年上の誘惑
レオの言っていたハイド大広場に着いた。
広場の中央には大きな噴水があり、その周りの至る所に屋台がある。
ステージのような場所では催し物などがやっているようだった。
今はダンス大会かな?
食べ終わった肉串をゴミ箱に捨てて、噴水の縁に座る。
まだみんな来てないみたいだなー。
まぁ僕は人混み関係なく屋根から来たし、早過ぎたのか。
「あら、貴方、おいくつ?」
目の前に4人の女性が現れて、声をかけられた。
10代後半から20代前半くらいの、ナイスバディな色っぽいお姉様方だ。
格好的に…ダンスに出場してる人達かな?
「えっと、7歳です」
「まぁ、じゃあ初めてのお祭りかしら?お1人なの?」
「友達を待ってます」
「そうなのねぇ。あら?よく見ると本当に可愛い顔してるわ!眼鏡なんてない方がいいわよぉ!」
「あ、ありがとうございます…」
「照れてるの?やだぁ、可愛いっ!」
…なんか、すげぇ絡まれてるぅ…
いや、別に嫌じゃないよ?
良い匂いだし、眼福だし。
でもこういう場合、どうしたらいいのかわからん!
「お、お姉さん達はダンスに出るんですか?」
「えぇ、さっき終わったの。是非見ていただきたかったわぁ」
「それは残念です。きっとお綺麗でしたでしょうに」
「あらあら、この子口が上手いのねぇ」
「弟に欲しいわぁ」
…早く誰か来ないカナー?
「ユーちゃん、お待たせぇ」
ユーちゃんって誰だよ!
そう思いながら声がした方を見ると、そこにいたのはレオだった。
後ろには町娘風の丈の長いワンピースを着て、髪をおさげにしたナタリー嬢もいる。
た、助かった…?!
「あらぁ、お友達?やぁだ、こっちの子も可愛い〜!」
「2人とも将来有望ねぇ」
「あら?後ろにいる女の子もお可愛いらしいわね」
「お姉さん達もとっても綺麗だよぉ。僕がもっと大きかったら、口説きたいくらい!」
「まっ!おませさんなんだからぁ!」
さすがレオ、相変わらず胡散臭い。
暫くレオと話したお姉様達は満足したらしく、僕達の頭を撫でてから去っていった。
…単純に子供好きだったのか?
「ユージェ、髪色変わってて最初わかんなかったよぉ。ナタリー嬢が気付かなかったら通り過ぎてたかも」
「僕の髪色は目立つからね。よくわかりましたね、ナタリー嬢」
「背格好や顔は変わられていませんから。人の顔を覚えるのは得意ですの」
「なるほど。それにしてもレオ、『ユーちゃん』ってなんだよ」
「僕と違って『ユージェ』とかその本名って特徴的な名前じゃない?後で全体周知されるなら、先に誤魔化しておいた方がいいかと思ってぇ」
あぁ、なるほど。
確かに覚えられてたら問題になるかも。
なら…
「…じゃあ、ここでは僕の事は『ユズ』って呼んでよ」
「ユズ?何、その偽名は」
「『ユージェ』に雰囲気似てない?」
「そうかなぁ…ま、いっか。とりあえず僕は『ユーちゃん』って呼ぶから、ナタリー嬢は『ユズ』って呼んであげてよぉ」
「ユズ様…ですか?」
「ここで様付けは目立つから、呼び捨てとか、君付けでいいよ」
「では、ユズ君とお呼びしますね」
「僕は呼び捨てでいいかな?」
「勿論です」
「じゃあ僕も呼び捨てにしよっとぉ」
…ちょっと前世の名前をもじっちゃった。
まぁこれなら呼ばれればちゃんと気付けるし、別にいいよね。
「にしても、ユーちゃん絡まれてたねぇ。例の噂通りなのかな?」
「噂って?」
「見た事ない子供を見かけたら、それはお忍びの貴族の子供だから、優しくしてくれるってやつ。人によっては下心があるらしいけど、さっきのは親切だろうねぇ。貴族の子供が1人でいるとなれば、悪い人に連れてかれちゃう可能性とかもあるし。ユーちゃんならやり返すだろうけどぉ」
「あぁ、なるほど。確かに1人、丁寧に話しかけてくれる人がいたな。そういう事か」
となると、さっきの肉串のおっちゃんも親切心だろうな。
あのお姉様にもお礼言っておけばよかったかも。
また会えるかなー?
「みんなぁー!!」
「待たせたな」
そんな話をしてたら、ニコラとルーファスが到着した。
ニコラも丈の長いワンピースを着て、髪はポニーテールにしていた。
ルーファスは僕やレオと同じような格好をしてる。
「わぁ、髪の色が違う」
「魔導具で変えてるんだよ。それと2人共、僕の事は『ユズ』って呼んでくれる?バレないように偽名で」
「あぁ、わかった」「はーい」
「ルーファス様とニコラ様…でしたわよね?私の事は呼び捨てでお呼び下さい」
「わかった、ナタリー」
「あ、はい!えっと…ナタリーちゃんって呼んでもいいかな?」
「勿論ですわ。では私もニコラちゃんとお呼びしますね」
おぉ、ニコラとナタリーが仲良くなり始めてる。
可愛いなぁ、なんかお花が飛んでる感じ。
見てて癒されるね。
「さて、早速散策しようかぁ。とりあえず最初はこの広場の中を歩いてみない?」
「あぁ」「さんせーい」「うん」「えぇ」
5人横並びで歩き出す。
ルーファス、ニコラ、僕、ナタリー、レオの順だった。
…あれ?僕、両手に花じゃん。
てっきりルーファスとレオが両隣かと思ったけど…
あ、いや、そうか。
両端が女の子じゃ、なんかあった時に物騒か。
さすが2人共、すでにこの歳で紳士的だわぁ。
…ちゃんと見習おう。
ネタをいただいたので突っ込みました(笑)