表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/363

刺繍と発覚

入学式当日。

僕はすでに裏門に来ていた。

ちょっと早すぎたみたいで、まだ誰もいないや。

今日は在校生も入学式に出席する。

だから兄様は嬉しそうだった。

一方で悔しがってたのは母様とフローネ。

父様は仕事で出席するけど、お忍び入学だから母様達が来る事が出来ない。

後、怒ってたのはメグ様。

実はメグ様にはお忍び入学の事、伝えてないんだよね。

噂通り、家に篭ってると思ってる。

だってバラして教室まで会いに来られたら困るもん。

なのでクラスメイトとなる事が出来ないと知り、激怒したらしい。

もし僕がクラスメイトになったら、毎日ずーっとベタベタしてたんだろうな…

なんであそこまで僕に依存するようになったんだろ。

ベティ様も不思議そうだった。


つまり学院内で知ってるのは、ルーファス達4人と兄様と学院長だけ。

デイジー嬢、シンディ嬢、ドロシー嬢にもまだ伝えてない。

彼女達は何かあった時に手伝ってもらう予定だ。

…一応、友達という立ち位置なんだけどもね。


「ユズキ君!」


名前を呼ばれたので、振り返る。

校舎側の方から、1人の白制服の女の子が近付いてきた。

あれは…


「…アリス様!」

「よかった、会えて…ご入学、おめでとうございます」

「ありがとうございます。あの、こんな朝早くからどうしたんですか?」

「会えたらいいなと思って登校していましたの。どうしても先日のお礼がしたくて…これ、受け取って下さいまし」


少し息を切らしたアリス嬢は、制服のポケットから小さな袋を取り出した。

それを僕に手渡してくる。


「これは…?」

「ハンカチです。刺繍は自分で入れました」

「刺繍を?態々ありがとうございます」

「私、刺繍が趣味でして…気に入って下さると嬉しいんですけど」


少し照れながら言うアリス嬢に促されて、僕は袋を開ける。

中に入っていたのは白いハンカチだった。

そんなに上質な生地ではないけど、平民が持つにはちょうど良さそう。

そしてハンカチを広げて驚いた。

薔薇の蔓が剣に絡まっている、複雑な刺繍だった。

凄いな、こんなのがこの歳で縫えるのか…


「凄い、綺麗ですね」

「男性が持つのに薔薇は如何かと思っていたのですが…大丈夫でしょうか?」

「勿論です、とても気に入りました!大切にしますね!」

「はいっ!」


ふわりとアリス嬢が微笑む。

うーん、やっぱりなんか癒される。

こういう娘が側にいてくれると心休まるよなぁ。

なんかこう、ときめくとか惚れたとかじゃないけども。


「それでは、そろそろ私も戻りますね」

「はい、態々ありがとうございました。またよろしくお願いします」

「はい、それではまた」


軽く会釈をしつつ、アリス嬢は校舎に戻っていった。


それから暫くして、続々と人が集まってくる。

とりあえずアッシュ君に絡まれないようにしよう…

あ。


「メイーナさん、おはよう」


相変わらずの三つ編み瓶底眼鏡のメイーナさんが裏門に到着した。

うん、黒制服を崩す事なく着てるね。

メイーナさんは僕を目に止めると、一瞬固まった。


「お…は、よ…」

「…どうかした?熱でもあるの?」


様子がおかしかったので、心配になる。

普段はしないけど、鑑定スキルでちょっとチェックさせてもらおう。

何か大変な病気だと困るからね。


ーーーーーーーーーー

【鑑定結果】

メイーナ(メイーナ=カルデラ)


職業・リリエンハイド王立学院生(第1学年)

称号・カルデラ公爵家庶子

年齢・12歳

属性・火/水/風/雷/無

HP・1085/1085

MP・1270/1270


状態・なし

ーーーーーーーーーー


…おっつ、見ちゃいけないもん見ちゃったよ…

しかも普通に健康だった。

えっと、庶子って確か正妻以外の人に産ませた子とかって意味だったよね…

…あれ?カルデラ公爵って聞いた事あるような…


「あ、金髪碧眼縦ロール」

「は?!」


僕が声を上げた内容に、メイーナさんが目に見えて動揺する。

…もしかして、該当の人物がわかっちゃったのか。

しかもその人を苦手としてるっぽい?

そうだよ、あのぶりっ子の公爵令嬢がカルデラだったわ。


「あぁ、ごめんね、ちょっと思い出しただけだから…」

「…その人に、覚えがある、と?平民なのに?」

「あー、えっと…この前、見かけたんだよね、そんな感じの令嬢を」

「…何故、今」

「やぁ、首席と次席じゃないか。もう仲良くなったのかい?」


メイーナさんの言葉を遮るように、声がかかった。

勿論聞いた事のある声で、振り返ればやっぱりアッシュ君が笑いながら近付いてくる。

あー、でもまた目が笑ってないよ…

出来れば関わりたくなかったのに…


なんで助け船を出して来たのがお前なんだよ…!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