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牽制されるベティ様

辻馬車を捕まえようと思ったら、ベティ様が乗合馬車に乗りたいと言い出した。

まぁその方が安いけどさ。

そして乗合馬車に揺られる事、約1刻。


「おぉ…近くで見るとより似てるわね…!!」


高く聳える、壁。

虎徹さんの作ったウォール・ジャルネである。

どうやらスラース公国の名所にもなってるそうで、普通に乗合馬車の停留所が近くにあった。

知ってたら前回もノワール達を置いた後に乗ったのになぁ…


「おぅ、兄ちゃん達、観光かい?そっちの奥様とアンタは他国から来たんだろう?」

「わかりますか?」

「顔の系統が違うからなぁ。というか、品があるっつーの?こんなとこで何してんだい?」


どうやら同じ乗合馬車に乗っていて、同じくここで降り立った人だったらしい。

なんか声かけられちゃった、他には誰もいないからかな?


「ちょっと用事がありまして。おじさんはここへ何しに?」

「向こうの山に家があんだよ、ここが1番近い馬車の乗り場でな」

「成る程」

「ここで突っ立って見てたって、門は開かねぇぞ?なんでもこの門は特殊でな、正しく用事がない限りは遣いの人も現れないそうだ。ただ中に入ってみたいとか、そんな浅はかな気持ちじゃ無理だぜぇ?俺は何十年か山に住んでて、何十回もここの前を通ってるけど、開いたところを見たのは1回っきりだ」

「見た事はあるんですね」

「5年くらい前か?たまたま通りかかったから開いてて、ちょうど閉まっていくところだったんだ。あれはなんか感動したね」


…5年前って、神楽さんと東雲さんが出発した頃じゃ?

チラリと横目で2人を見ると、神楽さんが軽く頷いていた。

どうやら当たりのようだ。


「じゃあおじさんは今回で2回目ですね」

「はん?」

「ユージェ、私がやってもいいかしら?いいわよね?では…んっんっ、《開け、ごま》!!!」


意気揚々と叫ぶベティ様。

この話した時からやりたそうにしてたし、まぁやらせてあげましょう。

すると前回同様、大きな音を立てて壁が割れて開いた。

おじさんはこれでもかというくらい口を開けてガン見してる。


「やっだぁ、なんか爽快!楽しいわね!」

「他にも開け方あるんですけど、このやり方の方が迫力もあって面白いですよねぇ!」

「…俺は静かに入る方が好きだ」

「あれ、つまんないんだものぉ」


キャッキャしてる女性2人は楽しそうだねぇ。

東雲さんは少しげんなりしてるけど。

そしておじさんは少々震えながら僕の顔を見てきた。


「…アンタら、ジャルネの人間か…?」

「あっち2人はジャルネ出身で、私達はただ遊びに来ただけですよ」

「遊びに…?!バカ言え、あの国はどうやったって簡単に入れない要塞国家だぞ?!なんで遊びに行けるんだよ!!」

「ジャルネの代表に許可を貰ったからですけど…まぁ、普通の人(・・・・)じゃ無理でしょうね。それでは、失礼します」


混乱するおじさんは置いといて、4人で壁の内側へと進む。

今回は華さんのお迎えはない模様。

それでもベティ様は大興奮です。


「…何者なんだ、お前ら…」


呟いたおじさんの声は、壁が閉じる音で掻き消されていた。




「あら、神楽に東雲にユージェ君じゃなぁい」


街の方へ向かうと、最初に出会ったのは十六夜さんだった。

相変わらずのおばけマスクメロンです。


「十六夜、ただいまー!」

「はい、おかえりなさぁい」

「十六夜!!」

「何かしら?東雲?」

「俺を第2の夫にしてくれ!!」

「お断りよぉん、アタクシには焔1人いればいいんだからぁ」


相変わらずの愛も変わらず。

東雲さんなんて眼中にない模様。

でも振られてショックを受けているようにも見えるけど、心なしか安心してないか?

…十六夜さんが焔だけを見ているという不変の愛を確かめる行為でもあるのかな、この告白って。


「あらあら、随分素敵な方も一緒なのねぇ。どちら様かしらぁ?」

「ベアトリス=リリエンハイドと申します、ベティとお呼び下さいな。日本では笹川愛梨という名でしたの、よろしくお願いしますね」

「まぁ、ユージェ君が言ってたもう1人の転生者って事ねぇ。初めまして、十六夜と申しますわ。ちなみにお聞きしますけど、ベティさんは既婚者かしらぁ?」


ま、まさか…早速牽制始めたぁ!!

ベティ様が焔を奪おうとしてると思ってる?!


「えぇ、どうしようもない男ですが、一応夫がおりますわ」

「ほほほ、そうですの。もう1つお聞きしたいのだけれど、ベティさんの好みの男性像はどんな方かしらぁ?」

「某海賊狩りなんかドンピシャです。夫は全く似ていませんけども」

「あらあらあらぁ…」


十六夜さん、目が笑ってないの、怖いの。

だからかベティ様も警戒したままだし。

心なしか周りが吹雪いてるように感じて寒いでふ。


「…えっと、十六夜さん。ベティ様はうちの国の王妃様でね、旦那さんってのはつまり、うちの陛下なんだ。それで、陛下がベティ様にベタ惚れで…イメージ的には、焔と十六夜さんの組み合わせの逆バージョンに似てるというか…」


僕の補足に、ベティ様の目は暗く翳っていき、反対に十六夜さんの目が爛々と輝いてきた。


「まぁまぁまぁ!やだぁ、素敵な旦那様じゃなぁい!愛が強い人って共感するわぁ!!」

「…この人、あの人と同類…うわぁ…旦那さんに同情する…」

「べ、ベティ様ベティ様、十六夜さんの方が過激だから!陛下は空気読めなくてベティ様の事怒らせたりはするけど、まだ大人しい方だから!」

「…それ、フォローになってるのかな?というかフォローなのかな?」

「なってねぇんじゃねぇか…?」


神楽さんと東雲さんが首を傾げる。

…確かに意味不明な事言ったかもしれない。

でも同類だとしても、十六夜さんの方が凄いと思うんだ。

焔の表情からそう察したもん。


「そんな人が旦那様なら、他に目移りなんて出来るわけないわねぇ!うふふ、失礼?」

「…いえ、お気になさらず…」


凄い、ベティ様がやつれてる姿、初めて見たかも。

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