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マイペースに進むユージェリス

「やだ、ローグナー、ちょっとムキムキ…」

「え、なんで引いてんだよ」


だぁってぇ…なんていうか、男が憧れるムキムキかもしれないけど、僕ちょっとムキムキ苦手で…

多分前世から好きじゃなかったと思う。

ベティ様は好きだろうけど。

ちなみに騎士団の人とかはあんまりムキムキ過ぎると鎧が入らなくなるからか、意外と僕好みの細マッチョが多い。

でも狩人ってこう、荷運びの仕事とかもあるからかムキムキマッチョの漢らしい人が多かったりもして…

まさかローグナーまでそうなるとは思ってなかったんだ…


「ごめん、僕の好みじゃないの…」

「え、なんで俺振られたみたいになってんの?」

「僕達、いいお友達でいましょうね…」

「だからなんで?俺なんも言ってねぇのに」

「ローグナーが今までと変わらず僕の事を『ユズキ』として扱ってくれるのは嬉しいんだけど…」

「マジでなんでそんなにいい女みたいな雰囲気出してんの?しなっとするな、しなっと。伏目がちに悲しげな雰囲気出されるとマジで女に見えるからやめて」

「ちなみに僕の女装にロジェスは落ちかけたよ!」

「色々と情報が整理しきれねぇな?!」


キレられちゃった、いやん。

そして商店街の皆様やローグナーと一緒にいたと思われる狩人のお仲間さん達が、僕達のやり取りをめちゃくちゃ呆然としながら見ていた。


「まぁ冗談はさておき、意外とローグナーは僕が普通の状態でも物怖じしないね?」

「あー、たまにロジェスから『レター』もらって色々聞いてたしな。それにお前が畏まるなって言ったんだろうが」

「そういやそうだわ、あはは」

「お、おい、ローグナー、おま、愛し子様に向かって『お前』って…!」


あ、ローグナーのお仲間さんが顔面蒼白でローグナーに詰め寄ってる。


「いや、まぁ確かに愛し子様なんだけど…」

「ユージェリス君、お友達なの?」


少し不思議そうに僕に尋ねるメロディさん。

おっと、放置しちゃった、すみません。


「えぇ、友人のローグナーです。ローグナー、こちらここの領主であるスタンリッジ伯爵夫人のメロディアス様だよ。僕の義理の母になる方なんだ」

「…はぁ?え、何、お前婚約したの?」

「ロジェスから聞いてないの?」

「最後の『レター』は半年くらい前だからな…おめでとう。えっと、初めまして、ローグナーって言います」

「うふふ、初めまして。ユージェリス君は交友関係が広いのねぇ。狩人さんにもいるなんて」

「学院時代の同級生なんですよ。よく一緒に馬鹿やってました」

「あら?ユージェリス君、学院通ってなかったんじゃ?」

「身分隠して変装して通ってましたよ、平民科に」

「あらあら、面白そうねぇ」


コロコロと笑うメロディさん。

反対にローグナー以外の周りの人達は『え?愛し子様が平民科…?嘘だろ…?』みたいな感じで騒然としていた。


「ローグナー、ここへは仕事で?」

「あぁ、なんでも狼の魔物が3匹、近くの領地からこっちに入っちまったらしいんだ。だから調査のためにな」

「あら、まだそんな報告来てないと思うけど…怖いわねぇ」


不安そうに眉を下げるメロディさん。

確かに朝の時点ではセバスチャンからそういう話はなかったな…


「ついさっきなんすよ、目撃情報があったのが。んでちょうど王都に向かってた俺達が近くにいたんで」

「あらあら…態々ありがとうね、うちの領民達に何かあったら困るもの」

「ローグナー、魔物の階級は?」

「自然級だよ、じゃなきゃ俺達もこんな少人数で来ねぇって」


確かに、ローグナーは5人くらいのグループで来てるみたいだ。

3匹もいるんじゃちょっと足りないよな、しかも狼はすばしっこくて大変らしいし。

…僕的には全く問題ないけども。

にしても、魔物かぁ…


「討伐の依頼は受けてないの?」

「まだ。調査が先」

「それ、僕が片付けてもいい?ローグナー、怒られたりしない?」

「ユズキが?そりゃ別に怒られないけど…」

「僕、午後から婚約者とデートなんだよ。僕が一緒なら勿論安全だけど、怖がらせたくないだろ?」

「…出たよ、ユズキの女に甘い悪癖。というか婚約者にベタ惚れかよ」

「超可愛いから。惚れないでね?」

「友達の婚約者に惚れるとかそんな馬鹿な奴いねぇだろ」


…いないとも言い切れない、ふふふ。

まぁ陛下の場合は友達じゃないけど。

さっさと指を鳴らしてジーンを呼び出す。

多分10分くらいで来てくれるでしょ。


「メロディさん、僕ちょっと行ってきますから、ジーンと一緒に少しだけ待っててくれますか?」

「あら、ジーン君呼んでくれたの?1人でも待てるのに」

「流石に放置はしませんよ。すぐに戻りますから、そしたらデートの続きしましょう。何か食べたい物があれば決めておいて下さいね。後で僕と買いに行きましょう」

「うふふ、待ってるわ。あらやだ、私が『待ってる』だなんて。今までは旦那様とデートしても待たせてばかりだったのに…寝る心配しないで出来るデートって楽しいわねぇ。今度旦那様と遠出してみようかしら」

