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自慢の息子

結局目覚めた日はミルクリゾット食べてお風呂に入ってさっさと寝た。

ミルクリゾットについては、みんなに羨ましそうな顔されたけど、気付かないフリでさっさと食べた。

だってお腹空いてたんだもん。

あれだけ寝てたんだから寝れないかなー?と思ったけど、すんなり寝れた。

その代わり、めっちゃ朝早く起きちゃったけど。

只今、光の5刻です。


「暇だな…外行こう」


適当に着替えて、窓を開ける。

扉から出ると誰かに会って詮索されるかもしれないし。

とりあえず書き置きはした。


『散歩してきます。探さないで。ご飯までには戻る』


…すんなり書けたけど、なんだこの文字。

見た事ないのに書けるし読める。

試しに別の紙に日本語を書いてみた。

…書ける。

この文字がこの世界の文字か。


「謎だ…なのに読める…不思議だ…あ、なら今度からベティ様に日本語で『レター』出そう。誰も読めないなら好都合じゃん」


ナイスアイデア!

暇な時に書こうっと。

とりあえず書き置きはベッドの上に置いて、窓枠に足をかけた。


…普通に飛び降りようと思ったけど、大丈夫か?

魔法使って降りた方がいいよな。

えっと、何がいいかな…

…おぉ、これはいいかも!

『ジャンプ』ってやつ、モロ某魔法少女のやつだ!

『フライ』は杖に羽が生えるやつじゃなくて体が浮くらしいから、同じ効果なのはこれだけだな。

ってかこれなら想像しやすいから無詠唱もどきでいける!

意気揚々と、僕は指を鳴らした。

一陣の風が僕の足元を包み、体を軽くする。


「おぉ…では、早速!」


期待を胸に、窓枠から飛び出す。

軽々と体が浮遊し、緩やかな曲線を描いて下降していく。

寧ろ飛び過ぎて、地面ではなく離れた木の上に降り立った。


「すっげ、跳躍やべぇ…これ、重宝するな」


ちょうどいいや、このまま林の上を跳んで遠くに行ってみよう。

気軽な感じでそのまま足を進めた。

朝日が木々の隙間から地面へと降り注ぐ。

とても綺麗で神秘的な風景だった。

うーん、朝一の散歩って気持ちいい!

にしても、結構遠くに来たな。

もう林抜けて山まで来てるじゃないか。

さすがに戻ろうかなー…って、おや?!


「いちごだ!!」


林と山の境目に、いちごらしき群勢があった。

僕、いちごって凄い好きなんだよねぇ!

木の上から降り立ち、食べ頃のいちごを摘んでいく。

…これ、どうやって持って帰ろう。

とりあえずポケットに入ってたハンカチの上に乗せてみたものの…

あぁ、そういえば時空属性があるなら、アイテムボックスとかってないのかな?

伝説の属性だから、資料がなくてわからない。

…いや、意味のある『音』であればなんでも叶うんじゃね?

えっと、なんでも出し入れ可能で、しまったら時間経過しなくていい感じの都合のいいアイテムボックス…


「えいっ!」


勢いよく指パッチンする。

なんか声も出ちゃったわ。

でもその瞬間に、目の前に先の見えない真っ黒な靄が現れた。

…おぉ、出来た…のか?

恐る恐る、いちごを1個投げ入れてみる。

…いちごが黒靄の中に消えた。

落ちていた石を投げ入れる。

同じく消えた。

今度は黒靄に手を突っ込んでみる。

…なんの感触もない。

…いちごが欲しい。


「おっ!」


思った瞬間に、手に何かが当たった。

それを摘んで、引き出す。

…いちごだった。


「これは…いいね」


とりあえずそのいちごは口に入れて咀嚼する。

甘酸っぱくて美味しい!

僕はハンカチの上にあったいちごを全部黒靄に放り込んだ。

黒靄を開いたまま、いちご狩りを再開する。

摘んではポイ、摘んではポイ。

そうして食べ頃のいちごは全て狩り尽くした。

再び指パッチンをすると、黒靄は消えた。

試しにもう1回鳴らして、中を確認する。

ちゃんといちごはあった。


「最高だよ、アイテムボックス…!!」


これでいいもの見っけたら、片っ端から全部入れていこう。

消費魔力も大したものじゃないし、いいじゃないか!


ルンルン気分でいると、なんとなく背後に気配を感じた。

…おかしいな、背後にあるの岩の壁なんだけど。

じーっと見てると、鑑定スキルさんがお仕事をしてくれた。


【偽装の岩壁→アイゼンファルド侯爵領への近道を塞ぐ岩壁。アイゼンファルド侯爵家またはアイゼンファルド侯爵領の人間しか開閉不可】


これか、兄様が言ってた秘密のルートって!

って事は、この前のジーン少年はここ通って来たのか。

確かに僕の部屋からここまで一直線だったもんな。

んで、なんでここから気配を感じたんだ?


そんな疑問を感じていたら、突然岩壁が動き始めた。

意外と静かに横へスライドしていく。

暗い洞窟の奥から、馬の足音が聞こえた。

そこから現れたのは…


「…父様?」「…ユージェリス?」


馬に乗った父様だった。

うわぁ、父様、王子様みたい!

白馬じゃないのが悔やまれる!!

あ、父様の後ろに馬に乗ったレリックもいる。

こっちも様になってるなぁ。


「ユージェリス、なんでここに?それより、体は大丈夫なのか?」

「それは大丈夫。でも朝早く起きちゃったから、散策してたの。父様、帰ってくるの早かったね」

「お前が目を覚ましたって『レター』があったからな。急いで残りの仕事を片付けてきたんだ。さぁ、一緒に帰ろう」


父様は笑いながら手を差し伸べてくる。

僕がその手を取ると、力強く引っ張られた。

そしてそのまま、父様の前に座らされる。

…何今の流れるような動き!

超カッコいいんだけど!

うわぁ、僕も大きくなったらこんな男になって、さらっと好きな女の子にやってみたい!!


…おや?

僕、女の子が恋愛対象なのか…?

なんの違和感もなく、そう感じた事に驚いた。

もしかして、体と魂が上手く馴染んだのかもしれない。

だから、こうやって思えるのかもしれない。


…あぁ、僕、『ユージェリス』になったんだなぁ…


「ユージェリス?どうした?」

「…なんでもないよ、父様。ほら、一緒に帰ろ!お腹空いてきた!」

「そうだな。…そうだ、ユージェリス。今回の件は、本当にありがとう。お前のお陰で、領民達を守る事が出来た。お前は自慢の息子だよ」


父様が頭を撫でてくれる。

…嬉しい、照れ臭い、擽ったい。

『自慢の息子』という言葉に、僕の心の中は歓喜でいっぱいになった。


「そりゃあ、だって僕、父様の息子だからね!これくらい当然だよ!」


にしし、といつもと違う笑い方が出る。

気取っていない、年相応の笑顔だった。


僕の名前は、ユージェリス=アイゼンファルド。

この世界で生きる、父様の自慢の息子の6歳です!

これにて1章終了です!

次からは2章になります(・∀・)

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