3回目の国
またもや遅くなりました…!!
「というわけで、こちらもう1人の転生者」
「リリエンハイド王国王妃、ベアトリス=リリエンハイドよ。前世の名前は笹川愛梨、よろしくね」
「お、王妃様…」
変身が完了したベティ様を見て、神楽さんと東雲さんが固まる。
まぁ、平民服を着たところで溢れ出る気品が隠し切れてないんだよねぇ…
髪色も暗い茶色に変えたみたいだけど、毛並みの良さが目立つ。
「さ、流石に王妃様って言われると、応対にドキドキしちゃうな…」
「多分気にしないと思うんで、気軽に話しかけても大丈夫ですよ。ねぇ、ベティ様?」
「えぇ、勿論よ。なんなら何かアニメの話でもしてみる?」
「じゃ、じゃあ、王妃様の好きなアニメは…」
うむ、こちらはとりあえず大丈夫そうだな。
そして固まったままの東雲さんに近付く。
「…王妃って、国で2番目に偉いんだろ?王様の嫁ってやつ」
「そうですね、それくらいは知ってましたか」
「当たり前だろ、絵本にすら出てくるもんだし…王様と、王妃様と、その子供がお姫様と王子様だろ?あとは兵士とかの家来が城にいるんだろ?」
…うん、なんというか、確かに絵本の知識だな。
家来の階級とか、それ以外の仕事をしてる文官なんて認識はないと。
「じゃあ説明を変えますね。僕の母は元々お姫様でした」
「は?」
「母のお兄さんが王子様で、今は王様をやっています」
「お、おう…」
「もし母にお兄さんがいなければ、母はお姫様のままだったので、僕も王子様でした」
「…おう…」
「今の王様には子供が4人いて、長男の王子様が次の王様になります」
「うん」
「ですがもしその4人がなんらかの理由でいなくなってしまった場合、次に王様になるのは僕の兄様です」
「…母親が、お姫様だったから?」
「その通り。でも兄様が嫌だと言ったら、僕が王様にならなければいけません。さて、僕の立場の偉さがわかりましたか?」
「…お前、偉い奴だったんだな!!」
…侯爵とかの序列がわかんないならと思って端折った説明したけど、やっとわかったのか。
まぁこの説明には僕や兄様が継承権放棄してる話とか、そういうのはなかったものとしての適当話だけども。
そして向こうの2人はめちゃくちゃ盛り上がってるな。
流石アニメ、話のネタとして外さない。
「はいはい、そろそろ出発しますよー。陛下が訪ねてきちゃうかもしれないし。僕とベティ様の魔力があればどこかで1回休憩すればすぐに着けると思うので、休憩する場所での役割を決めましょーう」
「「「役割?」」」
「ベティ様、高貴なオーラが隠せてないので、裕福な商人の妻、または貴族夫人を演じて下さい。僕はその従者役。2人は護衛に雇われた狩人って事で」
説明後、僕は指を鳴らして服装と髪色を変える。
よくある綺麗目な従者の格好と、黒髪に黒縁眼鏡。
まぁ従者の所作が綺麗なところで褒められるだけだから、低姿勢を崩さないようにしよう。
「まぁ!ユージェ、素敵ね!」
「奥様、光栄です」
「ふむふむ、なら私達もベアトリス様を『奥方様』とか『奥様』って呼んでおけばいいわね!」
「オクガタサマ…?」
東雲さんが把握しきれてないけど、一旦無視で。
「僕…私の事は『ユズキ』とお呼び下さい。外での偽名はこちらを多用しておりますので」
「まぁまぁ、従者姿が様になってるわねぇ。わかったわ、ユズキ」
「昔の名前とおんなじ響きなんだね!よろしくね、ユズキ君!」
「…ユズキ、オクガタサマ、ユズキ、オクガタサマ…」
「ではまず、認識阻害の魔法をかけてから『ワープ』しようと思います。どこに着いても見つからなければ騒がれませんし」
「あ!じゃあそれは私達でかけるよ!2人は魔力温存した方がいいでしょ?」
「そうね、お願い出来るかしら?」
「勿論!東雲、いいよね?」
「あ、あぁ…」
「ではでは、《認識阻害》!!」
「…《認識阻害》」
2人の声に合わせて、僕らの周りが白い光に包まれる。
どうやらキチンとかかったようだ。
「では、後は私達の仕事ですね。奥様、お手を拝借出来ますでしょうか?」
「えぇ、好きなようにお使いなさい?」
「ありがとうございます。お2人も手を繋いでいただいて、神楽さんは奥様とも手を繋いでいただけますか?」
「はーい!」
「おぅ…」
全員がくっついていれば『エリア』はいらないからね。
というわけで、ベティ様の魔力も借りて準備オッケー!
家出、いっきまーす!!
「では、《ワープ》!」
「ユージェ様ぁ?!?!」
唱えた直後に、自室の扉が勢いよく開く。
『ワープ』の直前に見えたのは、少し焦ったジーンと、大号泣の陛下と、頭を抱えた父様だった。
…多分認識阻害してるから、見えてなかっただろうなぁ。
兄様達に『レター』は送っといたし、またジャルネに着いたら連絡しとこう。
…というわけで、辿り着きましたどっかの街。
運良く人気のない場所だったので、認識阻害を外してもらう。
「ここ、どこかしら?」
「んー…まぁ私が来たことある国である事は確かですけど…」
「…ここ、レレートレード王国じゃないかな?」
「…あぁ、確かに、あのでっかい聖堂は見覚えがあんな」
…おぉ、レレートレード王国か!
シャーロットさんの国だね。
いるかはわかんないけど。
にしても1回でここまで来れたのは流石だな!
しかも多少は余力も残してるし。
また鼻血出して倒れるのは嫌だったから、少しだけセーブしたんだよね。
あとベティ様にも鼻血出させるわけにはいかないから…
…ん?いや?ベティ様はMPの数値がカンストしてるし、鼻血は出ないでぶっ倒れるだけか。
僕は数値がないから鼻血出ちゃうけども。
「レレートレード王国か…ヘロウェーンは衝撃でしたね」
「あぁ、報告にあったハロウィン擬きのお祭りね。折角だから今度は来てみたいわぁ」
「私達も昔来た事あるけど、結構大きなお祭りだったよね!」
「あー、なんか、色々被せられたな…」
ふむ…シャーロットさんのお父さんのストレイトさんには、僕侯爵子息だって正体伝えちゃってるんだよね…
そんな侯爵子息が従者として仕える女性…うーん、ベティ様の身分もバレそうだ。
「私はちょっと見つからない方がいい人達がこの国にいますので、さっさと宿を取って休憩しましょう。回復次第次に飛びます」
「あら、ちょっと観光したいのだけれど?」
「…神楽さん、着いてってもらっても?」
「勿論よ!ほら、行くよ東雲!」
「俺もかよ?!」
「ナンパされたらどうすんのよ!抑止力として付き添いなさい!」
「ヨクシリョクってなんの事だよ?!目か?!」
「いいからぁ!!」
おぉ、流石特殊能力『怪力』。
神楽さんよりも全然背の高くて、しかもふんばってる東雲さんをいとも簡単に引き摺ってったわ。
ベティ様も面白そうに笑いながら僕に手を振ってくれた。
さてさて、今日のお宿を探しに行くかねぇ。