友達の秘密
ちなみにその後はなんだか不思議な空気感だった。
僕の後に入ってきたのは公爵令嬢で、あからさまに動揺してたな。
なんせ例の背中にぶつかってきた女の子だったんだから。
その後にルーファスだったけど、なんか真顔だった。
んで、最後がメグ様。
堂々としていて、なんかカッコよかった。
ああいうところはちゃんとしてる陛下に似てるな。
全員に祝福の挨拶が終わると、陛下が王座から立ち上がった。
続いてベティ様も立ち上がる。
「これにて総勢36名、社交界の仲間入りとなる。今年は珍しく男女比が同じだ。そこで今から交流を兼ねて、ペアを作りダンスでもするか!」
…ナンダッテ?
「ペアについてはこちらで適当に決めるつもりだが、先に誘いたい者がいれば申し入れる時間を設けよう。気になる者がいれば、誘ってみるのもアリだぞ?」
…え、何言ってんの?
こんなところで恋愛結婚を推さなくてもいいんだけど。
…あ、ベティ様が呆れた顔してる。
もしかして予定になかったのかな?
後ろにいる宰相さんもなんか青筋立ててるし。
「…陛下?」
「なぁ王妃よ、そなたもいいと思うだろう?これを機に仲良くなれば、余とそなたのような運命の出会いとなるやもしれんぞ!」
あぁ、陛下ってば、ベティ様の機嫌が急降下してる事に早く気付いて!!
口は笑ってるけど、目が、目がぁ!!、
「…いい加減になさいませね、陛下」
「…え?」
「《サイレント》」
あ、陛下の声が聞こえなくなった。
なるほど、あの魔法ってそういう使い方も出来るんだな。
ベティ様は何事もなかったかのように、僕らに向かって微笑んだ。
「皆さん、陛下のお言葉はお気になさらずに。今からは通年通り、立食の時間となります。皆さんがいらっしゃる場はダンス会場にはなりますけど、別に強要するものではないので、気が向いたならどなたかをお誘いの上、踊りにいらしてね。では、解散!」
ベティ様がパンッと手を叩くと同時に、大広間には音楽が流れ始めた。
最初に動き出したのはメグ様で、さっさとお2人のところへ向かってった。
あ、なんか陛下に向かって冷ややかな目を向けてる。
…こんなところで涙目にならないで下さいよ、陛下。
とりあえず、父様のところに行こう。
マントを翻して、僕は歩き出した。
…なーんか、このマントって翻したくなるんだよね。
ちょっとケープよりも長い丈が体に纏わりつくからかな?
でもマントって翻したくなるよね?!
…なんか、みんなに見られてるな。
ちょっと居心地悪い。
好奇の目や、欲の目で見られてる感じがする。
欲まみれなのは、隙あらば擦り寄ってくる気なんだろう。
「とうさ…ま…」
おぉ…父様と母様がめちゃくちゃ囲まれてる。
これは…僕目当てか…?
って事は、今声かけない方がいいよね。
さて、どうしよう。
「ユージェのお父上達は大変だねぇ」
「うぉっ!」
真横に突然現れた気配に、変な声が出ちゃったよ。
横を向くと、立っていたのはレオとルーファスだった。
「…ユージェ、いや、ユージェリス様とお呼びした方がいいのだろうか?」
「いやいや、やめてよ、余所余所しい。僕は愛し子である前にただの人間なんだから、普通に接してほしいんだ…友達には、さ」
「…そうか。では、これからもユージェと呼ばせてもらう」
「うん、そうしてよ、ルーファス」
「えー?僕はー?」
「レオはなんか胡散臭いんだよなぁ…」
「ひっどーい」
ケラケラ笑ってるレオは、より一層胡散臭い。
その様子を見たルーファスが、苦笑混じりに小声でフォローを入れた。
「お父上があの様子だから俺から説明するよ。レオのウィンザー家ってのはな、表向きはただの文官一家なんだが、裏では王国の諜報員をやってるんだ。だからこの王国内で1番の情報通だぞ。ユージェの事は先行して知ってたらしい」
「まぁさっきも言ったけど、僕は次男だから率先して調べる立場じゃないんだぁ。学院を卒業したら、他国への諜報員になるかもしれないくらいかなぁ」
中々重要な内容をあっけらかんと言われた気がする。
いいのか?
「まぁユージェのお父上は宮廷魔術師長だから、いずれ話されると思ってな。それに、レオの態度や発言を気にしてただろう?」
「自分で調べたわけじゃないけど、今回のデビューに関して親父殿から言われててさぁ。どんな子かなー?って思ってたら、衣装以外は普通で逆にびっくりしちゃった。でもさっきの挨拶の時は堂々としてて、さすがだなーとも思ったよぉ」
あっはっはぁー、と終始軽い態度で笑うレオを見て、脱力した。
コイツ、なんか、変…!!
でもまぁ、なんとなく飄々としてる理由がわかったというか…
「…とりあえず、レオが僕を利用しようとしてないならいいよ」
「えぇー?しないよぉ、そんな罰当たりな。愛し子様怒らせて何が楽しいのさぁ」
「それもそうだな。真摯に向き合っていれば、この国に平和を齎してくれる象徴だぞ?態々敵対する意味がわからん」
…なんか、いい友達出来て良かったなぁ…
女の子達もこういう考えでいてくれればいいのに…
…あ、またあの女の子軍団が近くでこっち見てる。
うーん、出来れば変な子には関わりたくないなぁ。
「ユージェリス様!私と、1曲踊って下さいませ!」
…おいおい、まだ諦めてなかったのかよ、クソ女がっ…!!!