ルーファスの災難
なんかちょっと長くなりました。
そして予定してた時間よりも早く更新となりました。
※間違えて王城内で『ワープ』しちゃったので、退室方法変更しました。
「そういえば、エドワーズとルーファスがどこか行ってるって聞いたけど、さっき陛下が仰ってた2人が頑張ってるって内容と同じなのかしら?」
お土産の黒鉄さん作かりんとうまんじゅうと、貰ってきた緑茶でティータイム中にベティ様が尋ねる。
そういや僕もそれ気になってたんだった。
あ、ちなみに今回はちゃんと陛下の分もあったけど、前回の反省からかベティ様に『俺はお腹いっぱいだから、良ければベティが食べてくれないか?』なーんて言って譲ってた。
なんとなく、聞こえるはずもない乙女ゲーの効果音が聞こえた気がする。
ほら、あの親密度とか好感度とかが上がった時の音っていうの?
チャラララララ〜♪ピロンッ♪やったね♪みたいな。
そしてベティ様は満面の笑みで受け取ってお礼を言っていた。
その後のひもじそうにベティ様のおまんじゅうを横目で見ている陛下は見なかった事にして、こっそり机の下から僕の分の包装された状態のおまんじゅうを渡しておいた。
泣きそうな顔で軽く会釈されたので、どうやら後で食べるんだろう。
あ、ちなみに宰相様は別室の仮眠室で横になってていません。
お土産は後で渡そう。
「あぁ、そうでした。そちらについてはご報告をせねばなりませんな」
「ユージェも一緒に聞いてってくれる?全く関係ないってわけでもなくてさ」
「勿論だよ。何があったの?」
「端的に言うと…バラライアが一緒に戦争しないかってお誘いしてきてるっていうか?」
「「…は?」」
…ナンダッテ????
「えっと、ごめんね、イマイチ理解が追い付かない」
「大丈夫、僕達も最初はそんな感じだったから」
「順を追って説明するとだな、バラライアがうちと反対隣のギューガリンド王国と何かの理由で喧嘩したらしい。ここの詳しい説明もなしに、バラライアがうちに『喧嘩するから力を貸せ』と遠回しに行ってきたんだよ。力ってのは、王妃様とユージェリスの事だろうな、あの言い方は」
「当然、ベティ様不在で不機嫌の塊だった陛下に却下されて一旦引き下がったんだけどさ。それでも再三手紙が煩いから、エドワーズ様とルーファスに正式なお断りをしてきてもらう事になったんだぁ」
「俺が行くわけにもいかんからな…名代として2人に任せたんだ」
「理由は未だに?」
「わからんままだな」
「もうすぐ帰ってくるはずだし、受ける事は絶対ないからユージェ達に迷惑がかかる事はないよ」
いい笑顔で僕の頭を撫でてくれる兄様。
…多分エドワーズ様とルーファスも同じ笑顔で向こうに特攻してるんだろうな。
「…呪い?の2度がけでもする?」
「どんなのがいいかしら?もういっそあの顔が解ける事がないようにする?」
「いや、改心したら元の顔に戻るようにすればいいかも?うちを含む周辺諸国に悪意を持ったら顔が変わるとか」
「あら、それいいわね!会議中に変わったら見ものだわ!」
「落ち着いて下さい、まだ理由がわかってないんですから」
父様が緑茶を啜りながら止めてくる。
…でも焦ったように言わないから、内心は『それもありかも…』と思ってません?
兄様と陛下も笑ってるし。
そんな話をしていると執務室の扉がノックされて、エドワーズ様とルーファスが入室してきた。
ルーファスだけだと入室の許可を得なきゃいけないけど、王太子と王妃は別にノックだけでいいんだよねぇ。
「ただいま戻りました、父上」
「ただいま戻りました…ユージェ、お帰り。王妃様もお帰りなさいませ」
「「ただいまー」」
「母上、気は済みましたか?」
「えぇ、英気は養えたし、陛下とはいい約束が出来たからね」
「ふぐぅっ…」
あ、また涙目。
エドワーズ様は約束の内容がわからなかったようで首を傾げていたが、とりあえず後回しにするようで手元の紙を陛下に渡していた。
「とりあえず話は潰してきました。単にギューガリンドがバラライア王族の顔を馬鹿にした事がきっかけだったようです。戦争するならうちに迷惑をかけずにやれと言っておきました」
「いや、戦争はしないに越した事はないんだが…まぁ、ご苦労だったな」
「いえ、そこまででは。それよりも別の問題が1つ浮上したので、そちらを片付けなくては」
「「「「別の問題?」」」」
まだなんかあんの?