「是非そうして下さい」


幸せそうに笑うメロディさん。

スタンリッジ伯の事、本当に好きなんだなぁ。


「なぁ、ユズキ」

「なんだい?」

「俺も付いてっていい?」

「ローグナーも?」

「1回ユズキの戦いを間近でみたいんだよな。学院時代は手ぇ抜いてたみたいだし、ほら、卒院式の時はどっか行っちゃったろ?」

「あぁ、流石にあんなところじゃ戦えないからねぇ。王城に魔物の血を降らせたらベティ様に怒られそうだわ」

「王国最強の愛し子様の力、見れる機会なんてねぇからな」

「別にいいけど…数年前、騎士団の人は僕の戦いにドン引きしてたよ?大丈夫?父様でさえ初めて狩りに行った時は絶句してたし」

「ユズキの父親って…師長様…?それは…なんというか、ちょっと不安になるな。ちゃんと覚悟して見るわ」

「そうしてよ」


ローグナーに避けられたら、寂しいからねぇ。

そして5分後、ジーンが走って来てくれた。

意外と早かったな。


「ごめんね、忙しいところ」

「いえ、俺の最優先事項はユージェ様ですし。ちょうど追いかけようかと思ってたんですよ、挑んできた私兵の人達倒し終わったし」

「…早くね?」

「以前ユージェ様が仰ってた『ばとるろわいやる』ってやつを採用して、すぐに片付きました。ちゃんとユージェ様が作って下さった味なしポーション渡してから来たんで多分生きてますよ」


人様ん家の私兵に何してんだよ。

ほら、メロディさん困った顔してるじゃないか。


「うちの子達、弱いのかしら…」

「いや、僕が鍛えてるからちょっとジーンが化け物じみて来てるだけかと…」

「化け物って酷いですね?!」

「僕の方が化け物だから大丈夫だよ」

「ん?!んー…なんか釈然としませんけど、まぁいいです。ユージェ様は化け物じゃなくて普通の人なんですから、あんまり自分でそういう事言わない方がいいですよ」

「はぁーい」


ジーンってば、優しいなぁ。


「話終わったか?」

「うん、じゃあ行こうか」

「え?どこ探す気だよ」

「領地内を『サーチ』で探索して、見つけたら『ワープ』で近付いて…あ、まだ領地内探索してないから使えないか。とりあえず場所によっては足で移動かな?馬取ってきてもいいけど」

「…まぁ、愛し子様なら出来る…のか?俺、魔法はあんまり上手くないからちょっとよくわかんねぇけど…」


ローグナー、君の仲間が後ろで全力で横に首振ってるよ。

まぁ領地全部を『エリア』して『サーチ』するなんて、普通の人ならやろうとも思わないからね。


こうして僕は困惑する人々を華麗にスルーして、魔法で魔物を探し出し、ローグナーを連れて空を飛び、瞬殺して帰ってきました。

まさかの所要半刻。

商店街に戻ると化け物見た時の顔されたわ。

やっぱ僕って化け物?

ふはははは。


「…お帰りなさいませ?それともなんかありましたか?」


のほほんとメロディさんと木陰でジュースを飲んでいたジーンが、小首を傾げながら尋ねてきた。

意外と仲良しだな、2人とも。


「いや、終わったから帰ってきたんだけど」

「…まぁ、そんな気はしてましたよ。彼の顔を見たら」


ジーンが少し同情した目線を向けた先にいたのは、真顔になって何も話さなくなったローグナーだった。

狼の魔物を見つけるまでは普通に今までにあった事とか話したりして普通だったんだけど、僕の一太刀で3匹倒してからはこの状態になっちゃったんだよねぇ…


「ユズキ…」

「あ、喋った。どうかした?」

「お前…あれじゃ凄すぎて参考にならねぇよ…」


崩れ落ちるローグナー。

仲間の人達はそんなローグナーの周りで慌てている。

そんな集団に近付いていくジーン。


「…君、えっと、ローグナーだっけ?ユージェ様は多分、君に倒し方を見せるつもりで連れてったわけじゃないからそれは諦めた方がいいぞ。ただ久々に会えた友達とちょっと出かけた程度の認識だ」

「いや、でも3匹まとめて一太刀だなんて思わないじゃないっすか…」

「あー…それはユージェ様が悪いな」

「ですよね…」

「だってメロディさん待たせてるし、この後ナタリーとデートなんだよ?!」

「「あー…ソウデスカ…」」


なんだよぅ、僕が悪いってのか。

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