赤面
消してしまって、頑張って書き直し…
遅くなってすみませんでした_:(´ཀ`」 ∠):
親愛なるナタリー
お元気ですか?僕は元気です。
ちなみに今はサグラディウス侯爵領に来ています。
先日は酷い目に遭いました、まさかチェルシー嬢に愛人にしてくれと懇願されるとは…
あ、勿論断ったよ!
だって僕にはナタリーがいるもん、それはもうバッサリとお断りしましたとも!
でもチェルシー嬢には少し同情するところもあったので、多少のお節介はしちゃった。
また今度会った時に詳しく話すね。
巡り始めて2週間くらいだけど、ただただ愛し子って神聖化され過ぎだよなぁって感じてます。
こうやって長い間人の前で愛し子として立ってるけど、めちゃくちゃ疲れるわ。
変装してジャルネまで行った1年半くらいの方がよっぽど楽だったと実感。
僕が少しでも機嫌を損ねるとこの世の終わりのようだって顔されるんだもん。
基本、僕、あんまり怒らないんだけどもねぇ。
なので出来るだけこっちから歩み寄ったりしてみてるけど、これが中々上手くいかない。
今のサグラディウス侯爵領も、僕が通るだけで土下座したり拝んだりする人もいてさ…
そう考えると、比較的王都の人達って僕に慣れてたんだなと思った。
だって前にやったパレードの時とか、僕に向かってキャーキャー言ってたりしてたし。
王都から離れれば離れただけ、神聖化されてる気がしてならない。
耐性がないから?
あと数日でスタンリッジ伯爵領に行けそうだけど、もう神経すり減り過ぎて疲れちゃったよ。
エドワーズ様とか凄いなぁ、僕はストレス溜まりそうなのに。
そうそう、ハグとキスにはストレス軽減する効果があるらしいね?
…期待してます♡
ではまた、ユージェリスより。
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親愛なるユージェリス様
ご機嫌よう、ユージェ君。
お勤めの日々、お疲れ様です。
チェルシー様については後程詳しく教えていただきますからね?
絶対ですよ?
内容によっては怒りますからね?
そしてやはり愛し子様とはこの国で尊いものだと教え込まれていますから、お会いした事のない人達にとっては精霊様と同格の存在なのでしょうね。
私やルーファス君、レオ君、ニコラちゃんは社交界デビューからのお付き合いですし、ユージェ君の人となりを理解しているつもりですので、そう考えてみると同じく違和感を感じます。
普通の男の子ですのに。
…いえ、普通かと問えばなんとも言えないんですけども。
もうすぐお会い出来ると思うと、とても嬉しいです。
ストレス軽減については…その、善処致します。
だからユージェ君からは突然やらないで下さいませね?!
最後に、ユージェ君達の道中が辛くないものである事を祈ってます。
領地に近付いたらご連絡下さい。
待ってます、ナタリーより。
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「…そのニヤケ切ったツラ、なんとかなりません?」
「酷くない?」
愛し子道中〜ナタリーからの手紙を添えて〜
…の気分で手紙を読み返していたら、ジーンに呆れたため息つかれた。
酷い、ぐすん。
「可愛い彼女からの手紙だよ?ニヤケもするって」
「ユージェ様の顔面でニヤケてると、とてつもなく怪しいですよ」
「酷くない?」
ジーン、最近辛辣。
昔は大型犬みたいに目をキラキラさせてたのに…
扱いが雑になったな、嫌いじゃないけど。
「ほら、もうすぐ着きますよ、スタンリッジ伯爵領」
「よーし、ナタリーに会いに行くぞー!」
「全く、この方は…」
またもやため息をつくジーンは無視して、意気揚々と目の前に見えたスタンリッジ伯爵領へ向かう。
ここ2週間ちょっと、マジで疲れた!
みんなが気を使ってくるから、こっちも愛し子の仮面貼り付けて対応しなきゃいけなかったりするし!
「疲れた」なんて言おうものなら、近くでそれを聞いた領民達が顔色変えて偉い人呼んでこようとするしさ。
なんだかんだこの2週間、どこの領地の宿屋にも泊まらなかった。
野宿か王都の屋敷に帰るかの、2択。
ほぼ野宿だな、うん。
だって泊まらせてくれって言ったら、大体が騒ぎになるんだもん。
領主館はどうでしょうかって勧められても、ねぇ?
