女の勘
「ルーファスとレオは元から知り合いなの?」
どうも最初から距離の近かった2人に疑問を投げかける。
するとレオは笑いながらルーファスの肩に腕を回した。
「ルーちゃんの親と、うちの親が結構仲良いんだよねぇ。だから前から交流あってさぁ」
「そのルーちゃんってのはやめろ、気色悪い」
「えぇー?だってルーちゃん、黙ってると怖そうじゃん?愛称くらい可愛くしないと、女の子逃げてっちゃうよぉ?」
「余計なお世話だ!女などいらん!」
うーん、レオに遊ばれてるなぁ。
絶対面白がってる。
でも確かに、ルーファスは黙ってると謎の威圧感がある。
宰相さんも怒らせたら怖そうな雰囲気あったけど、あれよりもツンツンしてるよねぇ…
「…もしかして、ルーファスは女の子苦手なの?」
「…妹がいるんだが、その、どうしようもない奴でな…女性があんなのばかりではないとは思っているんだが、先程の伯爵令嬢を見て、同じ匂いを感じてな…」
あー、さっきの子がルーファスの苦手意識を増長させちゃったか…
そういえば、宰相さんも妹はどうしようもない的な発言してたな。
…ルーファスの教育に集中し過ぎて、放ったらかしちゃったのか?
嫌な予感がするから、僕には関わらないままでいてほしい。
そういえばあの伯爵令嬢はどこに行ったんだろう。
メグ様と話してる間に、どこかへ消えてしまっていた。
まぁ余計な事してなきゃいいや。
「でもルーちゃん、結婚しないとお家継げないよ?僕は次男だから結婚しなくたって困らないけど」
「うぐっ…!」
「僕も次男だから困らないな。でも一応幸せな家庭ってのを築いてみたい気持ちはあるよ」
「へぇ、じゃあユージェはどんな娘が好みなの?」
レオの言葉に、思考が一瞬停止した。
うーん、好みかぁ…
この1年の間に自分の恋愛対象が女性だって気付いたはいいけど、全然好みとか考えてなかった…
どんな、と言われるとすぐには思い付かないなぁ…
「うーん…とりあえず、さっきのはないな」
「愚問だな」「そりゃそうだ」
2人からも同意は得られた。
そりゃそうか。
「自己中心的な性格の人も嫌だな。相手を思いやれる人がいい。常に相手を蹴落とす事を考えてたり、嫌がらせをするような人は信用出来ない」
「寧ろそんな女を誰が好くというんだ」
「バレてないと思ってやる娘もいるからねぇ」
「媚び売ってくるタイプも嫌かな」
「嫌なタイプばかりだな」
「僕、好きな娘のタイプを聞いたんだけどなぁ」
レオが苦笑する。
そうだった、つい嫌なタイプばかり言ってしまった。
そんな感じで少しくだらない世間話をしていると、突然後ろから衝撃があった。
…いや、まぁ、身体強化スキルあるから痛くもないし、倒れもしないけどさ。
不思議に思って振り返ると、そこには僕より背の低い女の子が背中にくっ付いていた。
いや、なんでくっ付いてんの?
ぶつかったから?
「…あの」
「あぁ、申し訳ありません!躓いて足を挫いてしまったみたいで…お手数ですが、あの端にある椅子まで連れて行っていただいても?」
うるるんっ、という効果音でもありそうな潤んだ瞳で、上目遣いしながら僕に懇願する。
…えー、絶対嘘でしょ。
というか、嘘にしか見えないんだけど。
なんか、なんていうか…演技にしか見えない。
あれかな、前世で女だったから、女の勘っていうの?
こういうぶりっ子はわざとやってるのが丸わかり。
じゃなくても、ちょっとやりすぎだよね。
「…私は聖属性の魔法が使えますので、本当にお怪我をされているのならこの場でお治し致しますよ。さぁ、どちらの足ですか?」
「えっ…」
女の子の顔が一瞬固まって、僕から目線を逸らす。
ほーら、嘘だった。
「あの、えっと…い、異性の方に素足を見せる事に抵抗がありまして…申し訳ありません…」
「そうですか、ではスキルで状態を確認させていただきましょう。そうすれば直接見ずとも症状がわかりますからね」
「え?!いや、それは…!」
「まさか嘘だった、なんてありませんよね?」
僕は微笑む。
まぁ目は笑ってないだろうけど。
女の子の顔は蒼白になっていった。
「あーあ、ユージェ怖ーい」
「凄いな、ユージェは。キチンと嘘が見抜けるんだな」
「いやいや、あれはわかりやすかったでしょぉ」
なんか2人が話してる。
ルーファス、もう少し女性に慣れた方がいいな。
すぐに騙されそうだ。
しかもなんか言質取られて責任取る事とかになりそう。
「あ、な、なんだか足の痛みも良くなって参りましたわ?!軽かったみたいで…おほほほほ、お手数をおかけして申し訳ありませんでした、失礼致します!」
背中にくっ付いていた女の子は冷や汗をかきながら、そそくさと退散していった。
…なんだったんだろ。
あ、女の子達の輪に戻ってった。
僕はみんなにバレないように背中で指を軽く鳴らす。
すると、さっきの女の子達の輪の中の会話が僕だけに聞こえてきた。
『あぁ、失敗しちゃったわ…』
『結構鋭いんですのね…』
『あのお3方に近付くにはどうしたらいいのかしら…』
『…それにしても、ユージェリス様、とてもいい匂いがしたわ…』
『えぇ、羨ましい…』
『それに見た目の割に体がしっかりしてるみたいで、ぶつかっても全然よろめいてなかったわ』
『まぁ、結構鍛えていらっしゃるのかしら?』
『あの衣装もとても素敵よねぇ…今までにないけど、とてもカッコいい…』
『次、誰が行きます?』
『同じ手は使えないわよ?』
『普通に話しかけてみるとか?』
『なんて話しかけるのよ、警戒されてるかもしれないわ』
『レオナルド様に話しかけてみるのはいかが?女性に優しそうですわ』
『それよりもルーファス様の方が女性に慣れてない分、レオナルド様とユージェリス様もフォローに入ってお話出来るかもしれないわ』
『そうね、それもいいわね』
…やーだー、なんか狙われてるぅ…
女の子って怖ーい…
僕的には女友達が欲しいんだけど、高望みしちゃいけないのか…?
明日更新分からはついにデビュー本番です。