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お節介

慣れた天井を見上げつつ、状況を確認する。

…本当に送ってもらったみたいだな。

外は暗いから、あれからまた寝たみたいだ。

ちょっとお腹空いたな…

ベッドから降りて、扉へ向かう。

廊下に出たら…あれ、リリーいないや。

とりあえずお腹空いたから食堂行こう。

誰もいなかったら厨房借りて夕飯作るか。


「お兄様?!」


呼ばれたので振り返ると、声の持ち主はやっぱりフローネだった。


「あぁ、フローネ。今何刻かな?あれからどれくらい経った?」

「…ええっと…ですわ…」

「ん?」

「ですから、王妃様がお兄様を送って下さった日から、5日経ってますわ」


…は?

マジで?


「…冗談?」

「いいえ、5日目の闇の6刻ですわ。これから夕飯に向かうところでしたの」

「…僕の分はないよね。わかった、このまま厨房行く。ねぇ、リリー知らない?」

「リリーは領地に行ってますわ。ご家族がいるそうで、お父様が帰りなさいとおっしゃっていたの」

「そっか、だから誰もいなかったのか」

「そうですの。でも代わりにレリックかシャーリーがいると思っていましたのに…では、食堂にいるお母様達にはお兄様が目を覚ました事をお伝えしておきますね」

「よろしく。夕飯どうするか決まったらそっちに行くから」


フローネと別れて、厨房へと目的地を変更する。

伝染病の件をフローネに聞いてもわかるかどうか微妙だったから、後で誰か別の人に聞こう。

厨房に着くと、少し慌ただしかった。

そりゃそうか、夕飯の準備してるんだもんな。

でもなんかいつもより人が少ない?

あ、ドリーがいた。


「ドリー、奥の場所借りるね」

「あ、はい、使ってないんでどうぞー…って、ユージェリス様?!」


最初は気付かなかったみたいだけど、振り返って僕を見ると絶叫した。

その声のせいでみんながこっちを見てるじゃないか。

あ、セイルが走ってくる。


「ユージェリス様!お体大丈夫なんすか?!」

「うん、すっかり元気ー」

「どうしてこちらに?」

「僕の夕飯ないと思ったから、自分で作ろうと思って。奥借りるねー」

「え、ユージェリス様が作るなら見ていたい…」

「セイルさん、ダメですよ!まだメイン出来てないじゃないですか!僕が側で見てるんで、セイルさんは戻って下さい!」

「そんなぁ!!!せっかくの機会がぁ!!!」


ドリーに背中を押されて、元いた場所に戻されるセイル。

あーあ、威厳ないなぁ。

しばらくすると、ドリーが戻ってきた。


「お待たせしました、ユージェリス様。何を用意します?」

「うーんと、ライス、ベーコン、チーズ、玉ねぎ、牛乳、バター、にんにく、ブイヨン…かな?」

「中々多いですね、何を作るんですか?」

「ミルクリゾットにしようかと思って。久しぶりのご飯だし、胃には優しくしないと」

「イ…?イってなんですか?」


おっとぉ、医学自体は発達してないから、体の中の細かい名称とかないのか!

胸とかお腹とか頭とか、大雑把なやつしかないんだね!

かるちゃーしょっく!!


