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ベティ様はご立腹

「そういえば、華さん奥にいるって、何してるんです?」

「ん?あー…あー、いや、うーん、まぁお前らになら言ってもいいか…今な、華は魔眼でガジャーノを監視中なんだよ」

「「ガジャーノ?監視中?」」

「あら、ガジャーノを…」


僕とベティ様はハテナが周りに飛び回ってるけど、どうやら神楽さんはわかったらしい。

虎徹さんは横にあった戸棚から1枚の紙を取り出して広げてくれた。

どうやらこの辺の地図のようだ。


「この国は俺のウォール・ジャルネで囲われてるだろ?んで、地図的には2国に挟まれてるんだ」

「2国?スラース公国の反対は森しかないですよね?」

「そっちの国の方じゃ国だと認知されてないようだが、一応国があるんだよ。まぁ国というか、少数民族の集合体ってーか…」

「…森の中に住んでる、少数民族…」

「ちなみにコイツらは殆ど魔法を使わない。いや、MPが殆どなくて使えないという方が正しいか。一般人の平均の3割程度しか保有してねぇの。だからまぁ、奴らは前世の少数民族とほぼ同じ生活をしてると思って貰えればいい。森の中で多少の火起こしと夜間の光を灯す事くらいしか魔法使わないんだよ。他国と交流もほぼないから、魔導具も持ってないんじゃねぇか?」


そんな事あんのか、この魔法の栄えた世界にも。

どんだけ遅れてるんだ。

うちの国からは離れてるし、そういう国というか人達がいるって情報はなかったなぁ。


「こっちの方の国の人がその民族に嫁いで、それでMP上がったり生活水準が上がったりしなかったんですか?またはこっちに嫁いだりして情報を流すとか」

「殆ど関わりがねぇからな。あっちの生活をこっちの人間がやるなんてまず無理だろ。逆は出来るかもしんねぇけどよ。日本人がアマゾンで急に生活出来るのかっての。物好きな奴なんかは嫁いでるかもしんねぇけど、子供が親の性質を受け継ぐかは確率五分五分だし」

「あぁ、それは無理ねぇ…パソコンとかスマホ持ち込んでも使えないんでしょう?魔導具も壊れたら終わりだし…」

「そういう事だ。んで、奴らの集合体をこの辺の国では『ガジャーノ』って言ってな。向こうの森はいくつかに区切って名称があるんだが、エヴァンドって地域にいる民族は『エヴァンド・ガジャーノ』、バンジャルって地域にいる民族は『バンジャル・ガジャーノ』ってんだ」

「まとめたら『ガジャーノ』なのね」

「そういう事。全部で10種類くらいのガジャーノがいるな。それでな、最近奴ら、うちの国を狙ってんだ」

「どういう事?」

「俺が作ったけど、急に出来上がったこの壁、どうやったって壊れねぇだろう?どうやら山の中で最近崖崩れとかそういう自然災害があったみたいでなぁ。安全な場所に住みたいから、ここを寄越せってさ」

「…え、正気?」

「どうやら正気みたいなんだよなぁ…」


遠い目をして現実逃避する虎徹さん。

うーん…ただの野蛮な民族って認識が強まったな。


「攻撃でもされそうなのかしら?」

「まぁ攻撃ったって槍とか矢とか飛んでくるだけだから余裕で壁が防げるんだけどな。馬鹿な真似しなきゃ放置でいいんだけど、最近は定期的に華に監視してもらってんだよ。アイツの魔眼は遠視能力もあるから」

「馬鹿な真似って?」

「…この前、エヴァンド・ガジャーノの子供1人が爆弾と一緒に壁に特攻してきたんだよ。ありゃあ胸糞悪かったな」

「…なんで爆弾知ってんの?この世界にはないのに…」


だから、ガルデリバルサがテロを仕掛けようとしたのに…


「あぁ、いや、説明が悪かったな。俺達の知ってる一般的なよくある爆弾とは少し違う。俺達の認識してる普通の爆弾ってよ、火薬に火をつけるタイプだろ?ありゃ違う、液体だった」

