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お礼の約束

ちょっと短め。

部屋の奥に入ると、キッチンに立つ女性がいた。

…あー、なんか、お母さんって感じの後ろ姿だなぁ…

ちょっと膨よかな感じで、纏ってるオーラが違うというか…


「母ちゃん母ちゃん!!」

「なんだい、大声出して。さっきも外でネーネと騒いでたみたいだけど…」


そこまで言って、ジーン少年の母親が振り返って僕を見た。

あ、目を見開いて固まってる。


「…ジーン、その方はどなただい?」

「こーしゃくさまんとこのメイド!」

「…なんでそんな方をお前達は引っ張って連れて来たんだい?」

「この姉ちゃんがこーしゃくさまに頼んで母ちゃん治してくれたんだ!だからちゃんと治ったよって母ちゃん見せたくて!」


ジーン少年の言葉を聞いて、今度はあんぐりと口を開けた。

えーっと、自己紹介した方がいいかな?

偽情報だけど。


「突然お邪魔してしまい、申し訳ありません。私、アイゼンファルド侯爵家のメイドで、ジェリスと申します。お元気になられたようで何よりですわ」

「あぁ、いや、その、丁寧な挨拶をありがとう…ジーンの母の、ベネッタ、です。アンタが、いや、ジェリスさんが侯爵様に…?」

「あまりに見過ごせない病気でしたので。それに侯爵領に住まう方達は皆、侯爵様の家族のようなものですもの。尽力するのは当然ですわ」

「…そうかい、そうかい…ありがとうねぇ、本当に苦しかったんだ…体中痛いし、動けないし、本当にこのままこの子を残して死んじまうんだと思ってたよ…」


ベネッタさんが、ポロポロと涙を流す。

そうだよね、辛かったよね…

私はポケットにしまっていたハンカチを取り出し、ベネッタさんの頰に流れた涙を拭った。


「あぁ、すまないねぇ…この子は、歳がいってから産まれた子でね。父親も普段家にいないから、この子を残して逝ってしまう事が何よりも怖かったんだ。布団の中で何度も何度も精霊様に祈ったよ。だからあの日、魔法師団の方々が家にいらした時、精霊様が叶えてくれたと思っていたけど…ジェリスさんが叶えてくれたとはねぇ…ありがとう。アンタはあたしの精霊様だよ」


にっこり笑って、ベネッタさんはあたしの頭を撫でた。

うーん、ジーン少年といい、ベネッタさんといい、意外と的を外れてない。

なんせ僕は『精霊の愛し子』ですからネ。


「ご主人はいらっしゃらないんですか?」

「王都で下っ端の兵士をやってんだ。帰ってくるのは月に1回くらいだよ」


下っ端兵士…

例のデブハゲ伯爵に情報もらした奴じゃないといいけど。

だってその下っ端兵士、今、父様が捜索中だもんな。

見つけ次第、情報漏洩の罰を受けるだろうし。

別の人である事を願っておこう。


「姉ちゃん、本当にありがとう!お礼にもし姉ちゃんが嫁にいき遅れたら、俺がもらってやるよ!」

「こら!ジーン!」

「ふふふ、それはそれは。なら焦らずに結婚相手を見つけられますね、ありがとう」

「でもジーン、お姉ちゃんは美人さんだから、きっとすぐにお嫁さんになっちゃうよ?そしたらお礼にならなくない?」

「うーん、そうかぁ…じゃあ俺、大きくなったらこーしゃくさまんとこの兵士になる!この前のお屋敷守って、姉ちゃんも守ってあげる!」

「あぁ、それはいいですね。将来有望そうです。楽しみに待ってますね、ジーン君」

「おう!」


ジーン少年が訪ねてくるのは、僕の卒業の1年前か。

その時が楽しみだよ、本当の姿で会えるからね。


驚くだろうなぁ、ジーン少年。

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