使えるものはなんでも使う
水曜、金曜と更新せずに申し訳ありませんでした。
月末月初は仕事が忙しく、帰ってからも家の事やったら寝落ちする日々でした…
なんか喉も痛いし、やんなっちゃう。
代わりと言ってはなんですが、本日から3日間連続で更新予定です!
引き続きよろしくお願いします(*´∇`*)
「なぁ、君!ここで一緒に働かないか?!君なら公爵家の料理長だって目指せるぞ!!」
「やだ、料理してるところもカッコ良かったけど、至近距離で見るともっと素敵!」
「ねぇ、お兄さん、彼女いる?まさか既婚じゃないわよね?」
「剣をお持ちのところを見ると、腕も立つのでは?良ければ一戦願えませんか?」
「それよりも私達とお茶にしません?貴方の事、もっと知りたいんですぅ〜!ねぇねぇお名前は?」
囲まれてる、なう。
やだ、僕ってばモッテモテ〜♡
「申し訳ありません、奥様方をお待たせしていますので…道を開けていただけると助かるのですが」
「そんな事を言わずに!君、当然スキル持ちだよね?レベルは?いつから料理してるの?どこかの学院は出てる?」
「それよりもどちらからいらしたの?どこの奥様へお仕えしてらっしゃるの?」
「今日はどなたかご訪問の予定はなかったわよね?どちらの方がうちの奥様にお会いになってるのかしら?」
「マイク様がご案内していたようよ。さっき彼を連れて来られたのもマイク様だし」
「その通り、その方を解放しなさい」
「「「「うわぁー!!!?!」」」」
厨房の扉の方、囲んできていた人達の背後から地を這うような低い声が聞こえて、僕以外の全員が悲鳴を上げて散っていった。
どうやらさっきのおじ様…マイク様の声だったらしい。
ちょっと威嚇スキル発動させてません?
メイドさん達なんて涙目で震えながら抱き合ってるじゃないか。
「い…従者殿、お食事のご用意は?」
「終わっています。とりあえず量は少なめで種類を増やしました。配膳を手伝っていただいても?」
「…そうですな、私がお手伝い致します」
周りを見回してから、僕に向き直るマイク様。
どうやらここの人達は当てにならないと感じた模様。
配膳台をお借りして、色々な料理を乗せる。
今回はとりあえず前世の知識で出来るだけ作った。
どうやら昔の友人に妊婦さんがいたようで、育児書や妊婦さんについての本を読んでいたらしい。
そこから導き出した料理のラインナップでふ。
メイドさんや料理人さん達を置き去りに、屋敷の中を2人で進む。
「…屋敷の者が、大変失礼致しました」
「いえ、意外とバレないもんなんだなと驚いてたくらいなので」
「いるはずがないという先入観…ではないでしょうか。この屋敷の何人かは王都の屋敷にいた事もありますので、パレードの時などにお顔を拝見されてるとは思います」
「そんなものですかねぇ」
ガラガラと音を立てて、アイカット様の部屋の前まで戻ってきた。
コンコンと扉を叩くと、中からベティ様の声が聞こえた。
どうやら入ってもいいらしい。
マイク様は扉の前で待ってるとの事なので、配膳台を押しつつ入室する。
「失礼しまーす」
中に入ると、多少青い顔をしたアイカット様がベッドに横たわっていた。
起き上がれないほど辛いのか…
ベティ様は横にある椅子に座ってた。
「アイカット様、ご無沙汰しております」
「ユージェリス様…このような格好で申し訳ありません…態々来ていただいたのに…」
「いいんですよ、悪阻は辛いですもんね。でもお食事を殆ど取られていないとお聞きしました。よろしければご用意致しましたので、食べれそうなものにチャレンジしてみませんか?」
「ユージェリス様が…?!そんな、お手数をおかけしまして…」
「大丈夫です、食べれなければベティ様が食べるだけなんで」
「ええ、任せておいて!」
そんないい笑顔で言わなくたって。
「ユージェ、何作ってきたの?」
「妊婦さんが『これなら食べれた、これしか食べれなかった』のど定番系を」
ミルクアイスにレモンシャーベット。
オレンジゼリーとヨーグルトムース。
きゅうりの酢の物にキャロットラペ。
柔らかめにした素麺に梅干し入りお粥。
冷やしトマトとお吸い物。
そしてやっぱりど定番と言えば、フライドポテト!!
細いサクサクタイプとくし切りのホクホクタイプを用意しました。
本当はお肉も食べてもらいたいけど、お肉系は匂いでダメってなったら困るから徐々にだねぇ。
あ、ちなみに素麺とお吸い物はジャルネで仕入れてきたものを使ってます。
「あぁん、美味しそう。私も食べたいわぁ!」
「ベティ様は後でね」
そんな恨みがましい目で見ないでよぅ。
とりあえず最初はレモンシャーベットにしてみるか。
器を持ってスプーンで掬い、ベティ様の横にあった椅子に座る。
「はい、あーん」
「ふぇっ?!」
「え?起き上がれませんよね?どうぞ」
「あ、いや、その…」
青かった顔が赤くなってきたわ。
「やだ、ユージェ、態と?」
「態とですけど?」
「確信犯ねぇ」
「あの、そのっ…えっと…」
「ほらほら、溶けちゃいますよー?あー、落ちちゃうぅー」
「えっ?!あ、あーん…?」
おずおずと口を開けるアイカット様。
ほら、使えるものは僕の顔でも使いますとも。
…ナタリー、怒らないよね?
「あむ…ん…?」
「どうです?気持ち悪いですかね?」
「…いえ、口の中がさっぱりします…」
「レモンシャーベットは食べれそうですね。ならこれのレシピはメモって置いていきますよ。じゃあ、次はミルクアイスで…」
「あ、でも、溶けちゃいます…」
「『キープ』してるから大丈夫ですよー」
「え…」
「騙してごめんなさい?」
コテンと首を傾げた状態で謝る。
小さな声で『お、お気になさらず…』と言われたから良しとしましょう!
「悪い男ねぇ、ユージェってば」
「アイカット様が少しでも食べて、元気になってお子様を産んで下さるなら悪い男にでもなりますとも」
「やだ、発言は良い男だわ」
「一粒で2度美味しいってやつですね」
「よく回る口だ事」
呆れたようにため息をつくベティ様。
ふふん、僕も成長したって事ですよ!