「…液体って爆発するの…?そりゃ、漫画とかで実験中に薬剤混ぜてボフンってなるギャグとかは見た事あるけど…」

「…あるわ、液体爆弾。前世であった」

「あるの?!」

「えぇ、映画で見た事あるの。2種類の液体を混ぜて衝撃を与えると…ってやつ」

「そう、うちも黒鉄が昔見た記憶があってわかったんだ。多分、向こうの生活で得た知識なんだろうな。後から調べたが、どちらもあっちの森特有の植物…マギの木とマジュロンの木から採れる樹液だった。前世にはない樹液だな。俺も実際には見た事ない植物だよ」

「えぇー…やだ、怖い…」

「エヴァンドにしかない植物だからなぁ…その特攻してきたやつを十六夜の力で蘇生させて、華の力で情報を得たが、マギの木1本から10ミリ程度しか採れないんだと。マジュロンなんて数滴が限界。しかも1本から絞り出すのに数日かかる。それを500ミリずつ合わせると中々ド派手にドカーン!」

「…手間暇かかってるんですね…」

「それでも壁はヒビすら入らないけどな」

「流石です」

「普段は獲物を狩る時に数滴ずつ罠として使ってるらしい。それだと爆竹程度だから然程危険性はねぇんだけどよぉ…」

「…人の命を使ってまで、やる事ではないわね…しかも子供を使うなんて…」

「その子供は?」

「その自然災害で親を亡くした孤児。だから周りの大人に言われてよくわからないまま特攻したらしい。捕虜ってわけでもねぇが、戻すわけにもいかねぇからこの国にいるよ。今は焔と十六夜に面倒見させてる」

「あぁ、虎徹さんから頼まれた仕事って、子供の世話か。1人にさせても大丈夫なんですか?」

「焔達が出かける時には家に魔法で鍵かけてるし、普通の子供じゃ開けられないからな。もし自殺を図っても十六夜なら死後数時間程度まで蘇生可能だし。一応焔の力を見せつけて、多少の脅しはしてあるから逃げたりもしねぇよ」

「焔は火炎か…爆発死した後じゃかなり怖そうですね」

「最初はめちゃくちゃ怖がってたけど、最近は比較的懐いてくれてるらしいぞ?ま、焔は見た目こそチビだが中身は大人顔負けの達観具合だからよぉ」


確かに焔って面倒見が良さそうだからね。

にしても十六夜さんが止めないって事は、その子供は男の子か?

…案外息子みたいな扱いして、家族ごっこでも楽しんでるんだろうか。

多分、焔は子供を作る気がなさそうだし。

というか、万が一子供が出来て、それが娘だったら…十六夜さん、大丈夫か?

『ぱぱ、だぁいすきっ♡』なんて発言したらヤバい事になりそうな予感しかしない。

十六夜さんって多少ヤンデレ臭がするよね…

そしてそれを気にしなくなった焔は凄いと思う。

僕には耐えられない、ぶるり。

僕の相手がナタリーで良かった。

…僕がヤンデレとかにならないように気をつけよう、大丈夫だと思ってはいるけども。


「殿ぉー!!!ガジャーノまた来たぁー!!…あら?ユージェじゃない、どうしたの?」

「華さん」


スパーン!!と勢い良く襖が開き、現れたのは華さんだった。

というか『来た』って…


「…虎徹さん、来たらしいですけど?」

「アイツらが何したところでこの壁は越えられないだろうし、スラース公国に向かっても追い返されるだろうが…」

「あ、そうそう、殿、あのね。向こうの族長っぽい人の頭覗いたけど、とりあえず殿と交渉をしたいみたい。で、自分達の意にそぐわなければ懐に全員が隠し持ってるあの液体を殿に向かって投げつける気みたい」

