入学試験への準備
「ユージェリスちゃん、本当にその格好で行くのぉ…?」
母様の心配そうな声を聞きながら、僕は玄関で首を傾げた。
「何か問題あるかな?」
「ありまくりよ…そんなボサボサの状態で行くなんて…」
「ですが奥様、これくらいしないと、ユージェリス様の美貌は隠せませんわ。高貴な雰囲気を消すにはこれくらいやらないと」
「でもシャーリー…」
母様が少しごねる。
まぁ、ちゃんとした格好をして欲しいんだろうな。
今の僕はいつもと別人だった。
梳かしていないような目元近くまで伸びたボサボサの黒髪に、大きめの古い伊達眼鏡の奥は黒い瞳。
真っ白とは言えないワイシャツに焦げ茶の長ズボンに黒のロングカーディガン。
黒のトートバッグも少しよれている。
まぁ全く面影がない。
悪い言い方をすれば、教室の隅っこで本とか読んでクラスに馴染めてないタイプって感じ?
髪と目の色は、首に下げたペンダントの魔導具で変えてある。
ペンダントもドッグタグみたいなシンプルなやつにしたから、格好にも浮いてない。
「折角、ユージェリスちゃんのカッコいい学院の制服見れると思ったのに…」
「受かれば見れるよ?」
「平民科だと色が違うじゃない。白の制服着たところ見たかったのよ…」
そう、リリエンハイド王立学院は科によって制服の色が変わるのだ。
貴族科は白、平民科が黒。
白を着ていれば貴族として扱われ、言動などが注目される。
黒を着ていれば平民のエリート候補として扱われ、尊敬の対象となる。
何故かと言うと、リリエンハイド王立学院は試験を受ければ入学出来る貴族科と違って、平民科は厳しい試験を合格しないと入学出来ない。
貴族の子供と同じ立場で授業を受けるには、きちんとした教養などがないといけないという方針だから。
まぁ貴族の子供がなんかバカな事言っても、正論で言い返せたりするくらいの頭脳が必要って事なんだけどね。
後は将来の部下や家臣候補になりえる人材だから。
「今度家で着るから、それでいい?」
「…わかったわ…」
微妙に不服そうに、母様が承諾する。
ちなみに兄様はすでに入学して、白の制服を着ていた。
それで一旦諦めて欲しかったわ。
今日は兄様は普通に授業で、フローネはお友達の家でお茶会。
勿論、父様は仕事です。
「ユージェリス様!私もお見送りします!」
「リリー!走らないで!」
リリーが小走りでこちらに向かってくる。
僕は駆け寄って、リリーを止めた。
何故なら…
「私なら大丈夫です!ちゃんとお見送りしなくては!」
「でもリリー、身重なんだから、走るのはダメだよ。わかった?」
「うっ…申し訳ありません…」
なんと、リリーは妊婦さんです!!
なので僕の専属メイドだけど、あまり仕事させないようにしてる。
どうせこれから日中は学院に行く事になるし、ちょうどいいよね。
ちなみに、相手は勿論…
「リリーさん!また走ったのかい?!そんな事するならおやつは抜きだよ?!」
「ドリーさん!!そんなぁ!!」
食堂の方からドリーが出てきて、叫ぶ。
そしてリリーも悲鳴に近い声を上げた。
そう、僕の希望通り、2人は結婚しました!!
メキメキと腕を上げたドリーは、リリーの胃袋を掴んだのです。
今やドリーは屋敷の副料理長。
ちなみに料理長のセイルは未だ独身です。
「ドリー、おやつはあげてよ、栄養あるやつね」
「ではグリーンスムージーにしましょうか、砂糖や蜂蜜抜きの」
「いいね、苦いやついっぱいでよろしく」
「承知しました」
「ユージェリス様?!ドリーさん?!」
「ほら、リリーさん、愛し子様のご命令だから…ね?」
「うぅぅぅ…!!」
リリーが泣き崩れる。
まぁ冗談なので、ドリーには目配せしておいた。
ドリーもわかっているようで、苦笑しながらも頷く。
「さて、母様、行ってきます」
「行ってらっしゃい、頑張ってね」
「はい!」
母様の声援があれば百人力だよ!
僕は意気込んで、指を軽く鳴らす。
一瞬で目の前の景色が変わり、気付けば小さな家の中だった。
ここが僕の仮の家。
いつも屋敷に帰るわけにもいかないから、領地の孤児院名義で家を借りた。
基本はここまで転移魔法使って、ここから学院に通う事になる。
家具も適当に揃えてあるから、友達が来ても大丈夫!
ちょっとした秘密基地感があって気に入ってる。
「さーて、受験しに行くかなぁ!」
やり過ぎないように、頑張ります!!
そっと新作投稿してます。
https://ncode.syosetu.com/n6177fi/
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こちらは不定期更新です、異世界OLの方が主体なので。
よろしければご覧ください!




