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次を見据えて

左頬に、真っ赤な紅葉。

腹部には多分真っ青な痣。

どちらもズキズキと痛んでおりまふ。

こんなに怪我したの、初めて、うふふ。


「…なーるほどねぇ…ま、ナタリーちゃんに聞いてたから知ってたけど」

「デスヨネ…」


仁王立ちのまま、呆れたようにため息をつくニコラ。

僕は地面に正座してます。

ジーンはブランから降りて、ノワールの手綱も持ちながら少しアワアワしてる。


そう、ここはまだ詰所のど真ん前です。

めっちゃ見られてます。

衛兵さんも領民さん達も、全員顔色が悪いです。

それもそうか、愛し子に手を挙げて説教する次期領主…ショッキングな映像だわな。

あ、ちなみにこの紅葉は僕とナタリーの色々なやり取りを聞いたニコラが『ナタリーちゃんを困らせるんじゃなーい!!』と勢い良く振りかぶった事が原因です。

流石に頬の色が変わり始めて、ニコラも『ご、ごめん、ここまで強く叩くつもりじゃなかったんだけど、つい!!』とか言いながら慌ててたけど。

全面的に僕が悪いので気にしなくていいと言っときました。


ナタリー、いい友達を持って良かったね。

まぁ僕とも友達なんだけどさ。


「最近まーったくユージェから『レター』来ないなー?と思ってて、しまいにゃそろそろここに来るだろうってレオが教えてくれてさ?あたしとの友情なんてそんなもんなんだなーって思っちゃった」

「そんな事ないです…ニコラも僕の大事なお友達です…」

「ルーファスとレオの次に知り合った古参なのに、そーゆー事しちゃうんだなーって」

「うぐぅ…」

「…ユージェが恋愛感情に対して苦手意識持ってる事、心配してたのに」


声のトーンを下げて、小さく呟くニコラ。

そうか、そういえば、前に会った時も、気にかけてくれてたんだ。

それなのに僕は…


「…ニコラ、どうすれば、許してもらえる?僕、ニコラとこれからも友達でいたいよ…」

「やだわ、別に友達やめるつもりなんてないわよ」

「そ、そうなの?でもかなり怒ってるから…」

「当たり前じゃない、蔑ろにされたら怒るわよ!でも…そうねぇ、あたしのお願い、何個か聞いてもらおうかしら?それで今回の事はチャラにしてあげる」

「お願い?何?」

「勿論聞いてくれるわよね?」

「ん…まぁ、僕に出来る事だったら…」

「だーいじょーぶだーいじょーぶ!出来る出来る!」

「不安に駆られる…全容を教えてくれないとか…」


急にご機嫌になったニコラに手を引かれて立ち上がる。

やべ、ちょっと足痺れた。

でもニコラには悟られませんぞ、絶対足触ろうとするだろうからね!


「うふふふ」

「どしたの?」

「なーんでもなーい!さ、まずは買い物行くわよ!」

「はいはい、お嬢様の仰せの通りぃ〜」


腕を組まれて、引っ張られる。

昔も遊ぶ時にこうやって歩いたな、なんだか懐かしい。

僕にこうやって我儘言ったりするのってニコラだけなんだよね。

でもその我儘も結構可愛いもんでさ。

『あれ美味しそう!行こう!』とか『何あれ可愛い!見てみよー!』みたいな感じ。

勿論僕に奢らせるわけでもなく、ただ自分の行動に付き合わせるってだけ。

たまに持ち合わせがなくなってる事もあって、貸してあげたりもするけど。

まぁ僕だけじゃなくて、ルーファスやレオなんかも引っ張ってってたしね。

僕を本当に特別扱いせずに、ずっと接してくれていた。

全く、なんで僕は蔑ろにしちゃってたんだか。

反省しないとねぇ。


「ふんふんふーん♪」

「ご機嫌ですねぇ」

「まぁね!だって、久しぶりで楽しいんだもの!昔に戻ったみたい!」

「確かに最近はお忍びとかもしなかったしねぇ。今はお勉強頑張ってるんでしょ?」

「そうなのよ、本っ当に大変で!マジで領地経営とかそういうの熟知した人が誰かお婿さんに来てくれないかしらって切に願ってるわ!」

「あれ?アレックス様はいいの?」

「…ちゃんとフラれたわよぅ…」

「え?!」


告ったの?!いつの間に?!


「聞いてない!」

「言ってないわ、やり返してやろうかと思って」

「ぐぅの音も出ない…ぐぅ…」


これは切ない。

ルーファスやレオは知らなくても、ナタリーは知ってるんだろうなぁ…


「ルーファスがこの前、結婚したい相手がいるって言っててさ。だってルーファスだし、絶対断られないでしょ?だからそうすると5人の中で婚約者いないのあたしだけになるし…なんか、急に焦っちゃって、つい言っちゃった」

「マジか…会ったの?」

「定期的にすぐそこの国境の森への視察とかがあるのよ、魔法師団と騎士団って。前は年1くらいだったけど、スタンピードが起きてからは3ヶ月に1回ペースでね。それでこの前、魔法師団は第1師団が担当だったの。しかも父さんからあたしに届け物があったから、アレックス様だけここに寄ってくれたのよ」


うわぉ、なんというタイミング。


「なんて言ったの?」

「んーと、なんだっけかな…『あたしとこの領地を一緒に守っていただけませんか?』とか『好きなんです』とか言った気がする。もうとにかくテンパっちゃっててあんまり覚えてないのよねぇ…」

「あらま…」

「でも、アレックス様は茶化さないであたしの気持ち全部聞いてくれたわ。聞いた上でお断りして下さったの。『気持ちは嬉しいけど、娘ちゃんをそういう対象に見れないし、俺が守りたいのはこの領地だけじゃなく、リリエンハイド王国全てだから』って」

「やだ、アレックス様カッコいい」

「アレックス様がカッコいいなんて当たり前でしょ?!」


そんな目を見開いて言わなくても。

どうも歳より若く見えるし、比較的適当そうにも見えるからそういうカッコいいって感じじゃなかったんだもん…


「まぁ、まだ吹っ切れたわけじゃないけど…それでも、次を考えなきゃなってくらいには思ってるわけよ。ユージェ、誰かいい人いないー?」


えー、いい人ぉ?

ニコラの好みって、確か…


「歳上で、優しくて、精神的に落ち着いてて、僕達との関係を認めてくれて、僕を利用しない人…だっけ?」

「うん、そんな感じ」

「激ムズだわ、今のですぐ思い浮かぶのダティスさんくらいだわ」

「あー、確かにダティス様は当て嵌るね。でも友達の旦那さん奪うようなクズにはならないわよ、あたし」

「そりゃそうだ、さすがにやめてくれって全力で止めるわ」


ダティスさんの平穏を壊すやつは誰であろうと許さん。


「うーん、どこか妥協しないとダメかしらねぇ…」

「うーん…」


誰かいたかなぁ…中々難しいわ…

ユージェを物理的に振り回せるのはニコラだけなので、ユージェは意外とその扱いを気に入ってます。

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