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実技試験

「…ユズキ、だったな。その魔法はなんだ?見た事ないものだったが…」


セリウス先生が声を張らずに僕に問いかける。

うーん、大声出さないと雰囲気変わるなぁ…

って、現実逃避してる場合じゃないや。

そういえば、この世界に銃って概念ないもんな。

基本は魔力で戦うし、魔力が切れれば剣を使う。

まさに未知の魔法というわけか…

なんて言おう…


「ええと…アイゼンファルド侯爵様に…」

「師長様にか?!どういう事だ!!」

「あー…僕、侯爵領の出身で…お会いした事もあって…そのご縁で…」

「それは羨ましいな、私もお会いした事はあるが、話した事すらないぞ…」


セリウス先生が肩を落とす。

父様、結構人気なんだな…

ん?なんか視線を感じる…?

視線を感じる方を目だけで追うと、さっきのギラギラした目付きの少年がいた。

…めちゃくちゃ睨んでらっしゃるぅー…

え、なんで?もしかして嫉妬?

やだー、父様めちゃくちゃ人気者ー!


「師長様は見目麗しく、そして途轍もなくお強い。そんな師長様の1番上のご子息様がすでに在学中ですが、あの方もとても優秀で…宮廷魔術師長の座も安泰ですね」


サルファ先生がほぅ、と頬を赤らめながら兄様の事も褒める。

さすが兄様!

もっと褒めてくれてもいいんですよ?先生!


「侯爵夫人は元王女様で、お前達と同い年になるご子息様は愛し子様で…あのご一家は本当に凄い!愛し子様がご入学されないのは残念だが、再来年には末のご令嬢がご入学予定だ。それもまた楽しみだなぁ!」

「え?!愛し子様はご入学されないんですか?!」


セリウス先生の話に、あの少年が反応する。

うん?あぁ、そうか。

貴族側や学院には通達があっても、平民側には伝わってないのか。

受験生達が騒つき出した。


「あぁ、混乱を防ぐ為に貴族科のご入学は断念されたそうだ。私も至極残念だ…」

「まぁ仕方ないと言えばそれまでですがね。それに愛し子様は勉強の必要がないほど優秀な方だと噂されていますし、少なからずご友人もいらっしゃるそうです。態々学院に入る必要もないでしょう」


いや、他にも友達欲しいし、普通に学院生活満喫したくて受けに来てますけど。


「なんだよ…折角いい成績取って、貴族科の愛し子様と仲良くなろうと思ったのに…愛し子様の側近になって、出世街道まっしぐらが…」


…意識をあの少年に向けていたせいか、聞こえちゃいけないような呟きが聞こえてしまった。

えぇー、まさかの出世欲半端ねぇ…

確かにあのギラついた目を隠して微笑めば、大人しくていい子そうに見えるもんなぁ…

この場に来てなきゃわからなかった事だ、来て良かった。


「あぁ、雑談を挟んですまなかった、次に行こう。ユズキは下がるように」

「あ、はい」


僕はすごすごと下がる。

うぅ、何人かヒソヒソしながら僕を見てる…

父様がここまで人気あるとは知らずに名前出したのがまずかったな…


「やぁ、さっきのは凄かったね。是非あの魔法について色々教えて欲しいんだけど…」


振り返ると、まさかの少年ががががが…!!

うわぁ、口元は優しく笑ってるけど、目が笑ってねぇ…!!


「えーと…教えるって、どんな…?」

「侯爵様から教わったんだろう?その時の事とか、それがどんな魔法なのかとか、色々だよ」

「え、えと、あれは受験用にって教えてもらったもので、秘密の魔法だから、ちょっと…」

「…そうか、残念だなぁ。あ、紹介が遅れたね。僕はアッシュ、よろしくね」

「あ、ユズキ…です」


少年…アッシュ君が右手を差し出してきたので、とりあえず握手する。

うーん、個人的にはそんなによろしくしたくない。


「ユズキはさっきの試験どうだった?中々難しかったよね」

「あ、そうだね…計算問題の最後の方とか、結構…」

「あれは解き方に癖があるからね。きちんと勉強していないと解けないさ。僕も少し不安があるよ」


と言いつつ、自信満々に胸を張るアッシュ。

えーと、なんて返すべきかな…


「そ、そうなんだ…アッシュ君は頭いいんだね?」

「そこまでじゃないよ。いくら魔法師団第1師団長のアレックスさんと同じ街出身だからって、同じくらい頭いいとは限らないさ」


…さり気に自慢された?

というか、アレックス様と同じっていっても、師団長は準貴族扱いだから、さん付けはマズイのでは…?


「アレックス様とお知り合いなの?」

「アレックスさんのご実家が3軒隣なんだよ。実際にお会いした事もある」


…それは知り合いとは言わないのでは。

彼はどうやら自慢したいタイプの子だな。

そして出世欲が半端ない。

あんまり親しくすると、バレた時がめんどくさそうだな…


「よし、全員終わったな!これにて試験終了となる!結果は明日『レター』にて通知するので、気をつけて帰るように!!」


よっしゃあ!!終わったぁ!!

さっさと逃げよう!!

僕は鞄を持ち直し、走り出す準備をする。

だがその時、遠くて大きな歓声が聞こえた。

…貴族科の試験会場の方だな、なんだろ。

お、第1演習場と第2演習場を繋ぐ扉が開いた。

…あれは!!


「魔法師団よ!!」

「師長様と第2師団だ!!」

「すげぇ、本物だぁ!!」


…きゃー、父様ー!!

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