラギラした目で高位貴族を探していた。
うーん、同級生だからって、みんなが目を付けられないといいけど。
ぶっちゃけニコラは大丈夫だろう、士爵だもんな…
貴族だけど、アッシュ君は意識高い系だからな…
そういえば、この学院には保健室というものがないらしい。
怪我をしたら先生に言えば、光属性や聖属性で治してもらえるそうだ。
もちろん報告書は必要になるらしいけど。
後は生徒同士で練習がてら治すらしい。
その場合は先生か上級生が立ち会う事が必須。
でも保健室って体の怪我治すだけじゃなくて、心のケアもするイメージがあったんだけど…
そういう相談事とかはどうしてるんだろう?
そんな感じで東棟を見学し終えて、今度は演習場にやってきた。
うん、ここは前に来たところだね。
おや?そういえば…
「シェルネ先生、雪組と星組はどうしたんですか?すれ違ってないですけど…」
「単純に自己紹介や説明が長引いて、数分遅れでやってますよ。我々は西棟北階段と東棟南階段を使いましたが、星組は西棟南階段と東棟北階段を使ってるはずです。2組が同時に移動すると、他の生徒の邪魔になりますから。雪組もそんな感じです。どこかですれ違うかもしれませんし、このまま会わずに教室に戻るかもしれません」
あぁ、なるほど、そういえば廊下の端と端に階段あったもんな。
先生の説明に納得して、礼を述べてから校内見学に戻る。
演習場は全部で4つあり、第4演習場だけは申請書なしで好きな時間に使ってもいいらしい。
第1と第2は授業や試験用、第3は実験用だそうだ。
なので第3は結界が厚めに張られているとの事。
父様達、大変ですね…
ちなみに第4演習場でまた花組とすれ違った。
やっぱり花組指導員の先生、ダン◯ルドア感やべぇ…
あれが校長…じゃなくて、学院長じゃないとか。
あ、そういえば今日の入学式、学院長いなかったな。
代わりとか言って、学生指導員長とかいう学年指導の先生みたいな立ち位置の人が挨拶してた。
まだ学院長に会ってないんだよねぇ…
その入学式をやった講堂にやってきました。
うん、相変わらず広い。
ここでは主に式典とかを行う場らしい。
体育の授業で使うかと思ってた。
というか、体育なんてないのか?
教室に戻る途中、窓から下を覗くと、第4演習場に結構な人数が溜まっていた。
どうやら雪組と星組がかち合ったみたいだな。
…約15分遅れってとこか。
結局会えなかったし、今度星組の教室でも覗いてみよう。
「さて、大体の確認は出来たな。後は自分達で探検してみるといい。生徒が入れない場所は結界などが施されているから、入れるところは好きに見て平気だぞ!」
教室に戻って、セリウス先生が笑いながらそう言った。
なるほど、『いいか?絶対入るなよ?』って念押せば入る奴が現れるから、それなら最初から入れないようにすればいい、と。
きっと父様達が頑張ってるんだな。
…ぶっちゃけ僕ならその結界壊して入れそうだけど。
でもそんな事しません、父様に迷惑かかるからね!
「さて、今日はこれで終わりだ!この後は自分達で探検してもいいし、帰ってもいい。つまり好きにするといい!何か質問あるか?…ないようだな。では、解散!お前達に精霊様のご加護があるように!」
「皆さん、ご機嫌よう」
そう言って、先生達は教室を出て行く。
さて、僕としてはまず誰かに話しかけて友達でも作りたいところだな。
誰に声かけよう…あ、アッシュ君が隣の子に話しかけてる。
あ、隣の子、めっちゃ引き攣った笑いしてる。
…自慢話聞かされてるのかな…可哀想に…
「なぁ、お前、ユズキっつったっけ?」
唐突に声をかけられて、そちらに目をやる。
声をかけてきたのは、前に座ってた男の子だった。
確か彼、寝てた子だよね?
短髪の黒髪に、青い瞳。
ちょっとだけ褐色の肌の男の子は、なんだかエキゾチックな雰囲気を持っていた。
「うん、ユズキです」
「俺、ローグナー。他国出身で、去年この王国に移民してきたんだ。必死で勉強してここに入れたんだけど、月組ギリギリの19位でさ…出来れば来年も月組維持したいんだ。悪いんだけど、今度勉強教えてくんね?ユズキ、頭いいんだろ?」
へぇ、他国。
国名言わないなんて、結構遠くから来たのかな?
「一応次席だね。勉強なら勿論、いいよ。ローグナー君って呼んでいいかな?」
「呼び捨てでもローでもなんでもいいぜ。よっしゃあ、家庭教師ゲット!」
「家庭教師って…まぁ教える事で僕の復習にもなるからさ。それにこっちのメイーナは首席だから、彼女を頼ってもいいと思うよ」
「へぇ、首席!そりゃいいや、適当に座ったけど、ツイてるぜ。メイーナだっけ?ローグナーだ、よろしくな」
「…うん」
「…俺、歓迎されてない?」
「そんな事ないと思うけど…」
不安そうにこちらを見るローグナーに、僕は苦笑しつつ答える。
一方のメイーナは少し眉間に皺を寄せて不服そうにしていた。
うーん、呼び捨て嫌なのかな?
僕には呼び捨て強要したのに。
あ、もしかしてローグナーがちょっと馴れ馴れしくしてきたからかな?
まぁ徐々に慣れるでしょ。
よーし、早速男友達ゲットだぜ!