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フローネへのお土産

確かに通常料金よりも高かった。

それを5つ。

ぶっちゃけ平民の7歳児が買う金額じゃなさそうだった。

絶対あのお店のお姉さんは僕達が貴族の子供って気付いてたと思う。

言葉使いが怪しかった。


「美味しいねぇ〜」

「レオはオレンジだったか?俺のぶどうも美味いぞ」

「バナナミルクも美味しいよ!」

「桃も美味しいです。あの、ユズ君…ありがとうございます」

「…ドウイタシマシテ。僕のいちごも美味しくて嬉しいよ…心なしかしょっぱく感じるけど…」


甘いはずなのになぁ…


「ねぇ、この後どうする?」

「今は…闇の4刻か。例の放送まであと1時間だな」

「あ、僕、なんかお土産買いたいなぁ。みんなでお揃いの何か買うとかさぁ」

「もう僕奢らないからな。でもお土産は買いたいな、妹の分が必要なんだ」

「あぁ、妹さんがいらっしゃるんですね。なら王都で流行りのリボンなどは如何かしら?ほら、あそこに売ってるものとか…」


ナタリーが指差す先には、アクセサリーなどが売ってる露店だった。

なるほど、リボンはいいかも。

フローネは髪が長いから、結ぶのに使えるよね。


「じゃあとりあえずそこ見てみよ!何か可愛いのあるかなぁ?」

「ルーファスも妹に何か買ってくの?」

「買うわけないだろ」


うわ、即答かよ。

しかも食い気味だった、どんだけ妹嫌いなの。


お店に着くと、店主のお兄さんが僕達を見て笑顔を見せた。


「おや、いらっしゃい。何か入り用かな?」

「妹へのお土産を探してるんだ。5歳なんだけど、何かいいものあるかな?」

「そうだねぇ…こういうリボンが流行ってるんだけど、どうだい?」


お兄さんが差し出したのは、細いリボンの両縁にレースの付いたものだった。

ふーん、確かに綺麗だな。


「縁のレースの精巧さや本体リボンへの刺繍なんかで値段が変わるんだよ。最近ではこういうリボンを髪に付けるのが流行ってんだ。仲のいい恋人同士なんかだと、お揃いで持ってたりもするね」

「男はどこに付けるんだ?」

「腰に結んだり、カバンに結んだりって感じかな?彼女的には『私のだから取らないでね!』っていう牽制の意味を込めて渡すんだ」

「なんかリードみたいだねぇ」

「ハハッ、違いない。小さいのによくわかってんなぁ。モテて困るって男も態と付けたりするな。恋人がいると偽装するんだ。君達も将来は随分な色男になりそうだし、覚えておくといいよ」


お兄さんが楽しそうにそう告げる。

ふーん、それって貴族にも通じるのかな?

僕もそれっぽいリボン付けてたら擦り寄ってくる人いなくなるかな?

…いやでも、一応貴族は一夫多妻が認められてるから、擦り寄ってくる奴は減らないか。


「さっき来た随分若い恋人達も買ってたな。ああやって2人で選んで嬉しそうに買ってくのを見ると、微笑ましくなるよなぁ」

「そうなんだ!あたしも自分用に買おうかなぁ」

「それならそっちのお嬢さんもお揃いにどうだい?女の子同士で買う事もよくあるよ」

「そうですね…ニコラちゃん、如何です?」

「お揃いしてくれるの?嬉しい!ナタリーちゃんは何色がいいかなぁ?」


女子2人は楽しそうにリボンを選んでいた。

ふむ、フローネには何にしようか…

フローネは僕と同じ銀髪だからなぁ…

黒に白レースとか、白に黒レースだと、ゴスロリ感すげぇな。

でも似合いそうだ…

いやいや、まだ5歳なんだし、可愛いのにしよう!


「あ、これいいかも」


僕が手に取ったのは、赤地に金の糸でラインの入った、白レースのリボンだった。

赤ならフローネの眼の色にも合うし、これいいな。


「それかい?銀貨1枚と銅貨20枚だけど、大丈夫か?また高いやつ見つけたなぁ」

「お小遣い貯めてきたから大丈夫だよ」

「そりゃすげぇや。でもまぁ、ちっとまけてやるよ。銀貨1枚でいい。妹さんも喜ぶな、今包んでやるから待ってろ」

「ありがとう、お兄さん」


お兄さんが僕からお金を受け取り、手早く袋に包んでいく。

銀貨1枚と銅貨20枚…1200円だから、前世感覚では倍額の2400円か。

確かにリボンの値段としては高いな。

まぁそれだけ手間がかかってるんだろう。


「お兄さん!あたし達はこれね!」

「おう、じゃあそれは2本で銀貨1枚だけど、おまけで銅貨80枚でいいぞー」


太っ腹だな、お兄さん。

ちなみにニコラとナタリーが選んだのは、紫とオレンジのリボンだった。

両方とも、シンプルな白レースが付いている。

2人はお金を支払い、包み終わるのを待っていた。


「可愛いリボンだね」

「お互いの瞳の色にしてみたんだぁ。交換して付ける事にしたの!」

「ちょうど似た色があって良かったですわ」


あぁ、なるほど、確かに一緒だ。

いいねぇ、女の子は華やかで。


「なんか僕達もお揃い欲しいねぇ」

「そうだな、何がいいだろうか?」

「装飾品とかならループタイとか?じゃなきゃ小銭入れとかそういうのかなぁ?」

「ラペルピンとかどうかな?僕達ならよく使うでしょ」

「「…らぺるぴんって何?」」


…ん?この世界にはないのか?!

