場所の意味《side ナタリー》
今回糖度ヤバめです。
書きながら砂糖を吐きました。
なんでここまで甘くなった…?
興味ない方はサラッと1番最後の方だけでいいと思います。
またはブラウザバック(笑)
ゆっくりと語らう事、1刻。
こんなにユージェ君と2人きりでゆったりするのは初めてかもしれません。
心地いい雰囲気は安心感が違います。
それにしても…綺麗な指輪です。
ユージェ君の瞳と同じ色の石と、私の瞳の色と同じ色の色が1つずつ付いた、比較的シンプルな指輪。
普段使いも出来ますし、パーティーの時なんかは重ね付けも出来ますね。
確かにお揃いの指輪は流行ってるもので、平民だけでなく貴族間でも仲の良い方々は付けてると聞きます。
まさかいただけるとは思いませんでしたけど…
それにしても、私、ユージェ君から貰ってばかりじゃありません?
普段のお礼…には程遠いですけど、昨日簡単なお昼作ったくらいで、何かあげた記憶がほぼありません。
誕生日は除きます、それはちゃんと連名だとしてもあげてますもの。
初対面でブローチには付与をいただいて、今までは定期的にお菓子やご飯を作ってもらって、この間は今日も付けてるリボンとヘアピンをいただいて…
…貰って、ばかりですね…
「ナタリー?どうかした?」
「いいえ、なんでもないですよ。紅茶美味しいですね」
「そうだね、結構僕好みだ。セバスチャンに少し分けて貰おうかなぁ」
…ユージェ君の好みは、そこそこ把握してます。
コーヒーよりも紅茶派。
紅茶の中でも果物のフレーバーティーが好み。
甘過ぎるクリームよりもさっぱりしたゼリー。
お肉もお魚も好きだけど、やっぱり男の子だからかお肉の方が食べてる時に嬉しそう。
美しいものよりも可愛いもの。
たまに少女趣味なところもあり。
やはりそこは前世が関係してるのでしょうか?
…というか、私もよく見てますね…
ユージェ君は、与えられるよりも与える方が好きみたいです。
というより、与えられる事が普通だと思ってない節があります。
自己犠牲型…なんて言い方、物騒ですけど当て嵌まる。
『自分がやれば、相手が喜ぶ』という考えが根本にあるんでしょうね。
逆もありますのに、それが考えにない。
多分このままだと、ユージェ君は私に貢ぎまくる気がします。
でもそれだと、流石に不公平です。
だって、私だってユージェ君に喜んで貰いたいんだもの。
こういう時、本でヒロインは相手に何をしていたかしら?
この前読んだ恋愛小説では…
「…あ」
「ん?」
「いえ、あ、その…」
…思い出して、つい声が出てしまいました。
そう、あれでは確か、ヒロインが…き、き…
「ナタリー、顔赤いよ?体調悪い?」
「い、いえ!なんでもないんです!」
…で、でも、絶対ユージェ君は喜んでくれると思います…が、私の心臓が持つ気がしない。
そ、それに初めてが私からっていうのもなんだか恥ずかしいです!!
ほ、頬にするくらいなら…私にも出来る、かしら…?
…無理だわ、ユージェ君の顔が至近距離にあるとか…
なら、頬と口以外?
…思い浮かぶのは、お母様やお父様が幼い頃にして下さったおやすみのキス。
あれは、頬かおでこでした。
そして、お母様が眠っている間にお父様が愛おしそうにしていた、頭へのキス。
お、おでこなら、目線の先は髪だし、なんとかなる…かも…?
いや、髪の方が難易度低そうですかね?
…お父様のあの幸せそうな笑顔。
あれは、ユージェ君が私に向ける笑顔と、どこか似ています。
私がその笑顔が出来ているかはわかりませんけど…同じものを、返したい。
「…ユージェ君、ブーツの靴紐、解けかかってますよ?」
「あ、本当だ。ありがと」
そう言って、頭を下げて靴紐を直すユージェ君。
チャンスは1度きり…!!
バレて失敗したら揶揄われて終わりです!!
…ちぅ。
「…へぁっ?」
…比較的強めに押しつけたので、わかったようです。
すぐさま離れると、とても間抜けな顔をしたユージェ君が変な声と共に顔をゆっくり上げました。
「…ナタリー?」
「…はい?」
「…今、なんか…した?」
「…貰ってばかりだと、ユージェ君が不公平ですから。気持ちを…伝えようと、思いまして…ですね…」
…なんか、恥ずかしい…!!
揶揄われるわけでもなく、ただ聞かれるだけって物凄く恥ずかしい…!!
目線があらぬ方向へ行ってしまうのは最早致し方なし、です!!
