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じいちゃん

遅くなりましたぁ!!

なんだろう、ここ。


「ほーら、ユージェ、これ美味しいよぉ?おっちゃーん、俺おかわりぃー」

「はいよぉ!お、兄さん、そいつぁうちの畑で取れたんですよぉ、美味いでしょー?」

「お兄さんお兄さん、うちの肉料理も食べてみて下さいな!柔らかいよぉ!」

「あ、はい、いただきます…」


至れり尽くせり、気を使わない食事。

みんなが僕を普通に扱う、不思議な感覚。

何故こんな事になったかというと、朝方迎えに来たマックリー義兄さんが発端だった。

朝ご飯を食べ、ナタリー達に別れを告げてウィンザー伯爵領へ向かう途中、マックリー義兄さんが突然告げた一言。


「あ、ユージェ、ジーン君、先に言っておくけど、今うちの領地は領民が30人くらいしかいないからぁ」

「「すっくな」」

「領地面積はスタンリッジと変わらないくらいだけどねぇ。元々80人弱しかいなくて、半数以上は諜報員として各地に散ってんのぉ。残ってるのは諜報員としてまだ幼い子供か、引退した年寄りや怪我人、後は嫁いできた諜報出来ない人くらいだねぇ」

「えっと…少数精鋭?」

「そんな感じぃ。んで、まぁ、残ってる人達はユージェの事を独自に調べたり、俺やレオに聞いたりして色々知ってると思うから、驚かないでねぇ?」

「待って、何を知ってるの?!」

「まぁまぁ、着いてからのお楽しみだよぉ」


ケタケタと笑うマックリー義兄さん。

そのレオと同じ笑い方、超不安を煽る…!!

ジーンなんてすっごい嫌そうな顔してるし。

そんな不安を抱きつつ、夕方頃にウィンザー伯爵領へと辿り着いた。

詰所を過ぎて、街の中に入ると…


「「「「いらっしゃーい!!」」」」


謎の歓迎と共に花びらが降ってきた。

ドウイウコト?


「…マックリー義兄さん?」

「僕がユージェ達を迎えに行った事で来る事を察知したみたいだねぇ」

「…とても歓迎ムード満載ですね…なんか、この国内周りでは初めてです」

「確かに…」


圧倒されながらもノワール達から降りると、お爺さんが僕らの前にやってきた。

…気のせいかな、どことなくレオやマックリー義兄さんと似てるような…


「ほっほっほ、初めまして愛し子様。ウィンザー伯爵家前当主、パウリー=ウィンザーと申します。いつもうちの馬鹿孫共がお世話になっているようで」


レオのお祖父さーん?!?!?!

あ、そうだわ、ハロルド様に似てるんだわ。

目元とか超そっくり。


「初めまして、ユージェリス=アイゼンファルドと申します。こっちは従者のジーン。私の方がレオにお世話になったりしてますので、お気になさらず」

「馬鹿孫って酷くなーい?じいちゃぁん」

「うるさい、チャランポラン男めぇ。ちゃんと仕事はしてきたのか?」

「イテテテ、してきたよぉ」


…ハロルド様然り、レオ然り、マックリー義兄さん然り。

全員なんというか飄々としてて、怪しい雰囲気のある笑顔を浮かべてた人達だったけども、パウリー様は結構好好爺感がある。

今も平民っぽい服着てるし、近所の仲のいいお爺ちゃんって感じ?


「あ、ユージェ、騙されないようにねぇ?うちのじいちゃん、こんな見た目して親父殿よりもやり手の狸爺だったんだからぁ」

「え」

「ほっほっほ、失礼な奴だなぁ。儂のどこが狸爺じゃと?」

「狐爺の方が良かったかなぁ?その笑顔、無駄に優しすぎて逆に怖ぁーい」


怖いという割にはマックリー義兄さんも表情がいつも通りですね?!

えぇー…何、この人も所謂食わせ者ってやつなの…?

というかこのやり取りを領民の人達が普通に受け入れてるのがなんか怖い。

いや、悪い気配とかはしないけどね?

単純に諜報の家系って笑顔の裏で色々やる人も多いだろうから、凄いなぁって感じなだけで。

にしてもみんな普通に平民服だな、多少の違和感があるけど。

なんだろ、この違和感。


「失礼、ユージェリス君とお呼びしても?儂の事もパウリーで構わんので」

「あ、はい、勿論」

「ありがとう。ユージェリス君、君の疑問についてだが、愛し子様なので特別にお教えしよう」

「え?顔に出てました?」

「まぁの。うちの領民…まぁほぼ親戚じゃが、半数以上は元貴族なのだよ」

「へ?」

「諜報先がどこになるかはわからんからなぁ。貴族でも平民として住み、平民でも貴族のマナーを覚えてもらう。それがこのウィンザー伯爵領。たまに家族構成すら変える事があるぞぉ?」


…成る程、それもそうか。

すげぇな、ウィンザー伯爵領。


「…という事は、今も変わってる人がいる?」

「その通り、今の儂はこの子のジジイじゃなぁ」


そう言ってパウリーさんは成人前くらいの女の子を手招きで呼び、肩を抱きながら微笑んだ。

女の子はにっこり笑ってからお辞儀をしてくれる。

うん、仲の良いお祖父ちゃんと孫娘だわ、これは。

見た目が似てるわけじゃないのに凄いなぁ。


「まぁこれは王家や大臣レベルの人間じゃなきゃ知らん事じゃがなぁ」

「それ、僕が知ってもいいんですか…?」

「愛し子様が知ったら拙い事などありゃせんよぉ」


…なんか、似たような事を似たような顔の人に言われたような…

あれ?急に裏のありそうなニヤニヤ笑いになった…?

…まぁ、うん、気のせい、かな?


「じいちゃん、こんなとこじゃなんだし、飯行こうよぉ」

「おぉ、そうだなぁ。こちらへどうぞ、ユージェリス君、ジーン君」

「「はぁ…」」


こうして大きな大衆食堂へと連れて行かれ、残ってた領民の皆さんと宴会が始まった。

うん、あれだ、お正月の親戚の集まりみたいな賑やかさ。

まぁ本当にここの人達殆ど親戚なんだけども。


「飲んどるか?」

「はい、まぁ…なんというか、皆さんが普通に接して下さるので拍子抜けしてるだけというか…」

「そりゃそうじゃ、それが君の望みだろう?」

「へ?」

「レオから聞いていた話では、君は普通の男の子だと。あまり特別扱いし過ぎないでくれと言われておるかならぁ」

「レオ…あいつ…」

「我らにとっても愛し子様というものは尊敬すべき特異なお方だ。だが我が一族は君を崇拝する事はないから安心しなさい」

「え?」

「我らは影だ、この国の情報をほぼ知っていると言っても過言ではない。歴代の愛し子様方が本当はどのような方々だったのかなんて…社交界デビュー前から教育の一環として把握しておるわ」

「…だから、レオ、初対面から変わらない態度なんだ…」

「世間一般に伝わる愛し子様とは、精霊様と同一とされるからのぅ」


そう言って微笑んで僕の頭を撫でるパウリーさん。

すげぇな、流石レオのお祖父ちゃんだ。

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