じゃあ売ってないかな…


「ねぇ、それってどんなもの?」

「男性用のブローチというか…オシャレとしてジャケットに付けるんだよ」

「ほう、男性用ブローチか…そういうものは見た事がないな」

「ないねぇ、ブローチは女性のものってイメージ?」

「カッコいいんだけどなぁ、バラのモチーフとか、チェーン付きのとか…」

「ユズはどこで見たんだ?」

「んー…秘密?」

「あー、なるほど、そっかぁ」


レオが察したように頷く。

ルーファスも暫く考えてから、思い出したかのように手を叩いた。


「ん?なんだい?なんの話をしてた?」


お兄さんはリボンを包むのに集中してたらしく、僕達の話を聞いていなかったらしい。

好都合です、突っ込まれても困るからね。


「なんでもないよ。それよりこの辺にお兄さんのオススメの装飾品売ってるお店とかない?オーダーメイド受けてくれるとことかでもいいよ」

「装飾品ならそこの曲がり角とかでも売ってるし、何が欲しいかにもよるけど…風の門の方にある工房なら装飾品のオーダーメイド受けてくれるところがあるぜ?今日は祭りだから簡単なやつとかならその場で受けて作ってくれるらしいから、そこに行ってみたらどうだ?」

「なるほど!教えてくれてありがとう!」

「ほら、包み終わった。店の名前は『ティッキーディッキー』ってところだ」


お兄さんが僕達にリボンの入った包みを渡してくれる。

おぉ、可愛い袋に入れてくれたのか、優しいな。


「ありがとう!早速行ってみるよ!《お兄さんに精霊様のご加護がありますように》!」

「おう、お前達もなー!祭り楽しんでけよー!」


お兄さんと手を振って別れる。

結構優しい人が多いよな、王都って。

というより、変な人に会わない?

こういうところって何かしら問題を起こしてる人とかに出くわして、問題が起きて、うわー!みたいになるもんじゃないの?


「ん?ユズ、どうかしたか?」

「いや、優しい人ばっかりだなぁって」

「あー、僕も思ったぁ。親父殿から、何かあったら大声で叫んで助けを求めるんだぞって言われてたから、物騒な人が多いのかと思ってたぁ」

「私も両親にかなり心配されましたけど、全然…」

「うちも領地みたいな田舎と違って王都は物騒だから、気をつけろって言われた!」

「確かに何も起きないな…ユズ、何かしたのか?」

「なんで僕なのさ」

「不思議な事が起こったら、まずユーちゃんを疑った方がいいかと思うよねぇ」

「酷いな、別に魔法は使ってないし…」

「もしかしたらスキルかもしれませんわよ?この前読んだ本には、危機回避スキルなるものがあるとか…」

「スキルかぁ…あ、あれか?幸運スキル」

「何それ、聞いた事ないよ?」

「希少なスキルだな。優しい人と出会うのは、きっとそれが原因だろう」

「さすがユーちゃん、期待を裏切らないぃ〜」


レオが僕のほっぺを突いてくる。

ルーファスはスキルの効果を実感しているのか、無言で頷いていた。

ナタリーとニコラは別のスキルの話をしている。

なるほど、さすが僕、チート体質だな。

でもさっきナタリーが言ってた、危機回避スキルってのは持ってない。


あったら重宝しそうだし、いつか手に入るといいなぁ。

以下、補足。


リリエンハイド王国の王都は背後に山がある半円のような形をしていて、曲線部分には4つの門があります。

半円形の角にある王城から見て1番近い右側から『火の門』『水の門』『地の門』『風の門』です。

火と地が退場門、水と風が入場門です。

ニコラ家の王都用屋敷は火の門の近く、ルーファス家の王都用屋敷は広場の近くでやや火の門寄り。

レオ家とナタリー家の王都用屋敷は広場と地の門の中間地点。

ユージェ家の王都用屋敷が風の門の近く、王城と対角線上である角にあります。

背後に山で、その山を越えるとアイゼンファルド侯爵領。

ルーファスのオルテス公爵領は火の門を出て少ししたところにあります。

他はそれなりに離れてて、1番遠いのがニコラ。


そんな補足でした。

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