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忍び寄る災い

「ゆ、ユージェリス様、まだ怒ってらっしゃいますか?」

「ううん、別に怒ってないよ?ほら、さっきの食べちゃいなよ」


僕達は庭にやってきて、お気に入りの木の下で寝転がっていた。

さすがにリリーは立ってるけども。

うーん、怖がらせちゃったみたいだなぁ。


「怖がらせてごめんね?」

「いえ、あれはセイルさんが悪かったですし、ユージェリス様のお怒りもしょうがないかと…悪い人ではないのですが、前からキチンと出来ない人というか、自分優先というか…」

「そうだねぇ…ちょっとは反省してもらわないとね」


にしても、なんであんなにキレちゃったんだろ。

自分でも驚くくらいだった。

こうなんか、今まで溜まってた何かが溢れ出た感じ…

うーん、なんだろ、思い出せない。

いいや、本でも読もう。


「ユージェリス様、今日のもとても美味しいです〜」


リリーが唐揚げを頬張りながら、幸せそうに微笑む。

うんうん、その笑顔が見たかったんだよ。


「それは良かったね」

「なんだか今までいただいた揚げ物とちょっと違いますね。塩味というわけでもないですが、食べた事のない味です。とても美味しいですけど」

「それはまだ秘密。まぁいつかは教えられるだろうけど、今はちょっと言えないんだー」

「そうなんですか、わかりました。…でもまた作っていただけますか?」

「リリーは本当に食いしん坊だなぁ。まぁ、機会があればね。そうだ、それ食べ終わったら何か飲み物持ってきてくれない?僕、ここで暫く本読むから」

「承知しました、行ってきますね!」


早々に食べ終わったようだった。

僕に一礼しつつ、屋敷の中へ戻っていく。

さーて、今日は何読むかなー。

父様が初代リリエンハイド王の物語を借りてきてくれたから、それにしようか。

陛下のご先祖様って事は、顔とかも似てたのかな?

…いや、よく考えたら母様は王女様だったし、僕のご先祖様でもあるのか!

そりゃすげぇな。


「…だろ?お前…」

「バカを言え、そんな…だ…」


…なんか話し声が聞こえるな。

僕は体を起こして、周囲を見回した。

少し離れた木の陰に、誰かいるようだ。

…男の人が2人、かな?

部外者なら入れないだろうし、会った事ない人が来る時は見つからないように先触れがあるから…


「ほら、気付かれたじゃねぇか!」

「私のせいか?!どうするんだ、こっちから声かけちゃいけないんだろ?!」

「でもここで何もせずに立ち去ったら印象最悪じゃん!」

「それもそうだが!師長にどうすればいいか聞いときゃ良かった…!!」


…師長って、父様だよね。

じゃあ魔法師団の人かな?

確かに父様が仕事行く時に着てるローブとそっくりの着てるし。

こういう時は鑑定スキルさんにお任せです。

じー…


ーーーーーーーーーー

【鑑定結果】

アレックス


職業・魔法師団第1師団長

称号・平民、魔術師

年齢・37歳

属性・火/水/地/風/光/無

HP・3175/3175

MP・4120/4120


状態・なし

ーーーーーーーーーー

【鑑定結果】

ロイド=フラメンティール


職業・魔法師団第3師団長

称号・フラメンティール士爵家当主、魔術師

年齢・41歳

属性・火/水/風/光/無

HP・2985/2985

MP・3780/3780


状態・なし

ーーーーーーーーーー


…おぉ、父様の部下だ。

しかもそれなりに偉い立場、直属の部下だよ。

やっぱり普通の人より魔力多いな。

これは確かにお互い無視したらあかんやつや。

でも、なんでこんなとこにいるんだ?

とりあえず目が合っちゃったから会釈だけしておこう。

向こうも慌てながら頭を下げてくれた。

…で、ここからどうしよう。


「ユージェリス様ぁ、紅茶お持ちしましたよー」


ちょうどいいところにリリーが帰ってきた!

ラッキー!!


「ありがとう、リリー。戻って早々悪いんだけど、あそこにいる父様の部下の人達が僕と目が合って困ってるから、助けてあげて?」

「へ?」


僕が指差した方向を、リリーが目線で追う。

暫く固まっていたが、理由を察したらしい。


「なるほど、ユージェリス様に声かけれないけど、目が合ってしまったからこの場を離れられない、と」

「そういう事」

「行ってきます」


リリーが小走りで部下2人に近付き、一礼してから話しかけた。

どうやら向こうも安堵したようで、リリーと普通に会話してる。

あ、会話終わったみたい。

また2人は僕に対して頭を下げてから屋敷へ向かっていった。


「終わりましたよ」

「ありがとう。どうしたの?あの2人」

「珍しく旦那様が忘れ物をされたそうで。レリックさんは先程王城に向かわれてしまってすれ違いになってしまったので、近くを巡回中だったアレックス様とロイド様が受け取りにいらしたそうです。そしたらユージェリス様をお見かけしてしまって、目が合って…という事でした」

「なるほど、レリックに行かせるのがもう少し遅ければよかったな。お2人には悪い事をした」


今日に限ってとは、やっちゃったなぁ。

なんかお詫びを…あ、そうだ。

思い出して、僕はアイテムボックスを開く。

中から取り出したのは、前に差し入れたクッキーを包んだ小袋だった。

ちょっとだけ残して、非常食に取っといたんだよねぇ。

ちょうどいいから、これを渡してもらおう。


「リリー、これあのお2人に渡しといて。態々失礼致しましたって。よろしくね」

「承知致しました。全くユージェリス様ってば、お優しいんですからー」


呆れたように笑い、リリーは屋敷の方へ戻っていった。

僕はまた仰向けに倒れ込み、木の下でゴロゴロする。

あー、なんかいい天気で眠くなってきたなぁ…

ちょっとだけ寝ようかな。

後でリリーが起こしてくれるでしょ。


そう思って、僕は目を閉じたのだった。

背中に面した地面から吹き出る、黒い靄に気付かずに。

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