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大事な友達

「やぁ、メイーナ、元気?」

「…ユズキはいつも突然。元気よ」


少し呆れたようにため息をつくメイーナ。

ティッキーディッキーのお店に行った後、ドライフルーツ買うためにメイーナのところへ寄りました。

ちなみに例の美顔器セット、すでに全部売れたそうです。

しかも発売してから2日で。

特に貼り紙とかしてないんだけど、例のお姉様が僕が預けた翌日に来店。

ある事を聞くと早速1セットご購入されて帰宅。

次の日に同僚のお姉様方が3人、鬼の形相で走り込んで買っていかれたそうだ。

それを見ていた原料仕入れの商人のお兄さんが、驚きながらも奥様へのご機嫌取りに最後の1セットをご購入。

これで今月の分が終わり。

そしてまた次の日、めちゃくちゃ機嫌のいいお兄さんが納品ないのに来て、2人にお礼をしたそうだ。

なんでもすっかり忘れていたが結婚記念日だったらしく、奥様が「覚えててくれたのね!」と喜び。

しかも物が良くて翌朝肌がぷるっぷるのふわっふわで、お兄さんにめちゃくちゃ感謝しながらそりゃあもうご機嫌だったそうで。

たまたま買った物であんなに機嫌が良くなるとは思わなかったし、奥様は可愛くなったしで最高!みたいな。

惚れ直した奥様に小さなヘアピンを1つ買って帰られたそうだ。

仲が良くて何よりです。

そんな感じで噂が噂を呼び、今では毎日問い合わせがあるらしい。

次回は来月だと言うと、みんな残念がって帰って行ったと。

…セット数増やすかな?

それでまぁ今日は様子を聞いて来た帰りで、通りかかったら空いてたから寄ってみた。

なんでかお店にいた3人のお姉さん達がこっちをチラチラと見てるけど。


「ミックス?」

「この前と同じのを同じ量ちょうだい。今回はちゃんとお金は払うから」

「わかった」

「ねぇねぇナルちゃん、その子、彼氏?」

「「え?」」


振り返ると、なんとなく見知った顔のお姉さんがニヨニヨしながら質問してきた。

そして未だに「ナル」って呼ばれてんのね。


「…友達です」

「えー?そうなのー?つまんないなぁ。でもそうよね、ナルちゃんには愛し子様がいるもんね!」


ん?


「それ、どう言う事ですか?」

「いい、ユズキ、聞かなくていい」

「君、知らないの?!ナルちゃんってば、あの愛し子様とお知り合いなのよ?!」

「はぁ…」


いや、僕だしな。

まぁ今日はユズキスタイルだから気付かれてなかったみたいだけど。

だからか、お店のお姉さん達がこっち見てるの。

…三角関係だと思われてるのかしら?

実際3人じゃないんだけど。


「ナルちゃんのために愛し子様が態々お店に会いに来るのよ?!絶対愛し子様、ナルちゃんが好きなのよ!でも侯爵子息だから、平民のナルちゃんをお嫁さんに貰う事は出来ない…だから密かに愛を育んでいるの…!!」


…お姉さん達の中で、僕とメイーナってそういう関係になってたの?

ジーンの言ってた通りだな、例えメイーナが誤解しなくても、周りの誤解が凄いや。

でもまぁぶっちゃけ、愛し子だからこそ、結婚相手に制限なんてないんだけどね。

誰を娶っても誰も文句なんか言えないわけで。


「…それくらいにしといた方が…」

「妄想は個人の自由だわ!不敬にもならないわよ、きっと!」

「いや、そうじゃなくて…」


メイーナが少し眉を下げながらも僕をチラチラ見てくる。

いや、まぁ確かに不敬だとか言わないから大丈夫だよ?


「君、愛し子様見た事ある?すっごいカッコいいのよ!キラッキラの何かと薔薇の花みたいなのがぶわっと周りに飛んでるの、あれって愛し子様効果かしら?!」

「えー、あー、どうなんでしょうねぇ?」

「あら?君、昔会った事あるわよね?確かナル君といい絡みしてくれた子じゃない?」

「…あぁ、桃飴のお姉さん!」


だから見た事あったのか!

