父様の焦り
まさかの父様先頭に魔法師団軍団が入ってきたー!!
いやまぁ、軍団と言っても10人くらいだけども。
あれはデビューの時にお会いした第2師団長のランドール様、かな?
マジか、今日って巡回の日だったの…?
「試験中に済まない。本当は建物側の結界の確認に来たのだが、先程こちらの結界に揺らぎがあってね。少し確認させてもらうよ」
「は、はい!試験なら終わりましたので、どうぞ!!」
おぉ、セリウス先生が父様と話してる。
めっちゃ緊張してるやーん。
にしても結界の揺らぎってなんだ?
「ここか…結界が歪んでるな…」
「なんでしょうね。小さいですが、丸く歪んでます…」
父様達の小声の会話がちょっと聞こえた。
…あれ?もしかして僕のせいとかないよね?
鎧貫通した後、あの辺にぶつかってたような…
「…おや、演習用の鎧に穴が開いてますね。魔法印で自己修復するはずですが、直っていない…ちょうど歪みの延長線上です」
「まさかこの穴が関係しているのか?」
ばーれーたー!!!
ちょ、師団長様、目敏いよ!!
「すみませんが、この穴についてお聞きしても?」
「え、ええと、それは試験中に出来た穴でして…あ、あの、師長様。師長様が教えられた魔法で出来た傷のはずですが…」
「…私の?」
「は、はい。おい、ユズキ!!前へ出ろ!!」
呼び出されたぁー!!!!
セリウス先生のばかぁん!!!!
しょうがないので、そっとセリウス先生の横に立つように移動した。
「この子が師長様から教わったと…」
「私から…?君は…」
「ご、ご無沙汰しております、侯爵様」
「…ん…?あ、ゆっ…!!!!」
声で気付いたようで、めちゃくちゃ驚く父様。
でも声を出すわけにはいかないので、すげぇ耐えてる。
そういえば父様にはこの姿見せてなかったな。
偽名も伝えてないし…
「…あ、あぁ、君か。そう、だな、うん、久しいな…」
「師長、お知り合いですか?」
「まぁ、そうだな…」
仕方がないので、誰にも見えない死角で指を鳴らす。
(父様!僕の名前はユズキで、出会いは侯爵領とだけ先生には伝えてあるよ!ちょっと珍しい魔法使って目立っちゃったから、父様に教えてもらったって言っちゃった!ごめんね!なんか適当に誤魔化して下さい!!)
『テレパシー』で手早く伝える。
一瞬驚いた父様だったが、状況は理解してもらえたようだった。
「…ユズキ君とは、領地で出会って魔法を少し教えたんだ。珍しい魔法でもあるから、他の者には教えてないがな…」
「そんな凄いものを…!!随分目をかけていらっしゃるのですね」
「いや、まぁ…自領の子だからな、是非学院に入ってもらいたくてな…まぁ、贔屓はいけないだろうから、もう教える事もないだろうが…あぁ、試験については公正に頼む」
「は、はい!!お任せ下さい!!」
あぁ、父様がしどろもどろになってる…!
ごめんね、父様、僕が適当な嘘付くから…!!
「さ、さぁ、歪みの場所も確認したし、さっさと直してしまおう。ランドール、子供達が撤退次第始められるようにしておくように」
「はっ」
無理矢理話の軌道修正をした父様は、ランドール様に指示をした。
ランドール様達は作業を始める。
…よし、逃げ…じゃなくて、帰ろう!!
「じゃあ、セリウス先生、僕帰ります」
「え、あ、あぁ、気をつけて帰れよ!」
セリウス先生が晴れやかな笑顔で僕の頭を撫でてくれる。
…そんなに父様と話せた事が嬉しかったのかな?
ある意味僕のおかげだもんね。
ちなみに他の受験生達は中々帰ろうとしない。
多分父様達を見てたいんだろうなぁ…
「ほらほら、皆さまも早くお帰りなさい。師長様方が作業出来ないでしょう?」
サルファ先生に促されて、受験生達は渋々頷く。
あ、アッシュ君がすげぇ悔しそうな顔してる。
きっと父様と話したかったんだろうな、後々色んな人に自慢する為に。
僕は捕まらない為にも、1番最初に離脱しまーす!!
さらばっ!!