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愛し子、ユージェリス

女の子達がにじり寄ってくるのを傍目で確認しつつ、どうしようかと思っていたら。


「お時間になります。皆様方、こちらをご注目下さい」


僕が入ってきた扉とは別の扉から、1人の男性が現れた。

…誰だ?


「ご静粛に。皆様、本日は社交界デビュー、誠におめでとうございます。私は魔法師団第2師団長、ランドール=ローゼンと申します。これからお1人ずつ身分順に名前をお呼び致しますので、その方から順にこちらの扉から大広間へお入り下さい。入られたら陛下と王妃様へまず一礼をし、その後左右の貴族当主の皆様方へ一礼ずつお願い致します。陛下からのお言葉がありましたら歩みを進め、壇上へ1段上がり、ご祝福を賜ります。その際は臣下の礼を取って下さい。必ずお返事はするように。終わりましたらもう1度一礼して段から降り、陛下から見て左側から順にお並び下さい。もしわからなくなっても我々魔法師団の人間が周りでフォロー致しますので、ご安心して下さいね」


そういって、ランドール様がにこりと優しく微笑まれた。

おぉ、この人も父様の部下か。

というか、本当は父様がこの役目なんだよね。

今年は僕がデビューだからやらないだけで。


そういえば、よくよく周りを見てみると結構な人数が集まっていた。

…30人くらいかな?


「それでは、男爵子息令嬢から読み上げます」


ランドール様が1人、また1人と時間を開けて読み上げていく。

うーん、結構時間かかるねぇ…


「ユージェ、ケープを羽織らなくていいのか?」

「あぁ、忘れてた。僕そろそろかな?」

「いや、伯爵位が始まったところだからまだじゃない?僕が呼ばれたらもうすぐだと思うよぉ。侯爵位の人、2〜3人しかいなさそうだし。公爵位はルーちゃん入れて2人かな?んで、最後は王女様でしょ?」


確かに部屋には10人も残っていなかった。

…ケープというか、あのマントなんだよねぇ…

一応付与された伸縮機能で、今回は丈を短くしてケープ風にはしてあるけど。


「はぁ…腹括るかぁ…」

「何をそんなに意気込んでるんだ?緊張するならわかるが…」

「まぁ、ユージェにも色々あるんでしょぉ」


…うん?なんかレオの発言は引っかかるな。

まるで知っているかのような…


「…レオ、知ってんの?」

「まぁ、お家柄ね。まさか本当だとは思わなかったけど」

「お家柄?」

「それはユージェのお父上にでも聞いてみてよぉ。まぁ、僕は別に擦り寄るつもりもないから、気にしないで、ね?」


…どゆこと?

なんかレオの笑顔が胡散臭く見えるわ。

一方で眉間に皺を寄せて首を傾げるルーファスは、何も聞かされていないようだった。


「…まぁいいや、今度父様に聞いてみるから、レオも説明してよね」

「はいはい、仰せのままにぃ〜」


ひらひらと手を振りながら、レオはランドール様に呼ばれて大広間へと向かって行った。

僕はため息をついてから、マントを羽織る。

首元の飾り紐を付けると、その姿を見た誰かが息を飲んだ。


「…ユージェ、そのケープ…いや、マント…背中に…」

「偽物じゃないから安心してよ。ちゃんと陛下から下賜された本物だよ」

「…もしかして、ユージェ…」

「ユージェ!!」


ルーファスの声を遮るように声を上げたのは、メグ様だ。

ふわりとマントを翻しながら振り向くと、メグ様は目を見開いて、手に持っていた扇子を落とした。


「…そなた…その、髪は…」


あぁ、振り返った風圧でレースリボンが持ち上がったか。


「…ユージェリス=アイゼンファルド様」


ランドール様が、僕の名を呼ぶ。

僕は微笑んでからメグ様に一礼し、扉へと歩き始める。

扉を通り過ぎる時、ランドール様は僕に向かって一礼していた。

短い通路を進み、大きな扉の前に立つ。

ファンファーレが鳴り響く中、扉が自動的に開いた。

真正面には陛下とベティ様がいる。

まずはゆっくり一礼。

そして左右に一礼ずつ。


「ユージェリス=アイゼンファルド侯爵令息、前へ」

「はっ」


陛下の言葉に、僕は颯爽と歩き出す。

右側にいた貴族達から、驚きの声が小さく聞こえた。

…髪が見えたわけね。

そして1段上へ立ち、片膝をついて臣下の礼を取る。

…周りがざわざわし始めたのは、背中の紋章見たからかな?


「本日をもって、ユージェリス=アイゼンファルドの社交界入りを認める。今後はより一層、王国の為、民の為に、貴族の一員として励め」

「はい、精霊様の名にかけて、必ず」

「…そして『精霊の愛し子』として、更なる飛躍を期待している。王国へ害をなす者共を、その力を持って粛正せよ」


おぉん、ここで言うんですかー!

なんて返せばいいのやら…

あー、周りがめっちゃ騒ついてるぅ…


「…私は既に、この身を王国へと捧げております。王国が私を裏切らない限り、私は王国の盾となり、矛となりましょう。向ける刃の先が、誰であろうとも」


そう、僕を害さなければいいんだよ。

大なり小なり、僕に影響があるのであれば、容赦はしない。

僕の言葉の意味を汲んだのか、嘘みたいに大広間が静寂に包まれた。


…えー、ちょっと気まずいです。

さっさと退散しましょう!

僕は立ち上がり、マントを翻す。

それに伴ってレースリボンもふわりと持ち上がる。

すると左側にいた父様と母様と目があった。

あ、父様ちょっと呆れたように笑ってる。

母様は楽しそうだ。

僕も自然と口角が上がる。

そうだ、自信を持って宣戦布告しとかないといけないよね!

少しだけ挑発的に笑い、僕は壇上を降りて他の子達と共に並んだ。

おう、みんなチラチラ盗み見てくるな。


あ、さっきの伯爵令嬢が顔を赤らめてめっちゃ見てくる、こっち見んな。

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