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1人で暇潰し

父様と一緒に帰ったら、シャーリーが血相を変えて屋敷から飛び出してきたところだった。

どうやら僕の書き置きを見たらしい。

…探さなくていいって書いたのに。


「ユージェリス様!せめてどこに行くかを書いて下さいまし!!」

「いやぁ、散策だから場所は決まってなかったし」

「デビュー前のお子様が1人で出歩くなんて有り得ませんから!!」

「一応敷地内にはいたんだけどな…」

「シャーリー、そう怒ってやるな。愛し子様とは基本、自由な思考の持ち主だ。あまり制限をかけられると、書き置きすらなくなるぞ?」

「ですが旦那様…!!」

「現に王妃様は陛下の束縛に耐えきれなくなり、何も言わずに1ヶ月失踪した事もあるしな…」

「ひぃっ!!」


遠い目をして昔話をした父様の言葉に、青い顔をしてシャーリーが小さく悲鳴を上げた。

それより何それ、超気になる!

1ヶ月どこ行ってたんだろ、今度聞いてみよう。


「戻ってきてから何をしていたか聞いてみたが、微笑まれるだけで何も教えてくれなくてな…精霊界へ行かれていたのだろうか…」

「ゆ、ユージェリス様…まさかユージェリス様も…」

「…うーん、どうかなー?」


そんなところあるか知らんし、とりあえず笑っとこう。

僕だったら何するかな、変装して他国に潜入してみるとか。

ちょっと遠い町で平民として暮らしてみるとか。

あ、狩人になって魔物を狩りまくってみるとか?

狩人って、異世界ものでよくある冒険者的な立ち位置みたいだし。

姿を変えてやる事のテンプレだよね!

あー、面白そうだなぁ。

なんかあったら僕も実践してみよう!


「…ユージェリスがあの時の王妃様と同じような顔を…」


なんだか複雑そうな父様をよそに、僕は屋敷の中へ入り、朝食を取るために食堂へと向かった。




朝食も終わり、いつもの暇な時間がやってきた。

でも今日は厨房に行けない。

…今、僕の誕生日会の準備で忙しいらしいんだよね。

さすがにそれの邪魔は出来ないし。

ロイ兄様とフローネもやる事があるっていなくなっちゃったし。

リリーもいないから話し相手がいない。

…また脱走しようかな、間違えた、散策しようかな。


「よーし、それじゃあ今度はどこに行こうかな。正面玄関側だと、他の人に見られる可能性があるし…そうするとまた裏の林になるなぁ…それもなぁ」


あと3刻くらいだし…

あ、屋根の上に登って景色でも見てみようかな。

いや、それでも見られたらバレるか。

…魔法で姿隠すか変えればいっか。

おぉ、この前の姿になろう!

そう思い立って、軽く指を鳴らす。

黒髪ツインテールに、メイド服、身長伸ばして15歳くらい。

鏡で姿を確認して、見た目に問題なし。

まぁ触られたらバレるけど、触られなきゃいいのさ。

もっかい指パッチンして、『ジャンプ』を装備。

窓を開け放って、あいきゃんふらーい!!


「おぉ、見晴らしいいなー!」


屋敷の屋根の上に立ち、王都を見渡す。

この侯爵邸は王都の端っこにあるので、いい感じに全体が見渡せた。

民家って低いもんな、この時代にビルなんてないし。

1番高いのは、やっぱり王城だ。

でもかなりここからだと離れてる。

…よく『ワープ』出来たなぁ…

成長すれば、難なく出来るようになるかな?


おや?屋敷のすぐ近くに馬車が停まってる。

あそこは門番からも見えない死角だろうな。

家紋は…見えない。

でもその辺の辻馬車じゃなさそう、ちょっと高そうだもん。

なんとなく、僕は体を隠してみた。

…姿消して近付いてみるか。

そう思い立って指を鳴らし、姿を周囲と同化させてみた。

中々無詠唱もどきも上手くなってきたな!


「よっと」


屋根の上から跳び降りて、屋敷の門の上に降り立つ。

少しガシャンと音を立てたが、門番の2人は軽く周囲を確認しただけで終わった。

危ない危ない。

そのまま塀の上を伝って、馬車の上に辿り着いた。

…話し声ってどうやって聞けばいいんだろ。

『サイレント』はかかってないようで、ボショボショと何かは聞こえる。

とりあえず単純に馬車の上にしゃがみ込み、耳を当てた。


『…愛し子…我が…なのだろう?なら…』

『…ですよ、旦那…恩恵…うとか…』


…もしかして、僕の事か?

余計に気になってきたな。

透視してみよう、そーれ!

小さく小さく指パッチンして、馬車に魔法をかける。

中にいたのは丸々と太ったてっぺんの薄いオッサンと、服装からして執事っぽいひ弱な感じのお爺さんだった。

あれ?もしかしてこれテンプレ?

僕を狙ってなんか企んでるとか…


『やはり娘との結婚を迫るべきか?直接本人との交渉は禁じられているからなぁ…』

『旦那様、しかし本当にアイゼンファルド侯のご子息なのでしょうか?ご令嬢の可能性や他家の可能性は…』

『王城の下っ端兵士を買収したが、あの発表の前日、遠くから見かけたアイゼンファルド侯の隣にいたのは男の子だったらしい。ならばあの家で該当するのは1人』

『…それなら、お嬢様と同い年になりますね。お嬢様のご容姿でしたら、簡単に捕まえられるかと』

『だがなぁ、エリーがまだ乗り気ではないのだ。顔が見たいと駄々をこねてな。あの子は整った顔立ちを好む。アイゼンファルド侯やマリエール様の顔を見る限り、整ってはいると思うのだが…どこからか顔を出しはしないか、こうやって見に来てみたものの…』

『あのお2人は社交界の華ですからな。きっとお嬢様のお目に叶うと思います。1度『プロジェクト』でお2人の顔を見せて差し上げるのはどうでしょう?』

『それもいいな、魔力はかなり消費するが、説得力はありそうだ』

『これでフロイセン伯爵家は安泰ですな』

『あぁ、そうだなぁ!』


…ビンゴぉ〜?

いや、えぇー、バカなの?

選ぶとは限らないでしょ。

あのオッサン見てる限り、娘がまともなはずがない、偏見かもしれないけど。

いやでも、顔が大事って言ってる時点で、僕の中身は二の次でしょ?

やだよ、そんな子と付き合うなんて。

フロイセン伯爵家のエリー…覚えておこう。

絶対引っかからないわ。


僕は決意を胸に、屋敷へと戻っていった。


部屋に戻ると、特に出る前と変わっていなかった。

うん、誰も見に来てないみたいだな。

幻覚を解いて、ベッドに座る。

…そういえば、父様と母様に贈るつもりだった魔導具どこいった?

あの日は包む前に出かけちゃったから…


部屋の中を見回し、少し探してみる。

ないな…リリー、どこにしまったんだろ。

とりあえず今日渡すのは諦めるかな。

代わりに手紙と似顔絵を描こう。

6歳の子供っぽいでしょ。

似顔絵は…漫画風でもいいかな?

さすがに6歳児っぽくは描けない。

昔はよく友達と絵を描いてたから、結構絵には自信あるよ!

授業中にハゲの先生の似顔絵描いて、バレて怒られた事もあるし!


そう思い立って、僕は紙とペンを探すために引き出しの中を探し始めるのだった。

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