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ユージェリス、攻撃を喰らう

「あぁ…何やら懐かしいやり取りを見せていただきました…」


…なんかソルリック様が泣いてるんですけど。

横にいたジーンはそっとハンカチを差し出していた。


「はぁ…まぁ、腹括って会いに行くしかないね」

「お好きにどーぞ」

「…その冷たい感じが懐かしくてドキドキするよ」


少し頬を赤らめて僕を見つめるガルフィ様。

やめて!イケナイ扉を開かないで!!

つい虫ケラを見るような目で見ちゃうじゃまいか!!


「あぁ、その少し蔑んだ目も似てる…」

「ソルリック様ぁ?!僕達そろそろお暇しようかなぁ?!」


あかーん!!!!

咄嗟にソルリック様に駆け寄り、逃げるための提案をする。


「え、もう、か?先程来られたばかりだろう?」

「いやぁ、先を急ぐ旅なもんでぇ!!!」

「そうか?是非色々と話を聞きたかったものだが…」


少し残念そうなソルリック様には悪いけど、とっとと撤退します!!


「ユージェリス、良ければお茶でも…」

「また今度いただきます!!」

「…そうか、また今度か」


今度は予想に反して、嬉しそうに微笑まれた。

断ったのになんで?

するとソルリック様がぽそりと小声で理由を教えてくれた。


「…多分、貴方から次の約束をしていただけた事が嬉しいんだと思うぞ」

「え?」

「貴方とは疎遠になってもしょうがないと覚悟をされていたのだ、ガルフィ様は。それが次はお茶をしてくれると言う。人並みの幸せを噛み締めていらっしゃるんだろう」


…そういや、前回も最後に『また今度』と言ったな。

そしてこうやって本当に会いに来たわけで。

実績があると、さっきの約束も高確率で叶うと思うわな。

まぁ、別に会いたくないわけじゃないから、きっとまた会うだろうけども。


「…ガルフィお祖父様、これをどうぞ」

「ん?これは?」

「…クッキーですよ、僕が作った」

「まさか領域の料理か?!」

「そんな大層なものじゃないです、普通にクッキーですし。ただ…」

「ただ?」

「…中に入っている木の実は、ソフィア様が摘んできて下さったものですよ」

「…そうか、大事に食べるよ」


僕が取り出した小袋に入ったクッキーを、大事そうに受け取るガルフィ様。

まぁ好きに悩んで答えを出せばいいんじゃないかな。

もう貴方は自由なんですからね、ガルフィお祖父様?






そういうわけで、さっさと領地を退散した僕達。

そこからはもうスピード重視で巡っていきましたとも。

擦り寄ろうとした子爵家なんかは兄様達に報告した上でスルーしたし。

途中でダティスさんやデイジーのいるファラフス子爵家にも立ち寄った。

相変わらず仲良しで楽しそうにしてて、結構安心した。

ついお言葉に甘えて1週間くらい滞在しちゃったし。

ダティスさんとデイジーと3人で釣りしたりして遊んだのは新鮮で面白かったな。

メルヒーは王都の屋敷にいるそうで今回は会えなかった、残念。

折角ジーンを紹介しようかと思ったのになぁ。


そしてなんだかんだ、ついに最後の領地に到着した。

そう、フラメンティール子爵領であーる!


「うーん、ここに来るのも久しぶりかなぁ」

「あぁ、ユージェ様のご友人の領地ですもんね」

「最近は全然会ってなかったからなぁ…ん?僕、なんか忘れてるような…?」


はて、なんだったか。

とりあえず詰所をいつも通り通り過ぎようとノワール達を歩かせていると…


「ユージェ!」


聞き慣れた声に、正面を向く。

そこには若草色の綺麗なワンピースを着て、晴れやかな笑顔で手を振っているニコラがいた。


「ニコラ!」


ジーンにノワールの手綱を渡し、ひらりと飛び降りる。

ニコラが駆け寄ってきてくれていたので、僕も手を振りながら駆け寄った。

…なんだろう、危機察知スキルは発動してないのに、なんか悪寒がした。

何か、とても大事な事を忘れている…ような…?

ニコラまであと数メートルというところで、ニコラの目が笑ってない事に気付いた。

あれ…?口だけしか笑ってない…?

しかも心なしがニコラ、駆け寄るスピード上がってない…?

しかし今更止まるわけにもいかないので、そのまま近付いてみると…


「…こんの…薄情ユージェがぁぁぁぁぁ!!!!」

「へぶぅっ?!?!?!」


まさかのニコラが飛んだ。

そして気付けば僕は見事に鳩尾を蹴られて後ろに吹っ飛んだ。

綺麗にニコラの右足がクリーンヒットで、ここ数年で1番のダメージを受けて地面を転がっていった。


「ユージェ様ぁ?!?!?!」


ジーンの悲痛な呼び声が響き渡る。

どうやら詰所にいた衛兵や近くにいた領民達もバッチリ目撃していたようで、顔面真っ青で声にならない悲鳴を上げていたのが視界の端に見えた。


「…う…ぐふぅ…い、痛い…ニコラ、何を…」

「ねぇ、ユージェ?貴方、あたしに何か言う事ないかしら?」

「ふへ…?」


やーだー、ニコラの背後に般若が見えるぅー。

もしかして激おこですかぁー?

え、何、言ってない事ってなんだ…?!

内心プチパニック起こしていると、ニコラに胸ぐら掴まれた。

やーだー、笑顔なのにこーわーいぃー。


「ユージェ、婚約したんだって?」

「…あ」

「ねぇ、誰と婚約したのかしら?」

「…えっと、その…」

「あたし、なーんも聞いてないのー」

「そ、そうだっけ…?」

「不思議よねぇ、ルーファスからあたしが知ってる前提の手紙が来たのよー」

「うへぇ…」

「おっかしいなぁ?あたしってユージェとお友達じゃなかったのかしらー?」

「お、お友達デス…仲良しデス…」

「そう!なら、さっき蹴り飛ばしたのも仲良しなんだから勿論怒らないわよね?」

「も、勿論デス…」

「なんならもう数発殴っても怒らないわよね?」

「お、怒れないデス…」


ガクガクと体が震えてきた。

神話級魔物とか比じゃないくらい、怖い。

そうか、僕、なんか忘れてると思ったら…


貴族の親友の立場で、ニコラにだけ、なんも報告してないわ。


ルーファスとレオは向こうで会ったし、ナタリーは張本人だし。

シンディとドロシーも王城で話を聞いたらしい。

ダティスさんとデイジーにはこの前の訪問で改めて報告したら、噂は聞いていたと祝福してくれた。

…そういや、ニコラだけ、本当になんにも言ってなかったぁ!!!!


「さぁ、洗いざらい吐いてもらおうかな?一体、だーれーと?婚約したのかを、ね…?」

「は、はひ…」


ナタリー、もしかして、君はニコラに1番に報告したのかい?

そしてニコラ、君は僕からの報告を、ずーっと待ってたのかな?


…僕、初めてこの世界でズタボロになるかもしれない…

ニコラが危機察知スキルに反応せずに蹴りを入れられたのは、殺気はない&ユージェの作った防御の魔導具が無駄に高性能で相殺したからです(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] ニコラ、おもろい。一番最初はニコラがヒロインかなと思っていたけど、突っ込み役でしたか。
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