僕は僕
月曜日、更新してませんでしたね…
すみません…
なので今日は夜中までにもう1話上げます!
「突然の訪問にも関わらず、お招き頂きありがとうございました」
「いえいえ、私も父以外の愛し子様にお会いする事が出来て、光栄ですよ」
屋敷の門の外までお見送りしてくれるアレン殿。
そうだ、1つ言うの忘れてた。
「アレン殿、昔、こちらにロッツォという料理人がいませんでしたか?」
「ロッツォ?…あぁ、父が存命中に料理長だったロッツォですね!えぇ、おりましたよ。でも、何故ユージェリス様が…?」
「実は今、うちの領地でカフェを営んでいるのです。幼い頃に会って、それで少しローレンス様についてお聞きしました」
「そうでしたか!ロッツォとは懐かしい…彼は父が亡くなってから会っていませんでしたから。いい事を教えていただきました、今度伺わせていただこうと思います」
「そうしてあげて下さい」
ロッツォさんはローレンス様のために世界を回っていたからね。
多分、この地が大切過ぎて戻れなかったんだ。
そこかしこに、ローレンス様との思い出が詰まってるから。
「…とても失礼な事をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ?」
「…ユージェリス様は、父と、愛し子様であるということ以外…共通点はないですよね?」
…これは、ロッツォさんにも聞かれた事だけど、僕がローレンス様であると疑われてるんだろうな。
残念ながら、愛し子はみんな別の魂であり、別の人格なのでございまふ。
「ロッツォさんにはもっと直球で聞かれました。だから今回も普通に返事をするけど、僕はローレンス様じゃない」
「…!!そう、ですか…やはり、ロッツォも同じ事を考えましたか…案外、今の今まで父の死を引きずっていたのやもしれませんね」
「仕方ありませんよ、実のお父さんなんですから」
「…ありがとうございました。出会いを精霊様に感謝致します」
そっと目を瞑り、祈るように呟くアレン殿。
…リリエンハイドに感謝されても、複雑だな。
こうして僕達はアレン殿に別れを告げ、ローレンス様のお墓までやってきた。
来る途中で買った花束を置き、黙祷する。
「…アレン殿に言わなかった事を、俺が聞いても問題はないですか?」
「あぁ、やっぱり黙ったのバレてたか。まぁ、ジーンは知ってて全然オッケーだよ。ここにはね、贖罪の言葉が刻まれてるんだ」
日本語で刻まれた一文をなぞる。
ジーンは僕の事情も知ってるしね。
全てを聞いたジーンは、少しため息をついてから複雑そうな表情をした。
「…まぁ、黙っとく事しか出来ませんよね。ユージェ様が異例なんですから。そりゃお子であるアレン殿には言えませんよ」
「異例って…」
「異例でしょう?ユージェ様が奥様のお子でなければ、ナタリー様へ告げる事はなかったでしょう?」
「…それもそうか」
僕が母様の子…元王女の子で、王家と親密だったからこそあったアレコレ。
確かに、普通の伯爵家にいただけなら、ベティ様と頻繁に会う事もなかっただろうし、色々な問題に直面する事もなく、ただ傅かれて崇拝されて余生を過ごしていたかもしれない。
そうなった際、真実を告げるのは…いくら奥さんでも、難しいよね。
「まぁユージェ様の性格なら色々とやりかねませんけど」
「失礼な、前世は平民でも身分制度ってもんは理解してるし、伯爵以下だったら大人しくしてたわい!」
「…つまり侯爵家で良かった、と?」
「それは少し違う」
「はい?」
「『侯爵家で良かった』んじゃなくて、『父様と母様の子であり、兄様の弟でフローネの兄で良かった』んだよ」
「…成る程、納得です」
父様と母様がいて、兄様とフローネがいて。
だから今の僕がいるわけで。
違う人達が家族…例えば、カルデラ公爵家のチェルシー嬢に僕がなっていたとする。
…想像はし辛いけど、絶対にこの約10年ちょっとの年月とは同じ道筋を辿らないだろう。
なんなら、出だしからおかしかったかもしれない。
あの父親だもの、与えられる情報が正しいかどうかも怪しいよね。
そのまま歪んだ情報で成長していったなら…
「…まぁ、リリエンハイドも考慮してくれたって事でしょ」
「何かおっしゃいましたか?」
「なーんでも?さぁ、そろそろ行こうか。この領地なら普通に観光出来そうだし、色々見て回ってから次に行こうよ」
「そうですね、たまには店頭で普通に買い食いでもします?」
「いいね、何が美味しいかなー?」
タラレバの世界なんて、考えるだけ無駄。
僕はユージェリス=アイゼンファルド、それはもう変わる事のない事実なのだから。