試験前アンケート
リリエンハイド王立学院。
王城のすぐ横に隣接しており、王族も安全に通える仕様。
つまり屋敷からは遠いから、仮の家は近くにしておいた。
というわけで、門の前に来ております。
結構人が多くて賑わってるね。
ここは平民科の受験生が集まるための裏門。
表門では貴族科の受験生が集まってるから、ルーファス達は向こうかなぁ…
「静粛に!これより平民科の試験を開始する!2列に並んで私に付いてくるように!!」
黒髪短髪の男性が大声で叫ぶ。
…教師かな?
とりあえず適当に並び、学内へと入っていった。
中々広くて大きな建物だなぁ…
暫くして連れていかれたのは、体育館のような場所だった。
机と椅子が並んでいる。
なるほど、貴族科よりも人数が多い平民科の志望者だと部屋に入りきらないのか。
「これより、平民科の試験を行う!私はこの学院の教師であるセリウスだ!奥から順に座るように!!」
全員がセリウス先生の指示に従う。
…セリウス先生ってあれだよね、生徒指導のちょっと怖い先生って感じ。
でも実は猫とか犬とか可愛いものが好きだったりとか…おっと、妄想が進み過ぎたな。
とにかく席に座る事にした。
机の上にはペンが2本置いてある。
自前も用意したけど、いらなかったのか。
するともう1人、女性の先生も現れた。
なんというか、優しそうな感じ。
赤毛の髪がふわふわ揺れて、癒し系だ。
「皆さん、ご機嫌よう。教師のサルファです。これから説明していきますので、よく聞くようにして下さいね。試験中は机の上のペンを使って下さい。それは盗難防止と不正防止の魔導具でもあるので、持って帰る事は出来ません。それを使う事で、不正を行うような魔導具を所持していてもわかりますので」
ほう、魔導具だったのか。
ペンをよく見てみると、魔法印が刻み込まれていた。
『盗難防止』と『不正防止』ね…そのままやん。
にしても、魔導具チェックがあったの忘れてたわ。
僕のペンダントは髪と目の色変えるだけだから、まぁ大丈夫でしょ。
「また、試験前にアンケートに答えていただきます。名前の他に項目は3つ。所持属性、暗記スキルの有無、透視スキルの有無です。所持属性については、持っていない属性は書けません。暗記スキル、透視スキルの有無は持っているのに無しと書けばペンが光ります。暗記スキル持ちは試験の順位表が別になるので、その為です。透視スキルはカンニングが出来ないように、試験場所を変更する為です。それでは、配ります。《ディストリビュート》」
サルファ先生の手元から、プリントが舞い上がる。
1枚ずつ座席に降ってきたので、僕は手に取った。
なるほど、属性は自己申告制なのか。
助かったぁ、見せろって言われると困るもんな。
これはお忍び貴族の為かな?
学院長しか知らない状態にするには、教師にも見られるわけにはいかないもんね。
僕はペンを取り、属性を書き込む。
持ってないのは書けないって事は、持ってるものを全部書く必要もないわけで。
火と、水と、風と、光と、無…くらいでいいか。
聖属性なんて一定の家系しか所持してない属性だもんな。
闇属性と時空属性も希少だから書かないで、多過ぎても目立つから、地属性も書くのやめて減らしておこう。
んで、暗記スキルは有り、と…
透視スキルは持ってないなぁ、というか、そんなのあるのか。
生まれつきのスキルかな?
あぁ、名前を書いてなかった…
えっと…『ユズキ』にしよう。
まさかこんなところで前世の名前を使う事になるとはなぁ。
でも他の名前だと反応出来ないかもだし、これが1番確実なんだよねぇ…
「…さて、そろそろ書き終わりましたか?回収しますよ?終わっていない人は手をあげて…はい、大丈夫そうですね。それでは《コレクション》」
プリントが持ち上がり、サルファ先生の手元に回収されていく。
先生的にはこの2つの魔法、大事だろうなぁ…
そんな事をぼーっと考えながら、プリントの動きを眺めていた。
「はい、ありがとうございます。それでは試験を始めていきます。制限時間は1刻、魔法は禁止です。使えばすぐにわかりますので、その人はその場で失格になります。では皆様、頑張って下さいね」
セリウス先生が大量のプリントを持ってくる。
おぅ、結構1人あたりが多そうだな…!!
よーし、程々にやるぞー!!




