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ストーカー伯爵

結論から言うと、次に出てきたのも天災級でした。

出てきたのは、なんかゴリラみたいなやつ。

さっきの熊ほどじゃないけど、8mくらい?

さすがに2回目ともなると父様も驚きはしなかったけど、頭を抱えていた。


「なんでだよっ…!!!」


口の悪い父様もカッコいいです。

…なんか最近、ファザコンになってきた気がする。

とりあえず、今回は体自体を火力でぶっ飛ばすのはやめた。

軽く指を鳴らし、ゴリラ野郎の足元を爆破する。

体勢を崩した隙を見計らって、僕はゴリラ野郎の前に『ワープ』した。

驚いて手を伸ばしてこようとしたけど、逆にその腕を剣で切り裂く。

…硬いけど、普通にスパッと骨まで切れたな。

スキル補正すげぇ。


「…くたばれっ!」


心臓は筋肉質な胸に阻まれそうだったから、頭を縦にカチ割りました。

…うわぁ、スプラッタ。

自分でやっといてアレだけど、ちょっと吐きそう。

あぁ、えっと、魔石取らなきゃか…


【猿の魔物(天災級)→死亡、左掌に魔石あり】


鑑定スキルさん、さすがです。

って、え?あれ唱えるの?

指パッチンで済ませたいけど、なんか締まらないよな…

えっと、どうしよう…


「…《愛し子から、祝福を》」


これで代用させて下さい。

なんかあんなに長い詠唱は、心の中に封印してた厨二病が再発しそうなんです。

でもなんか擽られました、危ない危ない。


少し心の中で悶えながら、ゴリラ野郎の左掌を切り裂いた。

ポーンと飛んできた魔石をキャッチし、確認する。

うん、さっきと同じくらいの大きさだ。

3〜4cmくらいかな?

段々と黒い光が消えていく。

消えたところで、指を鳴らして『サンクチュアリィ』で囲っておいた。


「父様、どうぞ」

「…うん、ありがとう」


なんですか父様、そのちょっと泣きそうな顔は。

ベティ様に虐められてショック受けてる陛下と同じような顔してますよ?


「…息子が簡単に天災級を倒せるなんて…誇ればいいのか、自分を情けなく思えばいいのか…」

「誇って!」

「…うん、わかった…」


片手で顔を覆い、天に向かってため息を吐く父様。

暫くして、いつもの凛々しいイケメンに戻りました!


「…帰ろうか、馬車に戻ろう。姿を変えてくれるか?」

「はーい」


例のメイド少女に姿を変えて、父様の後ろを付いて歩く。

森から出ると、来た時に乗っていた馬車と一緒に御者のファーマが待っていてくれた。

ファーマはうちの庭師でもあり、馬師でもある。

庭の手入れの他に、馬車用の馬や父様達が1人で乗る用の馬なんかも手入れしてくれている。

そして馬車の御者も出来る、結構多才なお爺ちゃんだ。

普段王城に行く時なんかはレリックが御者してくれるけどね。

手が空いてなければファーマが代わりにやってくれる。


「あぁ、お戻りですかな、旦那様、坊っちゃま」

「あぁ、待たせて悪かったな」

「いえいえ、全然待ってませんでしたよ。寧ろ随分お早いお帰りのように感じましたが、魔物はいなかったんですかな?」

「いや…天災級が出た、2匹」

「なんと!」

「ユージェリスが瞬殺してな…私の心が折れた」

「なんと…」


お労しや…と呟きながら、ファーマが父様を見た。

えぇ…そんなにショック受けてたの…?


