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暗記スキル

「こちらが屋敷の図書室になります、ユージェリス様」


僕とリリーの前にあるのは、大きな扉。

これが図書室…なんか高校の図書室思い出すね。

同じ雰囲気だ。


ちょっと呆気に取られていると、リリーが扉を開けて僕に入るように促した。


「おぉ…」


見渡す限りの本、本、本。

すっげぇ、めっちゃある。

え、本当にこれ全部魔法で覚えられんの?


「リリーはこれ全部覚えてるの?」

「私は暗記スキルを持っておりませんので、自力で半分ほどは読ませていただいております。ですが、それでもその半分を覚えているかと問われれば…すみません」


リリーが苦笑する。

そりゃそうだ、普通なら無理だよ。

さて、本当に出来るのかねぇ…


「えっと、範囲指定して、読み込んで覚えるから…《エリア》」


意識して唱えると、僕の周りが光り出した。

その光が図書室をどんどん侵食していく。

うわぁ、めっちゃ綺麗!

白い光にちょっと金色な感じも混ざってて、なんか神々しいな!


「ユージェリス様、これは…!」


リリーが驚いてる、なんでだろ?

まぁとりあえず先に次やろう。


「広がりきったかな?じゃあ《リーディング》」


白い光が一瞬強く光る。

そして…


「うわ、うわ、あ、わ、わぁー?!」

「ユージェリス様?!」


なんだなんだ?!

頭の中に色んな情報が流れ込んでくるぅ?!

…あ、止まった。

うわぁ、びっくりしたぁ…

冷や汗止まんないわぁ…


「ユージェリス様、大丈夫ですか?!顔色が悪いようですが…!!」

「あ、うん、大丈夫…なんか、頭がパーンってするかと思った…」


いや、痛くはなかったけど。

イメージとしてはテスト前に一夜漬けで英単語詰め込んだ時に似てた。

こう、いつまでも英単語が頭の中をぐるぐるしてる感じ?

でも今はいつも通りだな…


「…一般的な人間の『エリア』ですと、この部屋全てを包む事は出来ません。なので旦那様でさえ一区画ずつ『リーディング』を行うくらいです」

「…つまり、一気にやりすぎだと」

「…そのように思います」


呆れるようにため息をつくリリー。

それならそうと言って欲しかった。

確かにちょっとずつやればそんなに負担はなかったよね。

でも終わった事はしょうがない。


「とりあえず全部読み込めたっぽいけど…実感はないな」

「暗記スキルをお持ちの方は、通常時は今までとお変わりはないそうです。知り得たい知識を思い浮かべれば、辞書を引くかの如く表示させるそうなので、お試しになってみては?」


なるほど、辞書ね。

なら、とりあえず、何を調べようか…

あぁ、属性について知りたいな。

色々あったけど、どういうものなんだろ。


ーーーーーーーーーー

【属性とは】

魔法には属性が存在します。

人間は必ず1つ以上の属性を持ち、魔法を使用する事が出来ます。

自身の属性は必ず把握するようにしましょう。


・火…火属性。攻撃系の魔法が多数。火の色によって強さが変わる。

赤→橙→黄→白 (ただし例外として黒がある)

・水…水属性。適正が高ければ氷魔法も使用可能。

・地…地属性。防御系の魔法が多数。物理攻撃にも強い。

・風…風属性。適正が高ければ飛行も可能と推測。(ただし成し得た人物は過去に1人)

・雷…雷属性。珍しい属性であり、基本的には遺伝でのみ現れる。

・光…光属性。回復系の魔法が多いが、軽傷は治せても重傷や病気は治しきれない。

・闇…闇属性。珍しい属性であり、魔物の使役が可能。召喚魔法もこの属性に該当する。

・聖…聖属性。珍しい属性であり、魔力さえあればどんな怪我や病気でも治す事が出来る。アンデットの浄化も可能。

・時…時空属性。伝説の属性であり、空間魔法や転移魔法がこの属性に該当する。

・無…無属性。生活属性とも言われる。『ライト』『エリア』『リーディング』などがこの属性に該当する。


〜参考文献〜

著・フレール=ジャックフルト、"初めての魔法"、P7

ーーーーーーーーーー


…なんかステータスと同じ感じで透明な画面出てきた。

でもリリーには見えてないみたいだな…

なるほど、見事に辞書機能だ。

これは早く他の本とかも読み込んでおきたいなぁ…

にしても、属性って色々あるんだね。

珍しいのとか伝説のとかあるけど、僕全部持ってるじゃん。

うーわー、本当にチートだわ。

とりあえず、今のうちに色々調べておこう。

この世界の常識とか、まず覚えなきゃいけないしね。

えーと、あれと、これと、それと…

あと、魔法についてとかも…

ほうほう、そんな魔法とかがあるのか、へぇぇ…


「…ユージェリス様?なんだか目が遠くを見つめていらっしゃいますが、大丈夫ですか…?」

「…あ、うん、大丈夫…とりあえず暗記スキルも使えるみたいだから、試してたんだ」

「そうですか、それは良かったです!でも顔色があまりよろしくないので、無理はなさらないで下さいね?」


リリーが微笑む。

うん、可愛い。


あ、そういえば、気になってた事があった。

父様はスキルのレベルは1〜10だって言ってたけど、僕はなんか∞なんだよねぇ…

これってどういう事だろう?