「「「「は?」」」」

「…まず、俺ここから動けねぇんだけどなぁ…」


首を傾げて呟く虎徹さん。

いやいや、そう言う事じゃないでしょ。

いつの間にか起きてた東雲さんなんて血管浮き上がるくらいキレてんじゃん。


「殿ぉ…俺に皆殺しの許可を…」

「おぅ、東雲、起きたか。って馬鹿野郎、そんなんやれっか」

「じゃあ殿、私に殺戮許可下さいな!」

「なんていい笑顔で物騒な事言ってやがるんだ神楽」

「もうみんなで殺っちゃえば良くなぁーい?!」

「華、テメェもちったぁ落ち着きやがれ」


流石虎徹さん、みんなに慕われてるねぇ。


「一応ここいらの国々とガジャーノの奴らには手ぇ出さないって制約してんだよ。追い返すだけならまだしも、根絶やしにする許可なんかやれっか」

「…なら、私達が追い返しましょうか?」

「「「「「え?」」」」」


手を合わせて、いい笑顔で言い切るベティ様。

…私()


「…もしや、僕も?」

「えぇ、その制約に全く関係してない私達が動く分には問題ないでしょう?」

「そりゃまぁそうかもしれねぇが…ベアトリスさん、いいのかい?」

「ベティで結構よ、虎徹さん。実はね、私、早く和食が食べたくて仕方がないのよ」


にーっこり、さっきの神楽さんに負けないくらいのいい笑顔のベティ様。

背筋がゾッとしたのは僕だけでしょうか?


「勿論ユージェが作った和食も美味しかったけど、ここの方は料理人さんだったんでしょう?それはもう私楽しみにしていましたの。さっさと片付けて、お腹いっぱい楽しみたいのよ」

「…何する気なのさ、ベティ様…」

「簡単よ、あの液体全て奪っちゃえばいいのだわ。それで私が空中でぜーんぶ爆発させて、戦意喪失させて帰らせるの。ユージェは別任務よ?」

「別任務?」

「エヴァンドってところに言って、マギの木とマジュロンの木を全てぶっ潰してきなさい?」

「「「「「は?」」」」」

「あれがなければ戦えないのであれば、それを潰せばいいだけじゃない」

「…彼らの生活で必要なものだとしたら?他の効能があるとか…」

「なら爆発成分だけ消してきなさいな。そういうの得意でしょう?」


…うん、ベティ様の目がちょっと血走ってる。

いやまぁ『イレイザー』で出来なくはないと思うけどさぁ…


「王妃命令よ、ユージェリス=アイゼンファルド。私の和食を邪魔するモノを、消してきなさい?」

「…王妃様の仰せの通りに」


ダメだ、陛下のせいで和食への愛が爆発しててイライラしてるみたいだ。

先になんか食べさせておけばよかった。

あの干物だけじゃダメだったらしい。

どこからともなく取り出した王妃様扇子を口元に優雅に当ててにっこりと微笑むベティ様に反論する事なんて出来るはずもなく、片膝をついて了承の意を示す。

別にまぁ断っても良かったけど、僕もその植物については確認しておきたかったしね。

そんな物騒なのが近くにあったら怖いし。


「…ユージェ、超カッコいい!マジでラノベとかで見た王子様とか騎士みたい!」

「2人とも見た目からして似合うぅ〜!!」

「…いや、そんな仕事、やらせてもいいのか…?」


華さんと神楽さんはきゃあきゃあ楽しそうに騒ぎ、虎徹さんは至極最もな疑問を呟く。

ちなみに東雲さんは自分が出れないからか1人地団駄を踏んで悔しがっていた。

ベティ様最強説浮上。

食べ物の恨みは恐ろし過ぎる。

ちなみにそんな爆発する植物は普通ありません。

せいぜいガマの穂くらい?

異世界だからこそだと思っていただければ…

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