「それにしても坊っちゃま、先程も見ましたが、随分可愛らしいですねぇ」


空気を変えようと思ったのか、ファーマが僕に話しかけてきた。


「顔の作りは変えてないから、可愛いって言われるとちょっとなぁ…」

「お顔立ちは奥様に似ていらっしゃいますし、そのような格好をされてれば可愛らしいのも納得ですよ」

「そういうものかぁ…」

「その格好の坊っちゃまを『坊っちゃま』と呼ぶ訳にもいきませんねぇ。なんとお呼びしましょうか?」

「ユージェじゃバレるだろうから…『ジェリス』って呼んでよ」

「はいはい、ジェリスさん」


そう言ってファーマはニコニコと柔和な笑顔で、僕と父様を馬車の中に入れようと促す。

父様が先に乗ろうとした時、事件は起こった。


「おや、そこにいるのはアイゼンファルド侯ではありませんか!」


…見覚えのあるデフハゲと、ひょろ執事だった。

向こうも馬車に乗っていて、態々デフハゲが窓から顔を出して声をかけてくる。

…もしかして、尾行してきたのか?

特に敵意があったわけじゃないから、全然気にしてなかった。

でも尾行してきました感満載だよね。

なんでこんな森の入口にいるんだよ、用事なんてねぇだろ。


「…やぁ、フロイセン伯。こんなところでいかがした」


父様、今一瞬顔を顰めて舌打ちしたよね?

そんなに嫌いですか?

まぁ僕も良い印象はもってないけど、先日の件で。

とりあえず僕はメイド姿なので、父様の一歩後ろでファーマと一緒に軽く頭を下げて、傍観に徹しよう。

顔の作りは変えてないし、あんまり見られても困るからね。


「い、いえ、ただの散歩ですよ、散歩!アイゼンファルド侯はこんなところでいかがされたのですか?」

「…この森は魔物が多いと聞いたのでね。休暇を利用して森林浴がてら調査に来たのだよ」

「なるほど、確かにこの森は有名ですからなぁ。しかしこんなところでお会いするとは、私とアイゼンファルド侯には何やら縁があるようですなぁ」

「…まだ王都にも近い。こうやってお会いする事もあろう」

「いやいや、この前も王城の中で1日に5回もお会いしたではありませんか!これはもしや、精霊様のお導きなのかもしれませんぞ!これを機に、もっと親睦を深めさせていただきたいものですなぁ!」

「…左様か」

「ええ、ええ!そうだ、2番目のご子息様とうちの娘は同い年だとか!今度互いを会わせて、仲を深めさせていただきたいですなぁ!アイゼンファルド侯とマリエール様のお子なら、さぞかし見目麗しい神童なのでしょう!」

「…生憎、息子は今、夢中になる事があってね。まだご令嬢への関心などが薄く、何か粗相をしてしまう可能性がある。デビューまでにはそういうマナーなども教えておくので、そういった話は来年以降にしていただければと思う」

「そうですか…残念ですなぁ。それでは差し支えなければ、ご子息のご容貌などをお教えいただけませんか?デビューの日に娘に伝え、お伺いに行かせますので」


中々引かねぇなぁ、このデブハゲ。

父様の機嫌が急降下してるのにも気付かないのか。

暗に会わす気ないっつってんのに。

ある意味メンタル強いな。


「…私とマリエールに似た顔立ちだ、わかりやすいと思うぞ。それより、フロイセン伯、早くこの場から離れた方がいい。ここには天災級の魔物がいるようだとスキルが告げているからな」

「え?!て、天災級ですと?!本当ですか?!」

「あぁ、実際にこの目で見た。すでに宰相閣下には連絡を入れている。早く離れないと、逃げ遅れるぞ?」


面白いくらいに顔が真っ青になるデブハゲ。

よし、ここは援護射撃でもしますかね!


「旦那様、お早く馬車にお戻り下さい!何やらこちらに魔物が向かって来ているようですわ!」


あぁ、怖いっ!と両手で顔を隠しながら、慌てたように告げてみる。

演技だとわかったのか、ファーマも少し態とらしく慌てた声を出した。


「旦那様!お早く!」

「あぁ、わかった。さすがにお前達を守りながら戦うのは至難の業だからな。一旦この場を離れよう。そちらもよろしいか?フロイセン伯」

「も、もちろんですとも!それではまた王城にて!!」


こちらの返事を聞かずに、デブハゲと同じく顔を真っ青にしたひょろ執事が勢いよく馬を叩き、全速力で立ち去っていった。


…本当に、あそこの娘にだけは引っかからないようにしよう。

僕は決意を新たにした。

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