秘密の唐揚げ
お昼を食べ終わり、僕達は屋敷に帰ってきた。
ブレスレットは壊れちゃったから、帰りは幻覚魔法で誤魔化した。
もう出歩く予定もなかったしね。
隣のお店の人と会釈しただけで済んだ、よかったぁ。
そしてなんと!
ロッツォさんが醤油をちょっとだけ譲ってくれた!
10cmくらいの小瓶だけど、めちゃくちゃ嬉しい!!
去年見つけて1本購入し、ちょっとずつ料理に使って試行錯誤をしていたらしく、これだけしか残っていないそうだ。
そんな状態でくれるなんて、貴方が神か。
僕はそれはもう大事にアイテムボックスにしまい、ロッツォさんにめちゃくちゃお礼を言っておいた。
寧ろその場でお礼の魔導具作って渡してきた。
ロッツォさんが昔使っていたという革紐のネックレスがあったから、それを直して『ヒール』を付与。
これでロッツォさんにまた何かあっても問題ないと伝えると、今度はロッツォさんからめちゃくちゃお礼言われた。
それにしても、朝から出かけてたからちょっと疲れたなー。
お昼寝しよっかなー。
そう思って、一応魔力回復のポーションを飲んでから自室のベッドでゴロゴロしてます。
「…いや、折角醤油が手に入ったんだし、何か作るべきか…?!この感動をベティ様にも伝えたい!」
思い立ったが吉日、僕は体を起こし、椅子にかけておいたエプロンを掴んで厨房へと走った。
リリーの慌てる声が聞こえるけど、無視無視。
「厨房貸して!!」
「ぅお?!…あぁ、ユージェリス様、お帰りなさい。いつものところですよね、どうぞ」
「ありがと!でも今回は誰も近付かないで!」
「「「え?!」」」
セイル、ドリー、リリーが叫ぶ。
この醤油についてはまだ広めたくないからね。
鎖国してる国の調味料だなんて、説明も出来ないし。
もしこれがみんなに気に入られて、陛下とか他のお偉いさん達がジャルネに押しかけたら困る。
まぁ陛下はしないだろうけど、ベティ様というストッパーいるし。
でも先走ってジャルネに調味料を寄越すようにって迫るバカがいたら、向こう的には鎖国された日本に来たペリーさん状態でしょ。
警戒されて、そっから戦争なんてなったらたまんない。
それに向こうのご機嫌損ねられたら、僕が行った時に入れてもらえないかもだし。
寧ろ行けなくなるかも?
過去の事例があるからこそ、そこは慎重にいかないとね。
「一口だけ味見はさせてあげるから、見る事禁止!《エリア》《ルーム》《ブラインド》《サイレント》!!」
「「「ユージェリス様?!」」」
強制的に僕の周りを見えなくしてみた。
ついでに文句言われても困るから、声も聞こえませーん!
見えないのをいい事に、指を勢い良く鳴らす。
厨房内から、必要な材料を目の前に移動させた。
鶏のもも肉と胸肉、塩胡椒、卵、にんにく、しょうが、油、酒、小麦粉、片栗粉…
…酒って料理酒とかの日本酒じゃないよね、これ。
蓋を開けて匂いを嗅いでみたら、白ワインっぽい匂いがした。
…まぁ、そんな大量には使わないし、なんとかなるでしょ。
あとはごま油欲しかったなぁ…
今回は唐揚げにする事にした。
また揚げ物?ってベティ様に言われちゃうかな?
いや、絶対喜んでくれる。
本当は煮物にしたいけど、醤油使い切りそうだからさぁ…
唐揚げなら少量でも味が染み渡って醤油を感じられるし!
というわけで、レッツクッキング☆
鶏肉はフォークでブスブス刺して、味を染み込みやすくする。
一口大に切ってボウルに入れ、にんにくと生姜を摩り下ろす。
あとは白ワインらしき酒と醤油と塩胡椒を入れて、揉み込む!
手が臭くなるから魔法でやりました!!
「さて、しばらく放置したいから…なんか他にも作るかな。どうせ揚げ物するし、唐揚げとポテトは居酒屋やカラオケの定番でしょ!」
というわけで、フライドポテトにします。
作り慣れたポテトは楽勝。
最初に作ってからハマったらしく、結構みんなが食べたがってたんだよね。
何か作ると付属としてよく作るようになってました。
でも最近は料理してなかったから、久しぶりだな。
最近僕は本を読む事と、ポーションを作る事にハマっていた。
本は魔法は使わないで、父様が王立図書館から借りてきてくれたこの世界の歴史に基づいた小説を、1冊ずつ読んでいる。
部屋で、庭で、屋根で。
色んなところで読んでて、料理はしなくなっていた。
最後にしたのは、4ヶ月前の魔法師団への差し入れかな?
あれから、本を読んでる背後でリリーの視線を感じるようになった。
あぁ、それから屋根で1人で読む事が多くなったんだったな。
「ははは、リリーの食への欲求は凄いや」
ちなみにポーションはさっき飲んだのも自作だ。
ポーションは色々作るのに条件が必要になる。
室温だったり、湿度だったり、水質だったり。
あとは薬草の調達が大変だったけど、父様にお願いしたら、遠征の時に探してきてくれたりした。
ちょっとした実験みたいで面白かったんだよね。
出来上がったものは全然美味しくなかったから、今は自分で調節して、美味しいポーションを作ってる。
果物とかをいい割合で混ぜると、甘くて美味しくなるんだよね。
世間では知られてないというか、ポーションを美味しくするって考えがないらしい。
もったいないよねぇ?
折角ならポーションだって美味しくしたい。
「お・い・し・く・なーあれっ♪」
そんな事を考えていたら、ポテトが出来上がった。
さっさと『キープ』で保温する。
え?出来るの早いって?
魔法で揚げる直前まで一瞬だからね。
さて、唐揚げの下味もそろそろいいかな?
水分が鶏肉に吸収されたみたいだから、卵を投入。
モミモミして、片栗粉と小麦粉を両方混ぜ入れて、もっかいモミモミ。
油はさっきのままで、少し火を落としてから揚げる。
低温でじっくり、そして1回取り出す。
ちょっと放置して、予熱でジューシーにする。
それから高温に上げて、2度揚げ!!
カリッとジュワッと、美味しくするんだぁ!
「お・い・し・く・なーあれっ♪」
あー、もー、この匂いやべぇ。
匂いでやられそう、さっさと『キープ』だ。
あんなに美味しかったお昼がちょっと霞みそう。
味見に1個、これはもも肉かな?
「…うんまぁー♡」
やべぇ、クッソうめぇ。
醤油って素敵過ぎる、本当に愛してる。
えっと、味見は3人分だから、もも肉と胸肉を3個ずつ、半分に切ってピックに刺して紙コップに入れよう。
ポテトも数本だけ同じ紙コップに入れて、3人分完成!
あとは母様と兄様とフローネの分で、唐揚げ2個ずつ置いて、ポテト添えて。
父様とベティ様の分はお肉を3個ずつとポテト山盛り。
いつもの差し入れ箱に入れればオッケー!
余った唐揚げは非常食にアイテムボックスにしまっておく。
よーし、今日は作り方の証拠を残さないように、自分で片付けよう。
『クリーン』を多用して、証拠隠滅完了!
みんなどんな反応するかなー!