ーーーーーーーーーー

【スキルレベルについて】

スキルには『戦闘』『生活』『特殊』の3種類の枠があります。

成人までに個人が持ち得るスキルは1〜5個程度ですが、鍛錬を積む事によりレベルを上げたり、新たにスキルを開花させる事もあります。

過去の魔導師や賢者達の調査により、レベルは最大値を10と設定されています。

それ以降のレベルを持つ人間は確認されていません。

一説には『精霊の愛し子』がレベル999のスキルを所持していたと言われていますが、確認は出来ていません。

(基本的にはスキルもレベルも開示義務がないため、自発的な告白でもない限り、最大値が10であるという常識が覆る事はありません)


〜参考文献〜

著・ガードル=ウェザー、"一般魔法論文"、P32

ーーーーーーーーーー


…つまり、∞ってのは、多分カンストである999すら上回ってるっぽい規格外の可能性がある、と…?

えぇー…なんでぇ…?

これ、他の人に知られちゃマズイんだろうなぁ…

というか開示義務ないのが有り難いわ。

…まぁ真実を知りたい魔導師や賢者にとっては困っただろうけど。

あれ?そういえば父様の称号って賢者だったような…


「ねぇ、リリー。父様って賢者なの?」

「はい、左様でございます。旦那様のお歳で賢者の称号を得る事は、とてもすごい事でとても有名なのですよ」

「そっか、父様すごいんだ…」

「それに、今回ユージェリス様が愛し子様になられたので、これからは愛し子様の父親としてより一層有名になられるでしょうね」


マジか…それって結構めんどくさそうじゃない?

変な人に突っ掛かれたり脅されたりするとか…

やるつもりはないけど、僕が何かやらかした時とか…

…先に謝っとこうかな…


「…父様、まだいるかな?」

「そろそろ登城されるお時間ですので、玄関にいらっしゃるかもしれませんね」

「挨拶したいから、連れてってくれる?」

「承知しました」

「よろしくね、ありがとう」


少し小走りでリリーの後を付いて行く。

案内された先にあった玄関には、父様とレリックがいた。


「父様」

「おぉ、ユージェリス。どうした?」

「図書室の本が読み込み終わったから…」

「あの量をか?!いくらなんでも速いだろう、さすがに1時間はかかると思っていたぞ?」

「旦那様、ユージェリス様は『エリア』1回で範囲指定を終えられたのです」

「…すごいな、愛し子様は。そこまでとは、随分スキルレベルも高いんだな。聞く事は出来ないが、10以上ありそうだ」


父様が苦笑する。

そうだよな、賢者だし、宮廷魔術師長だし、本当なら知りたいよな…


「あの、父様。これから色々大変になるんだよね、僕のせいで…」

「あぁ、そんな事を気にしていたのか?いいんだ、お前は愛し子様である前に、私達の子なんだから。子供を守るのは親の役目だ」

「…ありがとう、父様」


本当にいい父親だ。

ユージェリス君は素敵な家族に恵まれてたんだね。

ごめんね、『私』がこの場所を盗ってしまって。

だからせめて、この人達は『僕』が守ろう。


「…いってらっしゃい、父様。《貴方に精霊様の加護がありますように》」


これはこの世界の常套句。

1日何事もなく、いい日でありますようにと願いを込めて言う。

普通の人なら、ただの言葉だけど、僕は違う。

僕は普通の魔法の使い方をしていない。

ただ言葉に意味を込めれば、それは魔法となる。

つまり…


「…っ?!」


父様の体が白く光る。

キラキラと金色の光も混ざり、父様の体の中に入っていく。

父様だけでなく、レリックやリリーも驚いていた。


「旦那様…今のは…」

「…不思議な事も起こるものだな。ありがとう、ユージェリス。そして行ってくる。お前にも精霊様の加護がありますように」


そう言って、父様は微笑んで僕の頭を撫でてくれた。

大きくて温かい手はとても気持ちよかった。


チート?最高じゃないか。

素敵な人達を守るのに、これ以上のモノはない。

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