流れる月日
早送りで失礼します!
あれから数日後。
約束通り、メグ様を王都にお連れした。
変装の魔導具を貸して、黒髪黒目のメグ様は別人に見えた。
基本的に他の人と会話をしない事を約束してから連れ出したけど…まぁ大変だったね。
初っ端からテンション上がって走り出して、一瞬迷子になるし。
お金持ってないのに勝手に買い物するし。
ちょいちょいお店の人に怪訝な目で見られて、誤魔化すのが大変だった。
なんというか、全く僕は目立たなかったよね。
僕が愛し子だって、絶対バレてないと思う。
代わりにメグ様はどこかの世間知らずのお嬢様だと思われてて、僕は苦労人の使用人だと思われてたわ。
まぁでも、楽しんでもらえたなら良かったよ。
そんで王城まで送った最後には…
「ユージェ!また連れてってくれるか?!」
「メグ様が自力で変装出来るようになって、自衛が出来るなら考えますよ」
「…ユージェは妾にちょっと冷たくないかのぅ?もうちょっと優しくしてくれてもいいと思うのじゃが…」
「メグ様は僕が優しくすると、すぐに問題児になりそうですからね。我儘な妹のような気分なのですよ」
「…妹…」
「ええ。まぁ本物の妹はメグ様のような我儘は言いませんから、ある意味メグ様は特別ですよ」
「…あまり嬉しくない特別じゃのぅ…」
なんかしょんぼりしてた。
(´・ω・)←リアルにこういう顔してた。
また別の日。
ベティ様と2人で王城でお茶会をした。
僕はケーキ持参です。
そこで色々話を聞いた。
例の記憶が消えている件について、前愛し子だったローレンスさんという人が何か知ってるそうだ。
ベティ様がローレンスさんの日本語で書かれた日記を取り寄せてくれていたけど、中々難しい内容だった。
というか、言い回しっていうの?が難しい。
要約すると、
・日本から魂のみがこの世界にやってくる
・この世界にあった魂のない体に入る事で、新たな生を受ける事になる
・魂が定着するには多少時間がかかる
・定着すれば、魂に残った知識は引き継がれるが、日本での記憶はなくなる
・記憶とは“人格”であり、新たな生を受けた事により前世の記憶は消える
・つまり愛し子になった人間は、元のこの世界の人間でも日本で過ごした人間でもない、ある意味融合体であり、そうでないとも言える
・これを教えてくれたのは精霊自身
…はい、難しい。
とりあえず、僕やベティ様はもう前世の人間ではないと。
知識だけが魂に残っている新しい人間だと、そういう事らしい。
少し残った記憶は誤差というか、死ぬ直前の事だからというか、初めて精霊に関わった瞬間だから残っているらしい。
というか、ローレンスさんは精霊に会ったのか…
ベティ様は会った事ないそうだ。
「ローレンスさん曰く、精霊に会った事は誰にも言ってなかったそうよ。日記にもちょろっと書いてあったくらいだしね。なんでかしら?」
まぁ確かにそうだよね。
会ったならもっと色んな人に言ってもいいだろうに。
僕は精霊に会ったら…とりあえず一発殴りたいな。
勝手に殺してんじゃねぇよ、と。
…もしかして、そういう愛し子がいるかもしれないから、黙ってたのかな…?
ローレンスさんは怒らなかったのか?
僕と同じく、男にされたわけだし…
そこは疑問が残ったな。
ちなみにお茶会の最後はメグ様が乱入してきて、僕とベティ様に怒られてた。
その時のメグ様の顔は(´;ω;`)←こんなだった。
そろそろ学習してほしいけど、そこが陛下の血なのかな…
そういえば、陛下は生きてたよ。
真面目に仕事してた。
目のハイライトは消えてたけど。
ベティ様にどんな説教したのか聞いたけど、教えてはくれなかった。
ただ一言…
「あの男の弱点はね、私なのよ。そんな私はあんな男よりもとっても強いの。全て屈服させてやったわ」
と、とてもいい笑顔で話してくれた。
なんでだろう、下半身がヒュッてしたんだけど。
どういう事なの?