「…意味、わかって…やった?」
「へ?意味、ですか?あの、お父様がお母様へしていたので…それを真似た、と言いますか…」
「…キスする場所にはね、それぞれに意味があるんだよ」
「そ、そうなんですの?!あ、でも確かそんな内容を何かの本で読んだような…?!」
「そう、だから…」
そう区切って、ユージェ君が私の左手首を掴み、ご自分の方へと引き寄せました。
何をするのかと思えば…そのまま、手首へ、キス。
「…ここ意味は、宿題ね。ナタリー、ありがとう」
「…へぁっ…」
そう言ってユージェ君が嬉しそうに、愛おしそうに笑うから。
つい私も、変な声が出てしまって。
そしてそこからの記憶は限界が来たのか曖昧になってしまいました。
気絶しなかっただけマシでしょうか。
お父様やお姉様なら瞬殺でしょうね。
あんまり何を話したか覚えていませんけど、終始嬉しそうなユージェ君と食料品の買い物をし、屋敷に帰って作っていただいた絶品のシチューを食べ、おやすみなさいの挨拶をして部屋に戻ってから頭が爆発しました。
枕に向かって叫んだので、誰にも聞こえてない事を祈ります。
フラフラした頭で本棚を探し、半刻ほどで目的の本を見つけました。
「…キス…キス…キスの場所…キスの…」
…頭へのキスは、『たまらなく相手を愛しいと思う気持ち、相手に近付きたい気持ち、思慕』。
あぁ、成る程…これは、確かに恥ずかしい。
ですが、まぁ…間違ってはいませんね。
それを思うとお父様、本当にお母様がお好きなのね…
「頬、は…まぁ、親愛ね。そうよね、それが挨拶として普通に使われている国もあるそうですから。なら、手首は…」
手首は…
「…『相手への真剣でストレートな愛情、欲望』…よく、ぼう…?」
よくぼう…ヨクボウ…欲、望…?
「…ファっ?!?!」
この後、どうやってベッドに入ったか記憶にありません。
気付けば朝で、全く寝た気がしませんでした…
「ナタリー?おはよう、どうかした?」
「お、おはようございますぅ?!」
食堂へ向かう途中で、突然後ろから声をかけられました。
悩みの原因のくせにぃ…!!ぎりぃ…!!
「え、本当にどうかした?そんな睨まなくても…」
「…ユージェ君の、お馬鹿さん!」
「ふぇ?!何が?!」
「変な宿題出さないで下さいましっ!!」
「…あぁ、あー、それか。え、まさかそれで寝てないの?」
「多分寝ましたわっ!!」
「多分て。そんなに悩ませるつもりはなかったんだけど…ごめんね?」
うっ…そんなお散歩に連れてってもらえなかったわんちゃんみたいな表情しないで下さいまし…!!
心なしか垂れ下がった尻尾と、ぺたんとしたお耳が見えますわ…!!
どちらかというとユージェ君は猫っぽいと思ってましたのに…!!
「…か、構いませんわ。無知だった私も悪いのです…」
「まぁ別にナタリーに今すぐ何かしたいってわけじゃないんだけどね。なんかしてやられた気がしたから、やり返しちゃった」
「…な、なら、今でしたら、どこにするんですか…?」
「え?していいの?」
「いや!しなくていいんですけど!!ただ、普段ならどこにしたいのかなぁと…」
「んー、そうだなぁ…口以外で言うなら、まぁ、髪か…あぁ、やっぱり瞼かな?」
「ま、瞼ですか?どういう意味ありましたっけ…覚えが…」
「あはは、後でまた調べてみてよー」
「うぅ…」
頭と頬と手首しか見た記憶がないです…
「何何ぃ?朝からナタちゃんとラブラブだねぇ、お兄さんも混ぜてくれないかなぁ?」
「「?!」」
突然した声に驚き、振り返る私達。
ちなみにユージェ君は声がした瞬間に私を抱きしめてくれていました。
「…ま、マックリー様?」
「ごっきげんよーう、愛し子様ぁ。ちゃらんぽらんなウィンザー伯爵家長男にして、次期スタンリッジ伯爵家当主、マックリー=スタンリッジですよーう」
…まさかのお義兄様登場ですか。
知ってる人だとわかったからか、ユージェ君が私を離してくれました。
あぁ、びっくりした。
「まさか察知スキルに反応しないとは…」
「コツがあるんですよぉ、これも諜報には欠かせないスキルですからぁ。それに愛し子様って別に常時100%周りに気を配ってるわけじゃないでしょう?そりゃきっと凄いレベルでしょうけど、本気で周りに向き合わないと蟻や羽虫にまでは気を配らない。ならば気配をそっちに近付ければ愛し子様とはいえ気付きにくいって事ですねぇ。まぁ後は殺気さえ出さなければバレません!殺気があると危機察知スキルとかに引っかかりますからねぇ」
「成る程、勉強になりました。レオがたまに急に現れるのはそのスキルがあるからなんですね」
「そういう事ですよぉ。ウィンザー家はみーんな出来ますからぁ」
…凄い、ユージェ君まで欺けるとは。
あら?というかお姉様とは合流出来たから帰ってこられたのかしら?
「そういえば、ナタちゃんと婚約したんですよねぇ。って事は愛し子様って俺の未来の義弟って事か!『ユージェ』って呼んでもいい?敬語使わなくていい?」
「構いませんよ。僕も『マックリーさん』って呼びますね」
「『マックリー義兄さん』でもいいよぉ」
「はいはい、マックリー義兄さん」
呆れたように笑うユージェ君。
あら、これは本当に嬉しそうですね。
お義兄様の適当さ加減が堪らないんでしょう。
あんまりこうやって馴れ馴れしくする人もいませんし。
まぁちょっとこの組み合わせ、不安になりますけどね。
…なんででしょう?