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豪華なプレゼント

セイル達が用意したパーティー料理は、まぁいつも通りだったけど、なんだかすごく美味しく感じた。

ロイ兄様とフローネが代わる代わる、僕にあーんをしていく。

たまに母様が混ざって、父様は苦笑していた。


「さてと、一通り食べただろう?そろそろプレゼントを渡そうかな」

「え、プレゼント?」

「あぁ。まずは使用人達からだ」


父様の言葉に、後ろを振り返る。

そこにはシャーリーやレリック達が並んでいて、一歩前に出るように立っていたのは、なんとリリーだった。


「リリー!」

「ユージェリス様、只今戻りました。この度は私の両親や友人達を助けていただき、誠にありがとうございました。お礼と言っても細やかではございますが、我々使用人一同から贈り物をさせていただきたいと思います」


そう言って、リリーは手に持っていた箱を僕に差し出した。

僕はそれを受け取り、リリーに促されて箱を開ける。

中から出てきたのは…


「…エプロンだ!」


僕の瞳に似た色のエプロンだった。

黒い糸で裾に施された刺繍も結構凝っている。


「ユージェリス様、最近よく料理されますから」

「とても素晴らしかったです」

「また美味いもの作って見させて下さいよ!」

「今度からは是非、僕にも見せて下さいね」


シャーリー、レリック、セイル、ドリーが次々と声を上げる。


「刺繍は私とミーナとセリスで頑張りました!」

「刺繍は得意なのです」

「私は苦手なので、時間かかっちゃいました…」


リリーとミーナが胸を張り、セリスは少し落ち込みながら教えてくれる。


「大きめに作ってありますから、しばらく使えると思います。小さくなってしまったら、新しいものをプレゼントしますね!」

「…ありがとう、みんな。大切に使わせてもらうね」


凄い嬉しい。

今度これ付けて、みんなに何か作ろう。

お菓子がいいかな、クッキーとか、マドレーヌとか。

何を作るかが、とっても楽しみになった。


「さて、ロイヴィスとフローネからはさっきもらったようだから、次は私達だな」

「喜んでくれると嬉しいわ」


父様と母様が、少し長くて大きめの箱を取り出した。

ちょっと重かったけど受け取って、箱を開く。


「うわぁ!カッコいい!」

「お前も来年にはデビューだし、少し早いがちょうどいいと思ってな」

「今までお稽古はした事があるから、スキルもあると思って。きっとユージェちゃんなら使いこなせるわ」


箱から出てきたのは、1本の剣だった。

ゴテゴテした装飾とかはなく、細身で綺麗な剣。

柄頭にはアイゼンファルド侯爵家の家紋が彫られていて、僕の瞳の色の宝石が1つ嵌め込まれていた。

これ、パライバトルマリンだ!


「凄い、カッコいい!」

「よかったね、ユージェ。僕は去年、デビューの年にもらったんだよ」

「お兄様、お似合いですわ!」

「…本当は別の物にしようかと思ったんだがな」

「貴方には、早めに渡した方がいいかもしれないと思ったのよ」


笑顔で喜んでる兄様とフローネとは対照的に、父様と母様は少し悲しそうな表情をした。


「どうして?」

「…貴方が愛し子様だから。もしかしたら、貴方の身に何かあるかもしれない。そんな時の自衛手段を少しでも持っていて欲しくてね」

「出来る限りは我々大人が守るが…用心に越した事はないからな」


そういって、父様は僕の頭を撫でた。

そっか、これは自衛手段なのか。

確かに僕には剣術スキル∞がある。

きっとユージェリス君が稽古していてくれたからだろう。

これがあれば、そう簡単にやられる事はない。

…さすがに人は切りたくないけど、もしかしたら必要になる時が来るかもしれないよね。

その時までに、覚悟しなきゃいけない。


「僕のために、ありがとう、父様、母様。僕、大事にするね」

「あぁ、今後公の場に出かける時などは帯剣する事になる。それまでに1度、魔物の討伐にでも行って試してみような」

「はい!」


あ、そうだ、手紙。

僕は思い出して、内ポケットから手紙を取り出した。


「父様、母様、あのね、これ…僕から、2人に」

「私達にか?」「まぁ!」

「旦那様、奥様、こちらもユージェリス様からお2人への贈り物になります」


リリーが僕の横に立ち、小さな箱を父様達に差し出す。

青いリボンと赤いリボンが付いた、小さな小さな箱だった。


「リリー、もしかして…」

「僭越ながら、お預かりさせていただいておりました。先程レリックさんとシャーリーさんにはお渡し済みです」

「ありがとう、リリー!」


さすがリリー、お仕事の出来るいい子だ!

屈んで僕に話しかけてくれていたリリーの頭を、背伸びして撫でておく。

なんだか少し頰を赤らめて嬉しそうに笑ってくれた。

…あ、ドリーが複雑そうな顔してる。

ははっ、さっさと告白しないからだよ、ヘタレめ。

本当にもらっちゃうぞ?

