表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/363

お疲れ父様

「…我々も帰るか、疲れたな…」

「そうですわね、旦那様」

「…意外と女の子の口調が様になってるな」

「リリー達の真似をしてみましたの。もしかしたらまだ近くにいるやもしれませんから、ちょっとした警戒のためですわ」

「そうか…ファーマ、行くぞ」

「はいはい、旦那様、ジェリスさん」


クスクスと笑いながら、ファーマが改めて馬車の扉を開き、僕達を招き入れる。

帰る途中、父様は何回もため息をついていた。

お疲れモードだなぁ…


「父様、大丈夫?」

「…最近、やけにアイツが擦り寄ってくるんだ。きっとお前が愛し子様だと狙いを付けてるんだろうな」

「いや、あの人達、下っ端兵士を買収して、僕が初めて王城に伺った日の事を聞いたらしいよ。だから確信してるんでしょ」

「…騎士には箝口令を出したが、下っ端の兵士には伝わっていなかったか…いやそれより、何故そんな事を知っている?」

「僕の誕生日会やってくれた日、屋敷の前に隠れてたの。怪しかったから盗み聞きしたら、そんな事言ってた」

「…他には何を?」

「まぁ単純に自分の娘で僕を捕まえて、愛し子の恩恵をって感じだったね。娘は顔が良くなきゃ嫌だって言ってたみたいで、僕の姿絵とか欲しがってた。顔の良し悪しだけで狙われるのも嫌だし…何より絶対落とされない自信があるから、父様には伝えなかったの」

「そうだな、絶対に捕まらないようにしてくれ…いや、お前自身にあからさまな擦り寄りをすれば、それだけで処罰可能だから、それでもいいな…」


マジか、処罰出来んの?!

まぁ顔と愛し子って肩書きに対して好意持たれても嫌だから、それでいっか。

最初にそれを伝えて、それでも擦り寄ってくる子だったらそれまでだって事だね。

それを親から教えられてないって時点で、教育環境の貴族の家にも問題あるって判断になるのか。

僕の存在自体が爆弾みたいなもんだ。

…というか、デビュー前から愛し子になった事自体が異例なんだろうな。

ベティ様も、その前の愛し子も、どっちも成人の儀が終わってからだったらしいし。

困るねぇ…


そんな事を考えながら、僕達は屋敷に帰ってきた。

屋敷の中に入り、魔法を解いていつもの格好に戻る。


「お帰りなさいませ、ユージェリス様。本日は来年の社交界デビューで着られる洋服についてお話がありますので、お部屋へどうぞ」

「服について?」

「1年を切りましたから、早めに用意にかかるのですよ。採寸自体は年明けになりますが、デザインなどは今から決めるのです。来年の流行りなども先行して考慮しなくてはいけませんね」

「ふーん」


そういうもんなのか、大変だなぁ。

とりあえず僕とリリーは部屋に入り、椅子に腰掛けた。


「まずはこちらのデザインをご覧下さい。昨年、ロイヴィス様が着られたものの姿絵になります」


そう言ってリリーが手渡してきた額縁を受け取る。

うわぁ、兄様カッコいい!

なるほど、こういう感じなんだね。

そんなに大きくないハットに、ダブルブレストのジャケットとベストにハーフパンツ。

首には細いリボンを結んで、ケープも羽織ってる。

足元は膝下ソックスと革靴。

全体的に紺や青をベースにしてる。


普段着と違うところは、ハットとケープとリボンくらいか。

いつもはリボンじゃなくてタイだもんな。


…あれだ、この格好は華美過ぎない○執事の坊っちゃまって感じ。


「これは…派手な方?大人しい方?」

「大人しい方ではないでしょうか?もっと凄い方もいらっしゃいますよ。例えば男の子ですがレースなどが盛り盛りでやけに色合いも派手な感じの方とか」


…よくある成金スタイルってやつか。

低い身分のやつが調子乗ってやったりするのかな。

それとも公爵家あたりがやらかしてるのか。

でも兄様くらいの大人しめの方がカッコいいと思うけどねぇ。


「さて、来年の流行りになりそうなものですが…」

「ねぇ、リリー。これだけはなくちゃいけないものってあるの?ほら、ケープとか」

「え?あぁ、そうですね、ハットとケープは必須になります。首元のリボンはいつも通りタイでも構いませんし、クラバットやジャボでも大丈夫です」

「他は個人の自由?」

「左様でございます」


ふーん、なら、それっぽくしても問題ないかな?

寧ろベティ様は喜びそう。

僕は引き出しから紙とペンを取り出し、サラサラとデザインを描いていく。

リリーは不思議そうな顔をしていた。

確かこんな感じで…あー、あの作品初期しか見てないから、うろ覚えだなぁ。

でもまぁ、こんなんだったでしょ。

どうせなら当日、髪型も似せてみるか。

今とさほど変わらないし。


「ユージェリス様?どうされたのですか?」

「こんなんどうかなーって。適当に描いたから、誰かに清書してもらいたいけど」


ぺらり、とデザイン画を差し出す。

それを受け取ったリリーは目を丸くし、紙を凝視した。


「…ユージェリス様、凄い、凄いです!なんて素敵なデザインなんでしょう!今まで見た事ありませんよ!」


そりゃ、この世界のデザインではないもんな。

でも似通った世界観ではあるから、馴染むと思ったんだよねぇ。

でもやり過ぎると著作権に引っかかりそうだから、ここから多少アレンジしていこう。


そうして、意外と平和な日々が続いていった。

ここからまたちょっと時間が進みますー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