「ルーファスがカトリーナ王女に求婚されました」
「「「「は?」」」」
「そしてルーファスが間髪入れずに『お断り致します』と言ってその場を去りました」
エドワーズ様は笑いが堪え切れず、口元に手を当てていた。
対してルーファスは真顔で額に青筋を立てていた。
「…カトリーナ王女って、前にユージェを愛し子だと知らずに口説こうとしてた子よね?」
「そういやあの時はルーファスと会ってなかったな…」
「退室しようとしたルーファスを追いかけて、カトリーナ王女が猛アピール。しまいにはキレたルーファスから『すでに妻に迎えたい女性がいるので、触らないで下さい!』と大声を上げられていたぞ」
「ルーファス、それは次期宰相として如何なものかと…」
「しかし師長、あれは中々恐怖体験だったぞ?カトリーナ王女の顔は全く馴染みがない上に抱き着かれたり至近距離で…悪いが私も顔を作る事が出来なかった」
「「能面だしなぁ…」」
夜中に見る能面とかってクッソ怖いよね。
「「「「ノウメン?」」」」
「いや、こっちの話…」
「あぁいう顔を精霊語で能面って言うのよ。それはともかく、向こうの王族は怒ってなかった?」
「最初は数人の王族が抗議の声を上げていましたね。歳若い方々ばかりだったので、例の呪いについて深く知らない年代かと。逆にすでに既婚の方々は見て見ぬフリというか。一般の大臣達などはルーファスが王女を娶ってくれないかと期待の眼差しでした。多分自分の息子が婚約者候補なのでは?」
「「「「あー…」」」」
生贄候補が身内にいたら、身代わりを差し出したくもなるか。
国内貴族だと最終的に王命で決まっちゃうしな。
「向こうのアルフォード王がルーファスに対し、『良ければ両国の絆を結ぶと思って王女を第1夫人に、その想い人を第2夫人とするのはどうだ?』とか言い始めてな。あの時のルーファスの顔は凄かったぞ」
「真顔じゃなかったんですか?」
「本気の嫌悪感を滲み出した顔だった。殺気を出さなかっただけ偉いよ、ルーファスは。流石にここまでくるとルーファスが可哀想になってきてな…悪いが、ユージェリスの名を借りたぞ」
「僕の?」
「『彼は我が王国の愛し子様の親友で、彼の事を本当に案じている。私は愛し子様から彼の事を頼まれているので、この件は持ち帰り愛し子様を交えて検討する方向でよろしいか』とな。いやぁ、掌を返したように『いや、本人にその気がないのであれば無理にとは言わん。こちらも自国内で婚約者を選定中だしな。ふはははは』だと」
どんだけ僕怖がられてるのさ。
「すまんな、ユージェ…」
「いいよ、ルーファスのためなら僕の名前くらい…名前か?肩書きくらい好きに使ってよ」
「ありがとう…」
泣きそうになってるルーファスを抱きしめて落ち着かせる。
どうやら相当怖い目に遭ったらしい。
うちの妹の旦那候補になんて事を…
…ん?そういえば…
「…ルーファス、妻にしたい女性って誰?」
「ぐっ?!」
腕の中でルーファスが反応する。
体を離すと、少し目線を泳がせてから、息を整えて僕達を見据えた。
「…師長、ロイヴィス様、ユージェ。お願いがあります」
「「「お願い…?」」」
「…俺に、いや、私に、フローネ嬢にお声がけする許可を頂きたい…!!」
勢い良く頭を下げるルーファス。
というか、なんだってぇー?!?!
「「許す!!!」」
僕と兄様が嬉々としてハモる。
残った父様は…少し渋い顔をしていた。
「…複雑な気持ちだが、ルーファスなら…まぁ…」
「ありがとうございます!!ユージェ、俺は今日もう休みだから、屋敷に帰る時ついてっていいか?!」
「勿論!じゃあ僕帰るんで!お疲れ様です!」
みんなの返事を聞かずにルーファスの腕を掴み、執務室を勢い良く出る。
2人で全力疾走なんて超久しぶり!!
昔王都で2人で遊んだ時を思い出すなぁ。
何人かに驚いて2度見されつつ、門を抜けて王城を飛び出し、そのままの勢いで『ワープ』する。
門番の兵士さん達がめっちゃ慌ててたけど、今日はスルーします!!
よっしゃあ!!義弟ゲットだぜ!!