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初めての友達

「ほう、では妾もお主達と変わりない、という事かのぅ?エリザベートとやら」


僕の背後で、小さな笑い声と共にそんな言葉が聞こえた。

振り返ると、そこにいたのはスラリと細い少し燻んだ金髪に真紅の瞳の女の子だった。


「誰ですの?私に向かって無礼ですわ!」

「ほう、無礼とな?この国の王女に向かって、無礼と申すか。これは愉快じゃ」


…王女。

その言葉に、部屋の空気が変わった。

さすがの伯爵令嬢も、王女と聞いて顔色が悪くなる。

そりゃそうだ、さすがにただの貴族の子息令嬢とは違うもんな。

この子が、陛下とベティ様の…

うん、確かに似てるわ。

どちらかと言えばベティ様似かな、ちょっと気の強そうなところとか。

真紅のドレスも華やかでお似合いです。

というか、のじゃ姫かよ。

…ベティ様の趣味かな?


「も、申し訳ありません…」

「よい、妾も名乗っていなかったからな、知らぬで当然であろう。妾はマーガレット=リリエンハイド、この国の第一王女じゃ。皆の者、今後とも良しなに。どうせ殆どの者が学院で会う事になるんじゃろうからのぅ」


マーガレット王女の言葉に、全員が頭を下げて臣下の礼を取る。

まぁ一応僕も頭を下げとくよね。


「…おや?エリザベートとやらに絡まれておったお主、もしやアイゼンファルド侯爵子息かえ?なんと、素敵な衣装を纏っておるな!」


…おっと、まさかの気付かれた。

ベティ様達にどこまで聞いてるんだろ…


「はい、お初にお目にかかります。アイゼンファルド侯爵子息、ユージェリス=アイゼンファルドと申します」

「父上達から聞いておる、アイゼンファルド侯爵家には妾と同い年の息子がおるとな。そう固くならずとも良い、妾とそなたは従兄弟なのだからな。ユージェリスと言ったか、愛称はなんじゃ?」

「…兄妹からは、ユージェと呼ばれております」

「ユージェか、では妾もそう呼ぼう。そなたも妾の事はメグと呼んでくれて構わんぞ!」


…えーっと、いいのか?

さすがに王女様だしなぁ…


「…では、公式な場以外ではメグ様とお呼びさせていただきます」

「呼び捨てで敬語もいらんのじゃがのぅ…まぁ良い、これからよろしく頼むぞ。従兄弟同士、きっと付き合いは長くなるからの」

「はい、よろしくお願い致します、メグ様」


メグ様が手を差し伸べてきたので、とりあえず僕も手を取り握手をした。

…あれ?これって初めての友達って感じ?

ってか王女様を友達と言っていいのか?

違うよなぁ、それに一応親族だし…


「そうじゃ、ルーファス=オルテスはおるか?」

「は、お呼びでしょうか?」


メグ様の呼びかけに、さっき見かけた2人組の1人が一歩前に出る。

赤茶色の髪に茶色の瞳で少し緊張した面持ちの少年は、焦げ茶色を基調とした衣装を身に纏っていた。


「ユージェ、紹介しておこう。公爵子息のルーファス=オルテスじゃ。父親のジェイク=オルテスはこの国の宰相をしておる」


あぁ、宰相さんの息子さんか!

そういえば言ってたな、同い年だって。


「ルーファス=オルテスだ。ユージェリス殿、よろしく」

「ユージェリス=アイゼンファルドです。よろしければユージェとお呼び下さい、ルーファス殿」

「敬語は不要だ。俺の事はルーファスと呼んでくれ、ユージェ」

「ありがとう、ルーファス。よろしく」


差し出された手を握り返す。

やった、今度こそ友達だ!

メグ様には感謝しないと。


「ねぇねぇルーちゃん、俺も紹介してよぉ」


ルーファスの後ろからひょっこり顔を出したのは、さっきまでルーファスと一緒にいた少年だった。

背の高いルーファスの後ろにすっぽり入るような細身の少年は、黒髪に緑色の瞳をしていた。

どことなく飄々としていて、なんとなくチャラく見える。

ルーファスが硬派な感じだからかな?

髪色が逆だったら余計にそう見えそうだ。

深緑を基調とした衣装は軍服を思い起こさせたが、なんとなく着崩していてチャラさが倍増していた。


「第一王女様、ご挨拶させていただいても?」

「良い、許す」

「ありがとうございます。ウィンザー伯爵子息、レオナルド=ウィンザーと申します。以後、お見知り置きを」

「ほう、あのウィンザーの者か」

「とは言っても、自分は次男なので家業にはあまり詳しくはありませんけどねぇ」


ケラケラと笑う伯爵子息を見て、メグ様は小さく笑った。

…ウィンザー伯爵家って、有名なのかな?

後で父様に聞いてみよう。


「ユージェリス殿、自分の事はレオって呼んで下さいよ。身分も下なんで、敬語も不要ですから」

「そちらこそ敬語じゃなくていいし、ルーファスみたいにユージェと呼んでくれて構わないよ、レオ」

「あ、本当に?それは良かった。敬語って苦手なんだよねぇ。よろしく、ユージェ」


レオとも握手をして、会話を交わす。

よーしよし、順調に友達が出来てるじゃないか!

…後は愛し子発表したら、どんな反応するかだな。

もしかしたら親から聞いてるかもしれないよね、ルーファスの方は。

ドキドキするわぁ…


…にしても、自分で言うのもあれだけど、全員顔面偏差値高いな。

この3人で渋谷とか原宿とか行ったら囲まれそうなレベルだよ。

何人か遠巻きでこっちを見てるお嬢さん達が顔赤くしてるし。

ってか何気メグ様逆ハーレム状態じゃん。


「ふふふ、いいのぅいいのぅ。綺麗な顔が揃うと、それだけで楽しくなるのぅ」


…いや、メグ様、なんか僕達から一歩下がってこっち見てたわ。

心なしか機嫌も良さそうだ。


「メグ様?どうかしましたか?」

「妾は綺麗なモノが好きでなぁ…そなたらは各々が違う系統で綺麗な顔をしておるから、眼福じゃ」


くふくふ笑って、幸せそうなメグ様。

ちょっと見方を変えると、貴腐人のように見えてしまう。

いや、まぁ偏見はないけど、その対象として見られるのには些か違和感が…

でもまぁ、そういう観賞用ではないんだろうな。

きっとジャニオタとかの方に近いのかもしれない、うん。


「可愛い系のユージェに、インテリ系のルーファス、チャラい系のレオナルドか…これからが楽しみじゃのぅ!」

「「いんてり?ちゃらい?」」


ルーファスとレオがメグ様の言葉に首を傾げる。

…ベティ様、何をメグ様に教えてんですか…!!

教育の方向性間違ってませんか?!

いつか普通にメグ様ともアニメの話が出来るんじゃないかってドキドキしちゃいますよ!!


「さてと、妾も同性の友人でも作りに行こうかのぅ。そなたら、またな」


そう言ってメグ様はひらひらと手を振り、お嬢さん方がいる輪の方へと向かっていった。

うーん、やっぱりメグ様ってベティ様に似てる。

僕を助けてくれて、友達作るきっかけもくれて。


一部不安な面もあるけど、素敵なお嬢さんですね、ベティ様。

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