そしてこの想像力…流石です。


「覚えててくれて嬉しいわ!はい、また飴あげる」

「わぁ、ありがとうございます」


この飴、中々美味しかったんだよね。

領地の飴屋さんといい勝負してます。

というかいつも持ってるのね、この飴。

早速いただいちゃおう、うみゃい。


「あの時はナルちゃんを男の子だと思ってたから滾ったけど、こーんな美少女だったなんて!それはそれでアリだったわね。是非またやってほしいわ」

「やる?メイーナ」

「やめて」


食い気味で断られた。


「あぁん、残念」

「ユズキ、早く払って帰って」

「酷い」

「…忙しいんじゃないの?」

「まぁ来週からね。暫くここにも来れないかも。今日買った分食べ切ったらまた来るかな。小腹空いた時とかにちょうどいいんだよねぇ」

「そう、ありがとう」


少し照れたように品物を差し出してくるメイーナ。

なんか前よりも表情出てくるようになったよねぇ、いい事だ。


「…え、もしかしてナルちゃんの本命はこの子…?!」

「嘘、あの愛し子様が振られるの…?!」

「待って、まだ希望は捨てちゃダメよ!第3の勢力が現れるかも…!!」


…相変わらず楽しそうだな、お姉さん達。


「あの、お姉さん達」

「「「え?」」」

「…彼は、そういう人じゃないんです。なんていうか…その…大事な友達、なんです…彼には彼の、大事な人がいるはず…なので…あまり、騒がないで、いただけると…」


尻すぼみになっていく言葉。

俯いた顔からは表情が窺えなかった。

メイーナなりに、僕を守ろうとしてるんだろうな。

愛し子の変な噂が立てば、自分のせいだと責めてしまうだろう。

本当に良い子だね、メイーナ。

なら僕も、君を守らなきゃ。


「そうだね、確かに僕には大事な人がいる。でも、向ける好意は違っても、メイーナだって僕の大事な人だよ?」

「ユズキ…」

「唯一()に気付いた、大切な友達だからね。僕はいつだって、君が困っている時に助けになるよ。だからお姉さん達、あんまりメイーナを困らせないでやって下さい」

「ご、ごめんね?ナルちゃん。あんまりナルちゃんが浮いた話とかないのに愛し子様と関わりがあるんだもの、つい話を膨らませちゃって…」

「他の場所では言いふらしたりしてないのよ?このお店で集まるあたし達常連で話してるだけなの。不快にさせてたなら本当にごめんなさいね」

「でもナルちゃん、愛し子様との関係を何も教えてくれないんだもの。気になって仕方がないわ」

「やだなぁ、お姉さん達。さっき言ったじゃないですか」

「「「え?」」」


僕は眼鏡を外してボサボサにしていた前髪を掻き上げる。

すると僕の顔を見たお姉さん達が、ポカーンとした後、みるみるうちに驚愕の表情を浮かべていった。

なんなら桃飴のお姉さんなんか顔面蒼白で小刻みに震えている。


愛し子()とメイーナは、友達ですよ?」

「「「ひぃー?!?!?!?!」」」


崩れ落ちて、後ろに下がっていくお姉さん達。

いやいや、そんな露骨に逃げなくても。


「意外と顔だけでわかるもんだね?」

「ユズキのファンクラブがある。そこで肖像画が人気。お姉さん達はみんな入ってる」

「え、ファンクラブまだあるの?」

「昔の騒動から暫くして、平民の間で出来た。成人して顔出ししたら、人数倍増らしい」

「マジか、知らなかった」

「多分悪い事してないから。ちゃんと師長様には許可貰ってるらしい。肖像画もファンクラブ入れば無料で貰える」

「あぁ、金銭発生してないのね…そしてメイーナ、なんで知ってるの?」

「ファンクラブの人が結構買いに来る、愛し子様に会えるかもしれない店だからって。後、メルヒーが入ってる」

「あぁ…」


芸能人御用達のお店に通い詰めるファンみたいな感じか…

というかメルヒー、そんなん入らなくても僕と遊んだりするじゃん…

あれか、発覚前に入ったから、今更辞められないのか。


「とりあえずお姉さん達、別に僕怒ってるわけじゃないから、そんな泣きそうな顔しないでいただけると…」

「…お、怒ってない…んですかぁ…?」

「あ、あんな話してたのに…?」

「いや、お姉さん達も言ってたじゃないですか、妄想は自由だって。実害なければ構いませんよ。ただちょっと今回はメイーナを困らせてたので、程々にねってだけです」

「や、優しい…」

「本物の愛し子様、優しくしてめちゃくちゃカッコいい…」

「というかあたし、昔から知らずに飴とかあげちゃったりしてたの…?」

「美味しかったですよ、ご馳走様です」

「…我が生涯に一片の悔いなし…!!」


あ、桃飴のお姉さんが倒れた。

とりあえず髪と眼鏡を戻して、メイーナにお金を払う。


「んじゃ、メイーナ、またね。お姉さん達もまた」

「ん、また」

「「「愛し子様!さようなら!」」」

「あ、この姿の時はその呼び方禁止で。『ユズキ』って呼んで下さいね」

「「「はい!ユズキ様!」」」


…様、いる?

まぁいいか。

僕は笑顔で手を振ってから、店を後にした。


「…向ける好意は違っても、か…」


そんなメイーナの呟きは聞こえなかったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヘタレ野郎ぉおぉ! そんなして、グズグズしてるくらいなら俺がナタリーを嫁に貰ったるわ!
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