何回か野宿用の燃料補給の為に王都に戻って泊まったりもした。
父様に愚痴ったりしたら、だろうなぁって顔された。
「今回は愛し子様として頑張ると決めたのだから、もう少し頑張ってみなさい。またいつでも相談にのるよ」
そう言って父様は、久しぶりに僕の頭を撫でた後、美しく笑ってくれた。
あぁん、父様ってば歳を重ねてもイケメンなんだから!!
僕の中の乙女な部分がキュンキュンした、なんちゃって。
「…おや、ユージェ様、あれ、ナタリー様では?」
「へ?」
父様の事思い出してたら、あらぬ方向見てたわ。
少し離れた衛兵所のところを見ると、確かに綺麗目な紺のワンピースを着たナタリーが立っていた。
ナタリーがそんな所に立っているのが不思議で仕方がないのか、結構な人数がナタリーの近くに集まっていた。
僕はノワールを走らせて、ナタリーの所へ向かう。
「ナタリー!」
「ユージェ君、お疲れ様です。ようこそ、スタンリッジ伯爵領へ」
優しく微笑んでくれるナタリー。
あぁ、これだけですでに癒されるよ…
「ジーンさんもいらっしゃいませ。ユージェ君のお守り、ご苦労様です」
「ご無沙汰しております、ナタリー様。いえ、辛くてもそれが仕事ですので」
「え、何、僕、手がかかる子扱い?」
「手はかかりませんけど…突拍子もない事をしたりしますから、ユージェ君って」
「酷くない?」
「変な事を思い付いたりもしますし」
「酷くない?」
なんなの、僕ってどんな認識なの。
そして僕達が仲良さそうに話してるのを見て、領民達が騒ついている。
聞こえる声としては「本当に愛し子様なのか?」「ナタリーお嬢様が愛し子様とお友達って嘘だと思ってた…」みたいな感じだね。
いやぁ、婚約者なんですけどね。
「ナタリー、迎えに来てくれたみたいだけど、まずはどこに行くの?」
「もうすぐお昼ですから、我が家でご飯はいかがでしょうか?ユージェ君と比べると美味しくないでしょうけど…その、私が、作ったものがありますので…」
「…え?ナタリーが?作ってくれたの?僕に?」
「か、簡単なものですよ?ユージェ君みたいに凝ったものは無理でしたけど、サンドウィッチとか簡単なサラダでしたりとか…!」
「…ヤバイ」
「え?」
「…めちゃくちゃ嬉しい、かも。想定外で、かなりキュンときた」
あ、ヤバイ、顔がちょっと熱い。
咄嗟に右手で緩んだ口元を覆い隠す。
そんな僕を見て、ナタリーはポカンと口を開けていた。
「…何、どうしたの、ナタリー」
「…ユージェ君の…」
「僕の?」
「ユージェ君の顔が赤いですわ!」
「え」
…まぁ、だろうなぁとは思ったけどさ。
なんか急に暑いもん。
「やりましたわ!」
「何が」
「ユージェ君を照れさせる事が出来ましたの!予想外でしたけども!」
ぴょんぴょんと両手を上げて飛び跳ねながら喜ぶナタリー。
そんなに嬉しい事かね。
ちなみにジーンはそんな僕達を見てニヨニヨしてる、この野郎。
やられっぱなしは趣味じゃないので、そんなナタリーの右腕を掴んで一気に持ち上げる。
勿論痛くないように魔法で補助しながらね。
「きゃっ…!」
「さて、我が愛しの婚約者殿。お屋敷まで案内してくれるかな?」
ノワールの上でグイッとナタリーの腰を引き寄せて、耳元で訊ねる。
小さな声でもなかったので、領民達にも聞こえたようだった。
彼方此方で悲鳴が聞こえるなぁ。
そしてナタリーはというと、口をパクパクさせて、真っ赤な顔で固まっていた。
ふふん、してやったり。
「…ゆ、ユージェ君の、意地悪っ…!」
「ふふふ、ごめーんね?」
照れ隠しだと思って、許して下さいな。