ちなみに一緒に聞いていたメグ様は小首を傾げつつ…
「よく母上に背中を踏みつけられてる父上を見たが、また踏まれたのかのぅ?」
と言った。
…僕的には背中じゃなかったんじゃないかな?と思ったけど、メグ様の教育に悪そうだから黙っておいた。
そんなところは似て欲しくないので…
たーまに王都や領地でお忍びをしつつ、ポーションの研究なんかをして、僕は日々を過ごしていた。
ニコラ達とは『レター』で連絡を取り合い、ルーファスとレオとは月に1回程度集まって遊んだ。
3回に1回くらいはナタリーとニコラも合流出来たので、各屋敷で遊んだりもした。
ナタリーの父親は外交官をしているらしく、国外へ行く事が多いため、諜報員でもあるレオの親と行動を共にする事が多いんだとか。
だから交流があったんだね。
でもそんなナタリー父は僕が遊びに行くとなった時、衝撃のあまり寝込んだらしい。
自分の娘が愛し子と友達になったと知った時も寝込んだそうだ。
結構繊細というか、気の弱い人なんだな…
よくそれで外交官が出来るもんだ。
でもまぁ、だからだろうか、出来る限り僕と関わろうとしてこなかった。
まだ1度もきちんと会った事がない。
ナタリー曰く…
「何か自分が粗相してしまったらどうしよう、などと考えてるみたいですわ。私に恋仲になれとか言ってこなくて助かりましたけど、友達として気をつけろとかとても詰め寄られましたの…」
だそうだ。
まぁ、それならそれでいいんだけどさ。
そういえば、あの例の黒い靄については何も進展がなかった。
とりあえず僕が発症したものではなさそうという結論にはなったけど、狙われた可能性もあるので、やっぱり遠出の許可は下りなかったよね。
最低でも学院卒業するまではダメとか…
でも!代わりになんと、ロッツォさんがジャルネに行ってきてくれると言うのだ!!
僕とベティ様のために、遠い旅に出てくれるとか…
なんだよ、貴方が神か、好きですロッツォさん。
ジャルネについては気になる事が沢山あったから、とりあえず確認するために手紙を書いてロッツォさんに託した。
日本語で書かれた手紙なので、ロッツォさんには読めない。
『その技術はどこから?』
その一言だけ。
1年後、帰ってきたロッツォさんは色々なものを1つずつ持ち帰ってきてくれた。
醤油に、味噌に、みりんに、清酒。
それと手紙を1通。
『待ってる、次は君が1人で』
…正直、どう言う事かと目が点になったよね。
日本語だし、返事になってないし。
ロッツォさんにどう言う事かと聞いたら…
「向こうの外交官みたいな方に手紙を渡したら、驚いた表情をされて。手紙の主を聞かれたのでユージェリス様の事をお話ししました。本人が来れるのは15歳以降だと伝えたら、これを頂きまして…もっと欲しければ本人が来い、と言われてしまいました」
と、少し落胆した様子で答えてくれた。
…やっぱりジャルネは日本と関係あるんだな。
学院卒業したら絶対行こう。
調味料は『キープ』して大事に使う事にしたよ。
でもどうしてもお味噌汁が飲みたかったから、玉ねぎとキャベツの味噌汁作って、王城に持ち込んでベティ様と2人で飲んだ。
2人で号泣したよね、懐かしさのあまり。
その光景を見た宰相さんの慌てっぷりは凄かった。
味噌の量が少ないから頻繁には飲めないけど、1年に1回は作ってベティ様と飲もう。
そして僕は、ついに学院入学出来る年齢になったー…
毎日起こる事書いてたらきりがないので、ちょっとスキップ。
次回は簡単な人物紹介を挟みます。
その後から4章スタートです!