入学説明会
そんな合格通知が届いてから5日後の3雷11日。
僕はまたもや変装して、学院の裏門に来てます。
結構集まってきたけど…40人くらいかな?
受験日は70人はいたと思うから、半分くらいは落ちたのか。
「やぁ、ユズキ。やっぱり君も受かったんだね」
肩を叩かれて振り向くと、にっこり笑ったアッシュ君がいた。
うわぁ、捕まったよ…
「アッシュ君、こんにちは」
「君、順位はいくつだった?僕は4位でね、上位3人までもう少しだったんだが…君も魔法は凄かったから、結構上位だったんじゃないかい?」
「あ、えっと…」
えぇー、言いたくなぁい。
なんだよ、4位じゃ絶対突っかかってくるじゃん!
僕が言い淀んでいると、アッシュ君がニヤニヤと笑いながら僕の肩に腕を回してきた。
「なんだ、もしかして筆記は酷かったのかい?それでギリギリ合格だから言いたくないのか?」
「そ、そういうわけじゃ…」
「時間だ!!諸君、合格おめでとう!!これから説明と制服の採寸があるので、また2列になって私に付いてくるように!!講堂へ向かうぞ!!」
学院側から現れたセリウス先生が叫んで指示をする。
よかったぁ、助かった!!
僕はそっとアッシュ君から離れて、列に並んだ。
この前と同じ体育館らしき講堂に連れていかれる。
「よし、座席に名前があるから、その順番で座れ!!」
名前…名前…
お、最前列じゃん。
左から2番目…って、これ、もしかして…
「あぁ、座席は順位毎になってるからなー!」
やっぱり…
とりあえず座ると、2つ隣のアッシュ君が僕を見て驚愕の表情を浮かべた。
そしてすっげぇ睨んできた。
うわぁ、めんどくせぇ…
「はい、皆さま、合格おめでとうございます。机の上に置かれている書類について説明しますので、わからない事があったらその都度質問して下さいね」
サルファ先生が僕達の目の前にある書類と同じものを持ちながら、にっこりと微笑む。
えーと、入学式での諸注意に、コース選択についてに、学院のルール…
「ではまず、今日の流れについてです。この説明会の後は、制服の採寸となります。前方の壇上で1人ずつ行いますので、書類の記入が終わった人から前に出て下さい。書類はあの箱の中に入れてね」
確かに、目の前にはステージがあった。
なんか目立って恥ずかしいな。
ステージ横には回収箱ね、ふむふむ。
「採寸が終われば今日は終わりですので、帰っていただいて結構です。生徒や先生に会ったら、きちんとご挨拶するようにね」
…貴族科の合格者は昨日終わってるから、会うとしたら学生か先生ってわけか。
あー、ルーファス達、元気かなぁ。
明日とか暇なら遊びたいなぁ…
「ではまず、入学式の説明に入ります」
サルファ先生が色々説明していく。
入学式では貴族科首席と平民科首席が代表して挨拶があるらしい。
いやぁ、本当に首席にならなくて良かった!
ありがとうと感謝の気持ちを込めて左隣を見ると、座っていたのは女の子だった。
…今気付いたけど、首席って女の子だったの?!
瓶底眼鏡に赤毛の三つ編みって…
うわぁ、なんか田舎から来たって感じの子だぁ!
こういう子のテンプレとしては、瓶底眼鏡を外すと美少女とかそういうやつですか…?
うーん、顔の雰囲気的には整ってそうだけど…
「では次に、コース選択についてですが…」
あ、やべ、説明進んでるわ。
まぁ書類に書いてあるし、特に問題はないな。
コース選択…どうしよう。
文官コース、騎士コース、兵士コース、衛兵・私兵コース、農業コース、商業コース、狩人コース…
無難なとこを選ぶなら、実は商業コースなんだよね。
どうせ家を継ぐのは兄様だし、やる事ないなら商売すればいいんだよねぇ。
稼ぐのは簡単だと思う、前世の知識フル活用すれば余裕だし。
または文官コースで兄様の補佐をするとか。
内政チートってやつ?
でも内政に詳しくはないんだよね…
まぁどうせなら人の役に立つような事の方がやり甲斐があるし、自分の力で出来る事がいいな。
というわけで狩人コースにして、身分隠して魔物討伐放浪の旅だ!
…さすがに成人したら放浪許してくれるかな?
「では最後に、学院でのルールについてです。基本的に、学院内では貴族科も平民科も平等です。貴族科が平民科に対して見下すような態度や、権力を使ったり、命令する事は出来ません。まぁ平民科の人間が貴族科を虐めていたりしたらまた話は変わってきますが…」
さすがにそれはないでしょ。
…いや、あれか?
『おいおい、お前金持ちだろー?俺らに金恵んでくれよぉー、ぐぇっへっへっへ』みたいな。
…ないな、うん。
「授業外などの通常時の魔法の使用は特に禁止されていませんが、攻撃魔法に関しては使用に理由が必要です。発覚次第、使用理由書の記入をしていただきますので、お気をつけて下さいね。例えば喧嘩をしていて使った、などの理由ですと、停学や退学もあり得ますからね」
おう、停学や退学ってあるのか!
でも普通に過ごす中で、攻撃魔法って使わないはずだし、まぁ気をつけるようにしよう。
その後も話は進み、大体半刻くらいで説明会は終わった。
「では、書類の記入が済みましたら、採寸に進んで下さい。勿論変な内容のものはないですが、きちんと書類の内容は読んで理解するようにしましょう。今後悪い書類に名前を書かないためにもね」
そうだね、あの『婚約の誓い』とか、ちゃんと読まないと一生を終える事になるもんね。
そういえばあの令嬢もいるのだろうか…
あのデビューの後、1回『レター』が届いたんだよね。
読まずに父様に渡したけど。
多少はマシになってる事を願う。
書類の内容を確認しつつ、署名していく。
最後にコース選択で、狩人コースに丸を付ける。
持って帰る書類を鞄にしまい、提出する書類を持って席を立つ。
他にも何人か書き終わった人がステージの前に並んでいた。
「では5人ずついきますよー!はい、間隔開けてー!《エリア》!《メジャーメント》!」
服飾屋の人が数人、ステージの上で魔法を使う。
なるほど、あれで採寸するのか、早いな。
感心しつつ、僕は回収箱に書類を入れる。
そしてそのままステージの列に並ぶ。
順番はあっという間で、採寸は一瞬で済んだ。
…よし、帰ろう!
僕は出口にいたセリウス先生に会釈をして体育館を後にする。
ちなみにセリウス先生は僕を覚えていたようで、少し笑いながら手を振ってくれた。
さて、そろそろお昼だし、適当に買い食いしながら帰るかなー!