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レオの涙

お兄さんに教えてもらったお店の前なう。

扉の横には『建国記念日限定!お手頃価格!既存パーツでお好きな装飾品作れます!』という立て看板があった。

というか…


「…よくよく考えると、僕自分で作れたわ」

「「「「え?」」」」

「錬成スキルとかあるから、素材さえあれば…」

「…本当にユズ君ってなんでもありですね」

「まぁ初めての王都記念に作るってだけだから、今回はお店で作ろうよぉ」

「そうだな、これでユズが作ったらあまり意味がない」

「そうそう、あたしとナタリーちゃんはお店で買ったのに、3人はユズが作るってどういう事よ」

「それもそうか」


みんなの言う通りだ。

うーん、なんでも出来るからって慢心しちゃいけないな。

目的を忘れちゃいけないし。


「よし、入ってみよう。すみませーん!」


僕は扉を開ける。

店の中は薄暗かった、いまいち見えない。


「…誰もいない?」

「外出中か?」

「いるわよぉ〜ん!!」

「「「「「?!?!?!」」」」」


なんとなく鳥肌の立つ謎の声に、僕達は一斉に振り返る。

そこにいたのは…色とりどりの原色の服を纏った男。

…男?いや、これはまさか…


「あーら、可愛い子供だわぁ!やーん、こっちの子なんて好みでス・テ・キ♡」


原色の人はレオに近付き、そのまま至近距離でほっぺを突く。

レオの顔色が一気に紫色に変わった。


「あ、あああああのぉ…?!」

「なぁに?」

「えっと、どちら様でしょうかぁ…?!」

「アタシはこの店の店長のティッキーよぅ。貴方達、うちの店に何かご用?」


原色の人…ティッキーさんがウィンクをしながら答えてくれる。

背が高くて細身のティッキーさんは大きなサングラスをかけていて、黒と紫のグラデーションの髪が余計に奇抜さを際立たせていた。

一方、至近距離でウィンクを食らったレオは、段々血の気の引いた顔になっている。


…幸運スキルさん、なんで発動しなかったんデスカ?

これ、発動案件でしたよネ…?!

…いやでも、レオがターゲットみたいだし、ある意味ちゃんと発動してるのか?

僕には影響なさそうだし…レオのあんな顔見れた訳だし…


…GJ、幸運スキルさん!!

責めてごめんね!!


「あの、装飾品作りたくて来たんですけど…」

「あぁ、ならこっちにいらっしゃい!今なら他のお客さんいなくて広く使えるわよぉー!アタシ達が手取り足取り教えて、あ・げ・る♡」


ティッキーさんがレオの手を握って店の中へ進む。

涙目のレオはこっちを見て助けを求めていたけど、僕達は見なかったフリをした。

…ちょっと待て、僕は何か今スルーしなかったか?

なんというか嫌な予感がするというか…


「あ〜ら、やだぁ!姉さん、その子どうしたのぉ?!めちゃくちゃ好みなんだけどぉ!!」

「いいでしょぉ?アタシが先に見つけたんだからねぇ?あげないわよっ!」

「んもぅっ!姉さんのケチぃ!!」


ティッキーさんの目の前に、鏡が現れた。

おかしいなぁ、鏡なのに髪のグラデーションカラーが逆向きだなぁ…

ティッキーさんは上が黒で下が紫なのに、鏡のティッキーさんは上が紫で下が黒に…


「…ユズ、大丈夫か?目が遠くを見てるぞ?」

「…いやぁ、鏡が突然現れるからさぁ…」

「残念ながら、虚像ではなく実像ですわ…」

「うわぁー…そっくりぃ…」


正面を見たくないのか、ルーファスは足元を見ていた。

ナタリーも目線が泳いでいる。

唯一ニコラだけは真正面を向いて少し笑っていた。

但し口だけである。

目は『なんてこった、やべぇやつだ』と言わんばかりに死んだ魚の目になっていた。


「…あ、の、ティッキー、さん…そちら、は…?」


耐えきれなくなったのか、レオが涙目のまま尋ねる。

ティッキーさんはレオの方へ顔を向けると、少し照れたように笑いながらレオの額を小突いた。


「やぁねぇ、アタシの事は呼び捨てでいいのにぃ!この子はアタシの妹でディッキーよ!仲良くしてねぇ♡」

「ディッキーでぇっす!よろしくね、可愛い坊や♡」

「…ひっ…」


あ、ついにレオが泣いた。

まさかこんなすぐに叶うとは思わなかった。

レオの泣き顔見てたら、ちょっと冷静になってきたな。


…いや、妹?妹って言った?今。

…うん、まぁ、妹、うん、いいと思う、妹ね。

これはあれかな?女性として扱った方がいいやつかな?

多分男性扱いすると一瞬素が見えたりしちゃうパターンで…


「妹…?いや、どう見ても…」

「ルーファスぅ?!いいんだ、いいんだよ!どっからどう見ても妹さんじゃないかぁ!!2人共そっくりでお美しいね!!」


あっぶねぇー!!!

ルーファスがやらかしてくれるとこだったぁ!!!

ニコラがやらかすかと思ったけど、ナタリーが口塞いでくれてて大丈夫だったわ!!!

ありがとう、ナタリー!!!

君とは本当に仲良くなれそうだよ!!!


僕に言葉を遮られたルーファスは怪訝そうな顔をしていたが、少ししてから理由がわかったのか両手を合わせて無言で謝罪してきた。

分かればいいんだよ、ルーファス。


ルーファスって理解するのに一拍必要なタイプだよね、気をつけて。

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