10歳差くらいなら、全然大丈夫なんだから。


「開けてみていいかい?」

「うん、どうぞ」


父様と母様が箱を開ける。

中に入ってるイヤーカフとブローチを見て、感嘆の声を上げた。


「あぁ、お前達とお揃いの魔導具だな!嬉しいぞ、ユージェリス!」

「まぁ、とても素敵なブローチだこと!シンプルだから色々な物に合わせられそうだわ」

「レリックとシャーリーも持ってるから、みんなでお揃いだよ!」

「ユージェリス様、ありがとうございます」

「大切に致しますね」


後ろからレリックとシャーリーの感謝の言葉が聞こえた。

振り返って笑顔で頷く。

ちなみに4人とも、早速付けてた。


「これは手紙かな?」

「…恥ずかしいから、後で部屋で見て」

「ふふふ、じゃあ後でのお楽しみにしておくわね」


母様がいたずらっぽく微笑み、手紙をしまった。

父様も上着のポケットにしまっていた。


「あぁ、そうだ。陛下と王妃様からも贈り物を預かっているぞ」

「陛下とベティ様から?」

「普通は臣下に頂く事なんてないのよ?今回は愛し子様になった記念の誕生日だから、秘密裏に頂いたの」


母様はニコニコしながらレリックが持ってきた箱を僕に渡した。

…結構大きいけど、そんなに重くないな。

何が入ってるんだろうと疑問に思いつつ、箱を開ける。


「おぉ…これは…」


中に入ってたのは、漆黒のマントだった。

銀色の糸で裾に繊細な刺繍をあしらってある、品のある襟付きマント。

首元の結合部は銀色の紐で飾られており、背中にはリリエンハイド王国の紋章が大きく刺繍されている。

あ、内側は青い生地になってる、カッケェ。

…確か某海賊コックがこんな形の赤いマントで王子様してたような…

ベティ様、もしかしてあの作品お好きなんですね?

わかります、僕も彼好きです。

でもいい声のお医者様海賊も大好きなので、それについて今度語りましょう。


話が逸れたな。

とりあえずカッコいいです、ベティ様!


「うわぁ、これカッコいいね!ユージェ、着てみてよ!」

「え、あ、うん」


今日の服は青っぽい感じだし、マントと合いそうだな。

ロイ兄様の催促を受け、僕はマントをバサリと羽織った。

…やべぇ、僕カッコいい!!


「お兄様、カッコいいー!!」

「やぁだ、ユージェちゃん、昔の旦那様そっくりで凛々しくて素敵だわー!」

「おいおい、マリエール…でもとても似合っているよ、ユージェリス」

「いいなぁ、すっごいカッコいいー!」


みんなから賞賛の嵐だった。

ちょ、ちょっと照れる…

おや、箱の中に手紙が2枚入ってるみたいだ。


「手紙が…」

「どちらかからだろう。読んでみてくれ」

「はい!」


えっとぉ…


『ユージェへ

お誕生日おめでとう。

私とお揃いのマントを贈るわね。

マントには魔法を3つ付与してあるわ。

いつでも綺麗だし、サイズ調整されるし、何物も貫かない硬さになってるの。

ちょっと張り切って作っちゃった☆

陛下に伝えたら、なんだか凄く暗い表情でため息つかれちゃった。

何故かしら?

もしこれから愛し子が出動する事があれば、これを着て一緒に頑張りましょう!

ちょっと戦闘服っぽくて良くない?!

これは愛し子である事の、王国からの証明になるわ。

今度マントについて語りましょうね!

ベティより』


『ユージェリスへ

誕生日おめでとう。

ベティの意見を参考にして、仕立ててみた。

気に入ってくれると嬉しい。

…ただ付与してる魔法が3つとか、ちょっとした神話級の代物だが。

俺にも作ってくれなかったのに…

まぁ、背中の紋章は王国からの証だ。

お前なら悪い事に使わないと信じているので贈る。

それでは、ユージェリスに精霊様のご加護がありますように。

セテラートより』


…読んだ瞬間、全員が絶句した。

一瞬、『セテラートって誰だっけ』って思ったのは秘密。

それにしてもベティ様…3つも付与したのか…

2つで伝説級なのに、そりゃ3つじゃ神話級だわ。


「えっと…大事にしまっておきます」

「…そうしてくれ。なんなら金庫でも作るか…」

「いや、自分で持っておくから…」


そう思って、指を鳴らしてアイテムボックスを開く。

そのまま黒靄の中に脱いだマントと剣とエプロンをしまっていった。

アイテムボックスを消して向き直ると、全員が僕をガン見して固まっていた。

…え、何?


「…ユージェリス…今のはなんだ…?」

「今のって?」

「今の黒い物は…それに、プレゼントが…いや、それよりも無詠唱だと…?!」

「あ」


しまった、普通に使っちゃったよ!

…まぁいっか。


「今のは時空属性の空間魔法の一種だよ。別の空間を作り出して、そこにしまってあるんだ。さっきの無詠唱は愛し子にしか出来ないと思うから、気にしないで」

「…色々聞きたい事はあるが、愛し子様の秘密に抵触しそうだな。一旦この件については終わりにしよう。皆も、とりあえず他言無用だ、いいな?」


僕以外の全員が一斉に頷く。

うーん、いい結束力だ。

なんかちょっと異様な雰囲気になったけど、誕生日って事で許して下さい!


その後は残りの料理を食べて、誕生日会はお開きとなった。

解散して各自部屋に戻ったんだけど、父様と母様の部屋から歓喜の悲鳴が屋敷に木霊して、ちょっとした騒動になった。

理由は似顔絵に驚いたからだという事をお知らせします。

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