「…お腹に優しいものを作ろうと思ってるんだ」

「そうですか、確かにその方が良さそうですね」


納得したようにドリーが微笑む。

食材を出してもらったので、早速作業に取り掛かる。

そういえば、ドリーって…


「ごめんね、ドリー。リリーがいた方が良かったよね」

「いえいえ、そんなお気になさら…ず…」


笑ってたドリーの顔が、見る見るうちに赤くなっていく。

あーあ、完璧に固まっちゃったぁ。


「ゆ、ゆーじぇりすさまぁ…?な、なにをいってるんでしょうねぇ…?」

「見ててバレバレだったよ、この前の1回で。でもお似合いだよねぇ、2人とも。告白しないの?」

「いやっ、そのっ、だってぼくなんかがリリーさんになんて、そんなっ…!!」

「…早く告白しないと、僕がもらっちゃうよー?」

「えぇ?!それはダメですよ!!」

「ほーら、そんだけ想ってるのに告白しないなんてねぇ?まぁ僕は今のところリリーに対して恋愛感情はないし、さっさと気持ちを伝えた方がいいと思うけどねぇ…」

「…伝えたいですけど、今は無理ですよ…リリーさんのご両親が伝染病の初期段階だったらしくて、治療は終わってもまだ看病してるんですから…」


あぁ、そうなんだ。

そっか、とりあえず病気の治療だけして、体力とかは自力でなんとかしてもらってるのか。

まぁ人数多いならその方が魔力節約出来るもんな。


「そうだねぇ、大変な時に告白したって困らせるだけかぁ…」

「というか、ユージェリス様、なんで僕に告白させたいんですか?」

「ん?だってリリー可愛いじゃん。それにそろそろいい年齢になるし、いい相手がいたらいいなって思って。僕はねぇ、リリーには幸せになってもらいたいの」


だってなんか心配なんだもん。

食べ物に釣られて悪い男に捕まるくらいなら、ドリーの方がいいし。

なんてったって、父様が許したうちの使用人だ。

悪い男ではないはず。

…まぁ、セイルみたいにちょっと問題児なのかもしれない可能性はあるけど。


「…ユージェリス様、いつの間に煮込み始めたんですか?全然調理工程見てなかったんですけど…」

「ドリーが慌ててる間にさっさと終わらせた。後はチーズと牛乳入れて煮込めば終わりー♪」


そう、ドリーがテンパってる間に下拵えを済ませて、既に煮込んでました。

下拵えって言ってもベーコンと玉ねぎ切るだけだしねぇ。

実は無詠唱もどきで火も付けてたし。

ドリーは冷や汗をかきながら僕の手元の鍋を覗き込んだ。

そのタイミングで、鍋にチーズと牛乳を入れていく僕。

おー、いい匂いだ。

さーて、仕上げは…


「お・い・し・く・なーあれっ♪」


はい、完成☆

お手軽簡単手抜きリゾット!

とりあえず味見で一口…うん、美味い!

もう一口分掬って、ドリーの口元へ持っていく。


「へ?」

「ほら、味見。一口だけだよ?」

「あ、ありがとうございます…」


少しフーフーして冷まし、ドリーはリゾットを口に運んだ。

すると一気に目を輝かせて、片手で口元を覆い隠した。


「めちゃくちゃ美味い…牛乳でリゾットなんてと思ったけど、こんなにまろやかになるなんて…」

「今日のは速攻手抜き飯だけどね。ドリー、悪いんだけどこれ片付けといてー?」


返事はない、肯定とみなそう。

ドリーが考察してる間にリゾットをお皿に入れ、スプーンと一緒にトレーの上に乗せて、その場を立ち去る。

厨房を出た辺りで、シャーリーがこちらに走ってくるのが見えた。

…なんかシャーリーらしくないな。

あ、なんかすごい焦った顔してる。


「ユージェリス様!!」

「え、僕?」

「フローネ様からお聞きして、こちらだと…!申し訳ありません、私が付かせていただいていたのですが、夕食時だったので奥様を食堂へお呼びするのに部屋を離れてしまっていて…!!」

「あぁ、いいっていいって。別に1人でも場所わかるし。元々シャーリーは母様の側にいるのが当たり前なんだから、そっち優先してよ」

「申し訳ありません…少し人手が不足しているとはいえ…」

「そうなの?」

「あぁ、ユージェリス様はお目覚めになられたばかりですものね。先日の伝染病騒動ですが、ユージェリス様のご活躍で他の領地への感染を未然に防ぐ事が出来ました。旦那様率いる魔法師団の皆様が感染者を治療し、事態は収束に向かっています。ですが伝染病を治療したのみですので、体の弱った者が多く、家族などが看病にあたっています。屋敷のメイドなどが数名看病のために里帰りをしていますので、少し手が足りず、慌ただしいのです」

「あぁ、だから厨房も人が少なく見えたのか。ちなみに父様達はもう王都へ戻ってるの?」

「魔法師団の皆様はお戻りですが、旦那様は領地でのお仕事がありますので残られています。明日にはお戻りになるとの事でしたので」

「そっかぁ」


父様、大変だなぁ。

何かお手伝い出来るといいんだけど、まだ5歳じゃ何もさせてくれないか…

あれ?僕もしかして…


「…シャーリー、僕、本当に5日も寝てたの?」

「左様にございます」

「って事は、僕、寝てる間に6歳になったの…?」

「…左様にございます」


まーじーかぁー…


「一応ユージェリス様がお目覚めになられたら誕生日会をやり直す事になっていましたので、旦那様がお戻りになる明日の夜になると…」

「あ、うん…わかった…」


僕、気付かない内に歳が変わってました。

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