表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/363

タチの悪い求婚

馬車を降りて、王城の入口で父様達と別れた。

親は先に大広間に行き、デビューの子供は控えの部屋へ行くらしい。

今は看板頼りに控えの部屋に向かって歩いてるところ。

たまに騎士の人が立ってるんだけど、僕を見ては驚き、頭を下げられた。

…愛し子ってバレてるのかな?

それとも、この格好見て驚いてるだけ?

不用意に話しかけられないし…


…てか、友達ってどうやって作ればいいんだろ。

兄様に控えの部屋の様子を聞いてみたけど、普通なら服とかを褒めつつ話しかけて距離を縮めていったりするらしい。

でも、僕は愛し子なわけだから、ちょっと勝手が違う。


パターン1。

僕から話しかける→愛し子発表→親しいと風評される→利用される可能性大

パターン2。

相手から話しかける→僕が返事をする→愛し子発表→親しいと風評されるor愛し子に接近したと見なされて処罰


…どっちもダメじゃね?

え、会話を成立させたらヤバい感じ?

いやでも、結局のところ相手次第か?

相手がまともな人であれば、親しいと周りに言いふらしたりはしないわけで…

…そのまともな人かどうかを判別するために話しかけたいのに…


これ、なんて詰みゲー?


「…着いちゃったし…」


えぇい、悩んでても仕方がない!

とりあえず特攻じゃあ!!!


僕はゆっくりと扉を押し開けた。

中に入ると、そこには10人ちょっとの子供がいるだけだった。

…思ったより少ない…

いや、それもそうか、何十人といるわけじゃないよな。

その年で産まれた人数なんて変わるんだろうし。

多い年もあれば少ない年もあるか。

それにまだ全員じゃないかもしれない。

そう思いつつ、僕は部屋の中に足を進めた。


…みんなから見られてる…

え、なんで?やっぱりこの衣装のせい?

それとも愛し子だってバレてるの?

聞きたいけど聞けない…

しかもすでにグループみたいなの出来ちゃってるところもあるし…

めっちゃコソコソ話されてる…

無詠唱もどきで何喋ってるか聞いてみようか…

あぁ、あの男の子2人のグループに入れてもらいたい…

いやでも、女の子の方が話が合うかな…?

あー、でも、女の子の方が注意が必要だよなぁ…

両親に似て将来有望な顔立ちだし、例えば例のデブハゲ伯爵の娘とかに間違って声かけたら、嘘の噂とかめちゃくちゃ言いふらされそうだし…


「ちょっと、そこの貴方!」


…目の前に突然、ピンクすぎて目が痛くなるような女の子が現れた。

何がピンクすぎるかって?

髪も瞳もドレスも、全てが濃いピンクだったり薄いピンクだったりするからだ。

しかもドレスはリボンとフリルがたっぷり。

ここまでくるとクドイわ。

顔は可愛い系統だけど、ちょっとふくよかな感じ。

もっと貴女に似合ったドレスがあったと思います。


…ってか、僕に話しかけてるんだよな?

無視するわけにもいかないか…


「…私でしょうか?」

「そうよ、貴方よ!その服、一体誰がデザインしたものなの?!今まで見た事ない、でもとっても素敵!それに貴方、とても綺麗な顔立ちをしているわ!」

「あ、ありがとうございます…デザインについては、専属のメイドや服飾屋の者と一緒に話し合って決めたのですよ」

「貴方も関わっているの?デザインのセンスもあるのね!顔も私の好みだし、言う事なしだわ!」


…褒められてる。

これ、気付いてないパターンだよね?

めちゃくちゃ顔を赤くして詰め寄ってくるし。


「…決めたわ。お父様はなんか勝手な事言ってたけど、そんなの知らない。貴方、私の婚約者になりなさい!私みたいな素敵なレディが婚約者なら、貴方も嬉しいでしょう?感謝なさい!」


…Oh…Jesus…

え、なんなの?バカなの?

頼まれてもお断りなのに、何勝手に決めてんの?

ダメだ、ここでキレて口悪く言うわけにはいかない。

頑張れ、耐えるんだ!!


「…申し訳ありません、お嬢様。私は貴女のお名前すら存じ上げませんので、さすがにそのような方の婚約者になる事はちょっと…」

「私はエリザベート=フロイセン。フロイセン伯爵令嬢よ!さぁ、婚約の誓いを交わしましょう!」


いやいやいや、何言っちゃってんのぉ?!

ってかコイツがデブハゲ伯爵の娘じゃねぇか!!

え?本当になんなの?

親子揃って空気読めない系?

周りも心なしかポカーンってしてるじゃん?

しかもこっちも了承なんてしてないし?

てか婚約の誓いって何よ?!


ーーーーーーーーーー

【婚約の誓い】

現在では行われる事は殆どありませんが、貴族間で強制力を持つ婚姻関係を結ぶ事を『婚約の誓い』と言います。

縁を魔法印で刻み込まれた書類にサインをする事で、何があろうとも解消する事の出来ない婚姻関係を結びます。

書類の内容(条件)は書面によって異なります。

キチンと内容は読み込んでからサインをしましょう。


〜参考文献〜

著・セドリック=ロール、"貴族の一生"、P57

ーーーーーーーーーー


あかんやつやーん!!!!!

ある意味奴隷契約みたいなもんじゃね?!

ってかこの娘、いつの間にか書類とペン持ってるし!!

…すっげぇ禍々しいオーラを纏ってやがる…!!

魔法印って事はエセ中国語でしょ?

縁に一体何が書かれて…


【絶対婚姻破棄不可絶対婚姻破棄不可絶対婚姻破棄不可絶対婚姻破棄不可絶対婚姻破棄不可…】


ホンマにあかんやつやーん!!!!!!

誰だよこれ作った奴!!

誰だよ漢字教えた愛し子!!

つーかなんでこんなもん持ってんだよこの娘!!!


え、ぶっ飛ばしていいかな?!

ダメ?ダメ?!

どうしたらいいの…!!

と、とりあえず…!!


「フロイセン伯爵令嬢、生憎ですがそれにサインする事はありません。貴女は相手の同意なしにそのようなものにサインを強要するレディなのですか?」

「まさか!だって私を振るなんてあり得ませんわ!お父様がいつもおっしゃってますもの、私が1番この国で美しく、素晴らしいレディだと!私の愛を拒む殿方などどこにもいないと!」


デブハゲぇー!!!!!

クソ女に育て上げてんじゃねぇよ!!!!!

ちったぁ真面目に子育てしやがれ!!!!!

えぇっと、なら、さっさと断るべし!!

こんなのを野放しにしていたら、他にも迷惑かけそうだし!!


「申し訳ありませんが、私は貴女と婚約の誓いをするつもりは毛頭ありません。初めてあった相手に顔が好みという理由だけで求婚されても、不快なだけですね。私はこれでも侯爵子息、貴女よりも身分が上です。不敬で処罰されても、文句は言えませんよ?」


これでどうだ…!!

身分も盾にしてやったぞ、さすがに引き下がれや…!!


青筋を立てつつ、一応笑顔で対応していたが、そろそろ限界が近い。

でも何故か、クソ女はキョトンとした顔で小首を傾げた。

全然可愛くない、寧ろイラッとするわ。


「侯爵子息がなんですの?当人同士の話でしょう?身分は親のものですわ?」


ある意味正論突かれたっ…!!!!

なんでだよ、なんでそんなところだけ真面目に返してくるんだよ!!


誰か、どうすればいいのか教えて下さい…!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