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ルンルンニコラ

「ニコラぁ!!てめぇ何勝手に走り出してんだよ、危ねぇだろうが!!」


街に向かう途中、正面から走ってきたキャスケットを被った青年がニコラを見て叫ぶ。

同い年くらいかな?

うげぇ…忘れてたぁ…と苦い顔で呟くニコラは僕の腕を離し、何故か背中に回って僕を盾にした。

一方のキャスケット青年は僕が見えていないのかわかっていないのか、激怒を隠す事なく僕の背中に隠れたニコラに説教を続ける。


「急に『レター』見て走り出したかと思えば、なんで街の外まで行ってんだよ!!せめて行き先を伝えてから行け!!」

「だぁって、急いでたんだもーん!!」

「だからってお前も一応オジョーサマなんだから、お供付けてなくてどーすんだよ!!」

「大丈夫よ、ユージェが作った魔導具持ってるし!!」

「愛し子様からなんでか貰ったって話は聞いてるけど、それ起動したとこ見た事ねぇし!!パチモンなんじゃねぇの?!なのに信用してそれだけ持って1人で出かけんのはやめろよな!!俺がじいちゃんに怒られんだろうが!!」

「パチモンじゃないし!!ねぇ、ユージェ?!これちゃんと動くよねぇ?!」


ニコラが凄い形相で僕に尋ねる。

手で指し示していたのは、出会った記念に作ったぶどうのブローチだった。

懐かしいねぇ。


「んぇ?あぁ、まぁ、そりゃぁねぇ。腕輪型の魔導具はスタンピードで起動したみたいだし、それも動くと思うけど…」

「だよねぇ?!ほーら見なさい!!」

「でもニコラが1人で出歩くのはあんまり感心しないなぁ」

「なんで?!」

「ニコラだってナタリーが1人で歩き回ってたら心配するでしょ?例え僕が作った魔導具持ってても」

「当たり前じゃない!!ナタリーちゃんはあたしよりもか弱いんだから!!それに大事な友達なのよ?!」

「ナタリーにとって、ニコラもそうでしょう?だから気をつけてね」

「う…そっか、慢心しないで気をつける…」

「ってか僕だってこうやってジーンという従者連れて出歩いてるってのに!1人が楽なのはわかるけどね!」

「ユージェ様の場合は何かされる、というよりも何か仕出かす可能性を含めての俺ですけどね」

「うぐぅ…」


踏ん反り返ったニコラを少々諫める。

そして僕もジーンに諌められた。

解せぬ…


「…え?」

「「「え?」」」


キャスケット青年の声に、僕達はそちらを向く。

すると彼はめちゃくちゃ目を見開いて、小刻みに震えて、なんなら段々と顔色が悪くなっていって、しまいには真後ろに倒れていった。

驚いた僕がキャスケット青年の腕を咄嗟に掴んだから倒れ込むのは阻止出来たけど。

…気絶した男の人を片手で支えるのは中々厳しいもんだね。

とりあえずそっと地面に寝かせてみる。


「…どうしたんだろ」

「多分ユージェが愛し子様だって気付いちゃったからじゃないかしら?」

「まぁ最初はユージェ様を全然見てなかったですしね」

「あー…」


失言した、と思って意識飛ばしちゃったか。

別に怒ってないんだけどねぇ、正論だったし。


「ニコラ、この人は?」

「あたしの昔からの幼馴染みで、うちの庭師の孫で庭師見習いしてるビリー。さっきまでビリーと庭に新しく植える花を店に見に行くつもりで一緒だったの」

「で、ルーファスかレオ辺りに『レター』貰って、僕が来てるかどうか1人で来ちゃったわけね」

「まぁそういう事ね。ちなみにレオよ」


全く、レオめ。

うーん、どうしよっかなぁ。


「ジーン、このビリーって人、ニコラの屋敷まで連れてってくれる?んで、そのまま屋敷で待っててよ」

「構いませんが、ユージェ様は?」

「僕、約束したからニコラの荷物持ちとか色々しなきゃだし。買い物とか済んだらそっち行くから、ビリーが目覚めたら説明とかしといて?」

「わかりました、何かあったらすぐにお呼び下さいね。ニコラ様、お屋敷の場所をお伺いしても?」

「ほら、あそこの丘の途中よ」


ニコラが指差す先に、街から少し外れた場所にある小高い丘があった。

うん、確かに建物が見える。

ここからなら街に向かうよりもこの先の分かれ道から行った方が近そうだね。


「では、また後で。失礼します」


そう言ってジーンはビリー青年を背負い、先に屋敷へと向かってくれた。

残ったニコラと僕は改めて街の方へ向かっていく。


「さて、どこ行きたいの?」

「まずはあたしのオススメのお店でお茶しましょ!ユージェも疲れてるでしょ?」

「まぁ少しだけね」

「うふふ、でもお茶代は奢って貰おうかしら!」

「仰せのままにー」


そんなやり取りをして、街についてすぐにカフェで一服。

まぁ最初は視線が痛かったけど、ニコラが一緒だし普通に接しているのを見たからか、変に騒がれる事はなかった。

ニコラも普通に領民に挨拶とかしてるしね。

フラメンティール家は元々平民から士爵になった身だったし、領民との距離が近いようだ。


お茶を終えると、次に商店街の通りに来た。

ニコラは次々と食材を買って行く。


「こんなに買ってどうするの?」

「決まってるじゃない、ユージェに夕飯作って貰うのよ!最近食べてなかったからお腹いーっぱい食べたいの!」

「成る程。何がいいの?」

「とにかく美味しいやつ!お肉とかお肉とかお肉とか!」


さすがニコラ、残念美人とレオが言うだけはある。

黙って目を伏せていれば美人な深窓のご令嬢なのに、中身がね…

ナタリーと見た目が逆だったなら、天真爛漫な可愛いお嬢様って感じで合ってたのかもしれない。

見た目だけで言えば、ニコラが綺麗系でナタリーが可愛い系だからな。

ニコラは見た目で騙される人が多いんだとか。

これもレオ情報です。


「じゃあステーキとハンバーグのセットでも作りましょうかねぇ。付け合わせの野菜もちゃんと食べるんだよ?」

「当たり前じゃない!」


やったぁ、豪華な夕飯になる〜♪とルンルンのニコラ。

ちなみにね、ニコラさん?

君が買ってる商品は僕が荷物持ちをしてるんだけどね?

お店の人達が顔真っ青で僕に商品渡してきてるのわかってる?

話しかけちゃいけないって暗黙の了解だからか、普通の『ありがとうございました〜』みたいな挨拶すら貰えてないよ?


ご飯に浮かれるのはいいけど、後でフォローしてあげてよね?

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