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15年ぶりの《sideベアトリス》

昨日更新出来なかった…!!

やんなっちゃうわねぇ、あそこの文官さん。

なんで私のじゃない書類をこっちに回してくるのかしら?

仕事出来ないくせに擦り寄ってきたりして、自分の評価わかってないのかしら?

最近ではルートレールに事あるごとに話しかけたりしてるみたいだし…

あれ、絶対柚月ちゃん狙いよね。

もう勘付いたのだとしたら、変なところだけ優秀ね。

にしても、身分の下の者が上の者にそう何度も話しかけるなんて、なんて無作法な…


「呆れてモノも言えないわ…」

「如何なさいましたか?王妃様」


女官長が私の呟きを拾ってしまった。

いけないいけない、王妃ともあろう者がなんたる失態。


…あれだけ王妃になりたくないと思ってたのになぁ…

私も随分、あの人に絆されたものだわ。


「いいえ、なんでもありません。それより少し魔法師団のところへ参ります」

「承知致しました、先触れはお出しになられますか?」

「長居するわけではないからいいわ」


そう言って、私は該当の書類を手に席を立つ。

ルートレールにこれを渡して、ついでにあの文官さんについて話しておこう。

柚月ちゃんを害する者は、誰であろうと許さないんだから!


意気込んだ私は、魔法師団室の前にやってきた。

…あら?なんだかちょっと懐かしい匂いがする。

なんだったかしら…うーん…

…ダメね、思い出せないわ。

私も歳かしらねぇ…


「あの、王妃様、お入りになられますか?」

「え?あぁ、そうね、入ります」


あらやだ、ぼーっとしちゃったわ。

女官長が私の返事を受けて、扉をノックする。


「失礼致します。ベアトリス=リリエンハイド王妃様、ご入室致します」

「承知致しました、どうぞお入り下さい」


ルートレールの声が聞こえ、扉が開く。

中に入ると、仕事中の魔術師達が一様に頭を下げていた。


「面を上げなさい。皆さん、お仕事に戻られて」

「「「「「はっ」」」」」


私の許可にみんなが一斉に動き出す。

まぁさすがにルートレールまでの道筋は邪魔しないようにだけど。

そのまま私は室内を進み、ルートレールの前に立った。


「王妃様、本日は如何なさいましたか?」

「ご機嫌よう。実は私の方に貴方の書類が混ざっていたのよ。ほら、これ。内容は少し読んでしまったけど、許してね」

「これはこれは、ご足労いただき恐縮です。お呼びいただければ私からお伺い致しましたのに」

「たまにはいいじゃない、少しは私だって動きたいのよ。それに、気になる事もあったから」

「気になる事、でございますか?」

「なんだか1人、貴方の周りをうろちょろしてる文官さんがいるそうじゃない?」

「…お耳に入っていましたか」

「ちなみにこの書類を間違えたのも同じ方よ。そろそろどうにかした方がいいんじゃなくて?」

「そのつもりではあるのですが、ユージェリスに実際に彼奴の娘が近付いてからでもいいかと」

「…無理矢理にでも近付いてくるだろうから、それを不敬と処罰するおつもり?」

「左様にございます」


なるほどねぇ、頭の足りないお嬢ちゃんだったらやらかしそうね。

あの文官さんの娘っていうなら、あり得る話だわ。


「あぁそうだ、王妃様。こちらをどうぞお持ち帰り下さい。久方ぶりに、ユージェリスが王妃様へ贈り物を用意したそうなので」

「まぁ!」


あらあら、柚月ちゃんったら!

今回は何を作ってくれたのかしら!

最近はめっきり減っちゃったから、ちょっと寂しかったのよねぇ…

内心狂喜乱舞の私は、王妃様スマイルでルートレールから箱を受け取った。

…あぁん、凄いいい匂い♡

でも何かしら…この匂い…さっき感じたのと同じだけど…


「ルートレール、貴方の分は?」

「あります。届いた時はちょっと仕事の区切りが付かなかったので、まだ食べていませんが」

「あら、そうなの。ちょっとここで開けても構わないかしら?」

「もちろんどうぞ。私はいつもここで食べてますからね」


ルートレールが爽やかな笑顔で答える。

ちなみに周りは随分と沈んだ表情をしていた。

きっとそれって、随分な匂いテロだったって事よね。

電車の中の○ックくらいえげつないやつじゃない。

あれって匂い嗅ぐとすっごいポテトが食べたくなっちゃうのよねぇ…

ま、私も陛下の目の前で差し入れ食べてるけど。

いつもあの悔しそうで悲しそうな表情見てると、余計に美味しいのよね。

私ってば、ド・エ・ス♡


そんな事を考えながら、箱を開ける。

…これって…


「…もしかして…唐揚げ?」


大きめの唐揚げが6個と、山盛りのポテト。

唐揚げの横にはレモンのくし切りも入っていた。

でも変ね、前に柚月ちゃんってば『レター』で醤油がなければ唐揚げは作れないって言ってたのに…


「…この匂い…」

「あぁ、とてもいい匂いですよね。私も隙間から香るこの香ばしい匂いに、先程からよだれが止まりませんよ」

「…これ…醤油だわ…まさか、あの子本当に見つけたの…?」

「王妃様…?」


柚月ちゃんったら、本当に凄い子なんだから!

一体どこにあったのかしら?

まさか自作じゃないわよね?!

料理はからっきしだけど、醤油が作るのに途方も無い手間がかかるのは知ってるのよ?!

なんか大豆とか、菌?とか、そーゆーの混ぜて時間かけて作るんでしょ?!

…あら?それって味噌だったかしら?


「王妃様?」

「これはねぇ、私が食べたかったものの1つなのよ。ついに作れたのねぇ…1ついただいちゃいましょっと」


箱に入っていたピックを使って、唐揚げに突き刺す。

そのまま私は唐揚げに噛り付いた。

後ろで女官長が小さく悲鳴を上げている。

…ちょっとくらいいいじゃない、お行儀悪いなんて言わないでよね。


「あー…この味だわぁ…」


あぁ、15年ぶりのお醤油味…

これが日本の味よねぇ…

あ、ルートレールも唐揚げガン見してる。

食べたくなっちゃったのかしらねぇ。

…もう1つ食べてもいいかしら?


「戻りました!!師長、お話が…!!」


突然、扉が勢いよく開く。

飛び込んできたのは第1師団長と第3師団長だった。


「アレックス、ロイド、王妃様の御前だぞ」

「「し、失礼致しました!!」」

「よろしくってよ。何か問題でもあったのかしら?」

「はっ!…あの、師長、坊ちゃんが…」

「坊ちゃん?」

「…愛し子様であられるユージェリス様について、お知らせしたい事が」

「…ユージェリスがどうした?」

「…先程、謎の事象がありまして…」


…柚月ちゃん、一体何があったの…?

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