遊ばれるユージェリス
宴会楽しかった。
黒鉄さんの作った和食の数々はベティ様の心を癒した。
そりゃあもう凄い勢いで食べてたから、僕と同じで暴食スキル取得出来たんじゃなかろうか。
そんなベティ様は和食で回復したのか、また若い姿になっていた。
そして虎徹さんと焔が両隣に座って口説いて?いた。
虎徹さんもまた若返ってたしね。
ちなみに十六夜さんは焔の言いつけでガジャーノの子供と家でお留守番してるらしく、とても平和で助かった。
この場にいたら大惨事だったろうに。
とりあえずそんなベティ様の様子を『ピクチャー』に落とし込み、『レター』で父様達に定時連絡をしておいた。
実は国を出てから1日1回は『レター』してるのよ?
だってまた怒られたらやだし。
今回は写真に一言、『ベティ様は満喫してます』とだけ書いて送りつけました。
向こうからは魔力足りなくて全然届かないからねぇ…
そして早いもので、ジャルネに来てから1週間が経過しました。
個人的にはそろそろ帰りたいなぁと思ってます。
ちなみにこの1週間、東雲さんは虎徹さんとマンツーマンで世界の常識を勉強中。
神楽さんは久々の休暇を満喫するかのようにグダグダゴロゴロしてる。
焔と十六夜さんは子育て中。
例の子供を偏った思考や思想を正しているそうだ。
まだ子供だからこそ軌道修正が可能かもしれない、との事だった。
黒鉄さんと月詠ちゃんはいつも通りお店を営んでるので、しょっちゅう食べに行っていた。
牡丹ちゃんと葉桜ちゃんは毎日僕をデートに誘ってきていた。
まぁナタリーに悪いので大体お断りしてたけど。
そして華さんはベティ様と一緒にいた。
なんか仲良くなったらしい。
今日もお城の座敷で色んなものを広げて楽しそうにキャッキャしてた。
「ベティ様、そろそろ帰りません?」
「えー…」
「また来ればいいじゃないですか、お付き合いしますから」
「そうねぇ…そろそろ仕事も溜まってるだろうし、帰らないといけないかしらねぇ…」
陛下のためではないらしい。
知ってたけど。
「それで、今何してたんです?」
「見てわかるでしょう?華ちゃんとコスプレごっこよ。どう?若ければ銀河の妖精にだってなれるんだから!色合いも一緒じゃない?!」
「あの人はストロベリーブロンドじゃ…?まぁ確かに系統は同じですね」
「ユージェも何か着る?オススメは第3期教団服よ!本当は白髪だろうけど、銀髪でも似たようなもんよね!アニメの白髪と銀髪って大差ないし」
「そんな元も子もない事を…んー、やるなら僕はJr.の方が好きだしな…」
「あー、ユージェ似合いそうね。雰囲気で言えばレオナルドの方が似合うだろうけど。あの子の髪色が赤だったらそっくりになりそう」
「確かに、レオは雰囲気も似てる」
「え?マジ、リアルJr.いるの?!今度連れてきてよぉ!」
「いやぁ、それはちょっと…」
レオ、僕の前世の事知らないし。
あとニコラも。
ルーファスもまだ宰相様から教えられてないだろうから、連れてこれるとしたらナタリーくらいだなぁ。
…髪の長さは違うけど、ナタリーが第3期教団服着てくれるなら僕も着るんだけど。
絶対似合うわ、ミニスカ見てみたい。
「ユージェ、貴方今変な事考えてなぁい?」
「…至極真っ当な男の子の思考ですよ?」
「あら、ムッツリねぇ。オホホホホ」
「ユージェってちゃんと男の子なのねぇ、何考えてたか聞かない方がいい?」
「いや?別に?ただ愛しの婚約者殿にも第3期教団服着て欲しいなぁって思っただけですよ?」
「成る程、ユージェには彼女をコスプレさせたい願望があるのね!確かにムッツリだわ!」
きゃー、ハレンチ!と体をクネクネさせながら叫ぶ華さん。
何想像してんすか。
「失礼な、単純に彼女のいろんな格好を見たいだけだし。この世界の女性の標準は丈の長いドレスか膝下ワンピース、じゃなければ作業用のパンツスタイルでしょう?やっぱり日本のアニメコスを知ってると、なんか物足りないなぁって思っちゃうんですよねぇ。普段着でも色々ジャンルがあったわけだし」
「あー、でもそれわかるかも。ジャルネだと着物とか浴衣が多いから、耐え切れなくてこういうコスプレ系の物作っちゃったもの」
「私的には久しぶりの浴衣でテンション上がったけど、洋服をずっと着ないって事はなかったものねぇ」
そゆことです。
別に邪な考えばかりなわけではないでふ。
…ね?
「じゃあ、とりあえずコスプレごっこ終わったら帰りましょうか。銀髪・白髪の有名ところって誰かしら?」
「僕もやる事決定なのね、まぁいいけど」
「死んだ魚のような目じゃないし、美少年という点は合ってるけど赤い目じゃないし…素材そのものでコスプレするには難しいわね」
「個人的な主観なんだけど、銀髪とか白髪キャラってツリ目多くない?」
「あ、わかります、なんか思い付くキャラがツリ目ばっかりで。ベティさん、何着させましょう?」
「何がいいかしらねぇ…」
…暫く解放される気がしないわ。
そうして3刻後。
ゲッソリとした僕は畳の上でくたばっていた。
なんか髪色とか関係ないコスプレとかもしたわ、結局。
「いやぁ、楽しかったわ!ユージェ、ありがとね!着せる機会のなかった服も着てもらえて嬉しかったわぁ!」
「うふふ、いいわねぇ、着せ替えって。あんまりエドワーズもマーガレットもさせてくれなくって…アルバートとローズマリーは多少させてくれたけど」
「あの2人は自我が強めですからね…決められた事をやるのはそんなに好まないタイプですし…」
「さて、ちょっとは気が晴れたわ!心変わりする前に帰りましょうか」
「意外とすんなり」
「だってまた連れてきてくれるんでしょう?」
「はいはい、王妃様の仰せのままにぃ…」
「おうおう、何してんだぁ?ユージェリスがくたばってるじゃねぇの」
東雲さんの勉強会が一区切りついたのか、虎徹さんがふらりと現れた。
やめて、虎徹さん、ツンツンしないでぇ…
「虎徹さん、私達帰りますね」
「…あん?ベティさん、帰んのかい?もう?」
「意外と私も忙しいのよ。また来るわね」
「…寂しくなるねぇ、また来てくれよ?俺の女神様」
「いやん♡もっと早く虎徹さんに出会いたかったわ」
「俺もだよ、来世に期待だな」
「うふふふふ♡」
ベティ様、楽しそうだな。
なんだかんだ惹かれつつも虎徹さんに、不倫や離婚という道に堕ちる事はなかったベティ様。
これは、やっぱり、陛下の事を愛してるから…なのかな…?
…あんまりベティ様が陛下を愛してるように見えた事はないんだよね。
でも、だからと言って焔と十六夜さんみたいな関係性ではなさそうで。
ベティ様の昔話…この世界に来た時の話ってそんなに聞いた事ないけど、そういうのが関係してたりするんだろうか。
「ほら、ユージェ、帰るわよ!」
「他のみんなに挨拶しなくていいの?」
「あー、そうねぇ、それは必要ね…」
「宴開く?」
「開くか?宴」
「送別会だわ!全員集合!」
…今夜は寝れないかもしれない。