社交界デビュー
本日7雷6日、社交界デビューの当日です!
いやぁ、ここまで色々あったよ…
あの黒い瘴気については結局わからなくて、僕の外出禁止令が出ただけだった。
…つまり、デビューが終わってもジャルネに行けなくなったわけで。
ついベティ様に事情話して抗議したよね。
ベティ様も半泣きだった。
まさか外出禁止令が出た理由がベティ様の一言があったからだなんて…
今更取り消せるわけもなく、1人で遠出が出来なくなりました。
王都とか領地内のお忍びは許されたけど…
ちなみに2回目の誕生日会もそんな騒動の中で行われたから、あんまり盛大な感じじゃなかった。
寧ろ父様忙しくて不参加だったし…
フローネからは似顔絵と花束をもらった。
ロイ兄様はお忍び王都で買った色鉛筆みたいなペン。
母様と父様からは僕が読んでない長編小説セット。
リリー達使用人からはお忍びで着る、ちょっと質のいい平民服をもらえた。
ちなみにセイルとは未だに会話してないので、誕生日会場では扉の隙間からこっちを見ていた。
ドリー曰く、『最近大人しく真面目に仕事してるんで、とっても助かります』との事。
ちゃんと反省出来てるなら、そろそろこっちもごめんなさいしようかなと思ってます。
さてさて、そんな日々を過ごして、今は王城に向かう馬車の中。
隣には父様、向かいには母様、母様の隣にはシャーリー。
勿論、御者はレリックです。
リリーはお留守番です、残念。
「それにしても、とってもその服素敵だわぁ」
「そうだな、今まで見た事ないデザインだが、とてもユージェリスに似合っていて、いいと思うぞ」
「まさか黒を主体にするなんて思ってもみませんでしたが…」
そう、僕は衣装の主体色を黒にした。
一般的な衣装は出来るだけ目立つために、明るい色味が多く選ばれるらしい。
女の子なら赤やピンク、黄色にオレンジなど。
たまに黄緑や水色なんかも流行によっては選ばれるそうだ。
男の子ならカーキ色や明るいグレー、青系統や緑系統などが好まれる。
たまーに目立とうとして赤や紫なんかがいるらしい。
実は黒を着る子供は殆どいない。
理由としては目立たないから、暗いから。
ならばそこをつけばいいと、僕は思い立った。
だって黒の方がカッコいいじゃん?
それに黒なら、僕のメッシュの色とも合うし。
いっそ愛し子として盛大に発表されるなら、目立ってなんぼでしょ!
それにここでめちゃくちゃ派手に目立っておけば、ちょっと髪色変えたり普通の服着るだけで別人に見られそうだし!
のちのお忍びのために、前準備はかかせません…!!
というわけで、例の坊ちゃんを参考に作ってもらいました!
黒いハットに銀と黒の2種類のレースリボンをあしらって、結び目からそのまま長めに垂らす。
そうする事で、一見するとメッシュがないように隠して見える。
黒色が見えてもレースリボンか地毛かなんて、一瞬じゃわからないのさ!
まぁ素早く歩いたりするとレースリボンが揺れて、メッシュも丸見えだけど(笑)
兄様と同じくダブルブレストの黒のジャケットも、普通より丈は長めでボタンは銀。
捲った袖は父様の瞳の色のような濃い青色に、裾には銀の糸で施された刺繍。
首元のリボンはやめて、濃い青色のアスコットタイにした。
リングの留め具はシルバーで自作した魔導具になっている。
魔力を通すと発動するタイプで、認識阻害効果を発動するようにした。
万が一取り囲まれても、さっと逃げられるようにね。
ベストはジャケットのボタン止めたら見えないけど、シンプルな黒にしておいた。
ハーフパンツも黒で、ジャケットと同じく折り返した裾は濃い青色。
靴は革靴が迷ったけど、ここまで目立つならと膝丈の編み上げヒールブーツにした。
男でヒールブーツを履く事なんてないとリリー達には驚かれたけど、仕立ててくれた服飾屋さんの人は目を輝かせていたなぁ。
ちなみに色は黒で、編み上げ部分は銀色にしてみた。
ケープをどうするか迷ったけど、ベティ様から贈ったマントを着用するようにって言われたので、とりあえず手に持ったまま登城する事にした。
大広間に入る時に着てればいいらしいからね。
背中の紋章が目立つから、直前までは着ません。
そしていつも通り、耳にはイヤーカフ。
いつもはメッシュのある右側の髪を耳にかけて、左側は耳にかけてなかったからイヤーカフが見えてなかったけど、今日は逆にした。
右側は耳にかけずにハットとレースリボンで隠し、左側は耳にかけてイヤーカフを目立たせる。
うん、今度からこの髪型でもいいなぁ。
ちなみに父様も今日は僕とお揃いの髪型って事で、左側の髪を耳にかけてくれている。
「色々と驚いたりはしたけど、こうやって見るとカッコいいわねぇ…来年からの流行になりそうだわ」
「え、そこまでですか?」
「えぇ、その折り返した袖や裾の色を変えるところや、丈の長いヒールブーツも流行るでしょうね。それにしても、よくそんなヒールブーツが履けるわねぇ?私なら慣れてるけど、初めてでしょう?」
「私は無理だな、歩けなさそうだ」
「いやぁ、僕バランス感覚いいから全然大丈夫だよー」
言えない、前世で毎日ヒール履いてましたとか。
これくらい慣れっこだよね、たかが5cm程度じゃ…
心の中でそう思いながら、窓の外を眺める。
ちょうど王城の門の前に着いたところで、レリックが門番の兵士と登城の手続きをしているところだった。
いよいよだな、ちょっと緊張する…
「ユージェリス、そろそろ王城に着く。覚悟はいいか?変な輩には捕まるなよ?もし絡まれたら、キチンと名前と顔を覚えておくように」
「はい、父様。お任せ下さい」
「しっかりおやりなさい。ちゃんと見守ってますからね。ユージェリスちゃんのカッコいいところ、楽しみにしてます」
「はい、母様。頑張ります」
僕は2人の言葉に決意を新たにする。
よーし、たまにはめちゃくちゃ目立ってやるぞぉ!
でも出来れば普通の友達も作るぞぉ!
…未来のお嫁さんになってくれるような良い子とか、いるといいなぁ…
服の説明って難しいな…




