両手に花
遅くなりました!
。゜(゜´Д`゜)゜。
「まぁここ最近、少しだけですがお話は聞いていましたよ、シンディさんから…」
「マジか、全く気付かなかった…」
「あたしも最近『レター』で軽く聞いたくらいー」
王都のスタンリッジ家屋敷なう。
この前僕が帰ってきた事を伝えたら、態々領地からナタリーが戻ってきてくれました、嬉しい。
ニコラも少しだけならとお迎えに行ったら付いてきてくれた、嬉しい。
なので今日は両手に花スタイルでお茶会です。
ルーファスとレオはお仕事中。
「まぁ意外と誠実にアプローチしてたみたいですよ?何回か2人で王都デートしたりとかしたみたいです」
「あたしはちょっといいレストランにドレスアップしてエスコートされながら行ったって聞いたけど?」
「何それ、レオの癖にまともな口説き方」
嘘だろ、レオならなんか外堀埋めていつの間にかお断り出来なくするパターンのやつじゃないの?
ほら、よくあるじゃん?
ヒロインが否定しても周りが信じなくて、「さ、諦めて俺と幸せになろうね?」なーんてにっこり微笑んで逃げ場なくす感じのやつ。
何正攻法で口説き落としてんの、レオの癖に。
でもそこが本気な事を感じさせられるというか…
マジかよ、レオ。
「でもシンディさんって双子とは言え長女でしょう?きちんとドロシーさんも説得した上で口説いてたそうですわ」
「ドロシーちゃん達も元々どっちが家を継ぐとか決めてなかったみたいだから、最初は困惑したみたい。でも覚悟を決めたから、これからは一緒に頑張ろうねって『レター』来たよ」
「そっか、レオが跡継ぎじゃない次男なら何も問題なかったんだけどねぇ…」
「姉と義兄がくっついてしまいましたからね…本当はスタンリッジ家を私が継いで、姉がウィンザー家に嫁いで、レオ君がトリファス家に婿入りすればぴったり解決でしたでしょうに…」
「レオの事が発覚するのが遅かったね。最初にレオ達がくっついていれば、そうなったんだろうけど」
「言えば良かったのにね!」
「まさかこんなに秘密にされてるとは思わなかったわ…前に聞いた時も相手なんかいないって言ってたし…」
「ま、まぁまぁ、おめでたい事ですし、ね?」
「まぁねぇ…」
「レオ達、いつ結婚するの?」
「エドワーズ様がご結婚なさったら、だそうですよ?お仕事の都合でしょうね」
そっか、レオ達の子供が次の影になるんだもんな。
エドワーズ様達のお子様と大体同い年にしなきゃいけないのか。
というか、確か陛下と宰相と師長と影は大体歳の差3歳くらいまでなんだよね。
騎士団長は逆に差を少しつけるらしい。
ひよっこ陛下達を熟年騎士団長が守って指導するように、的な意味合いで。
「兄様達も今度結婚するし、その次はエドワーズ様達で、その次がレオ達で…この1年忙しそうだな」
「ユージェも国内行ったり来たりになりそうだね!」
「それな。とりあえず来週から周り始めるから、ちょっと頑張るかなぁ」
「あら、予定より早いんですね?」
「意外と王都にいてもやる事なくてさ。みんな仕事してるし、僕も愛し子として働くかなぁって」
「あたしはもう毎日勉強ばっかでやんなっちゃうよぉ!!」
「私も補助だけのつもりが結構手伝う事が多くて…お義兄様がよく失踪するんですよね…だから代わりにやる事が…」
…それは王命案件とかのせいなのか、果たしてチャランポランだからなのか…
あのお兄さんはレオ以上に読めないよね。
「ユージェは結婚の予定ないの?」
ニコラの一言に、飲んでた紅茶を吹き出しかけた。
あー、やべ、気管に入ったわ、苦しい。
「ゴホッ…まぁ、ないかな。そういうニコラはどうなのさ?」
「…全く振り向いてくれないの、アレックス様…たまーにこうやって王都来た時に会ったりするんだけど、いつも通り同僚の娘止まりよ…」
あー、想像がつく。
「もういっその事、想いを伝えられたらいかがです?」
「それで面と向かって振られたら、父さんとアレックス様が気まずそうで…あと、単純にあたしも辛い」
「「あー…」」
というか、振られる前提なのね。
アレックス様も特定の誰かがいるわけじゃなさそうだし、恋愛対象は女の人みたいだし、ワンチャンあるんじゃ…
「あたしの事はいいの、もう少しだけ頑張ってみるから。それより、ナタリーちゃんはどうなの?この前婚約の申し込みあったって言ってなかった?」
「に、ニコラちゃん!」
ニコラの発言に顔を赤くするナタリー。
え、婚約申し込まれたの?
「…誰に?」
「…ガラパゴルス公爵家からです。ご長男のゾウニール様の妻にどうか、と…」
「ゾウニール様って、確か20代後半だっけ?ガラパゴルス公爵ってこの前魔物が出たってとこだね」
「うん、見た目はそこそこ、性格もいいらしいよ。昔ご婚約者様を事故で亡くされてずっとご婚約してなかったんだけど、去年舞踏会でナタリーちゃんに会って一目惚れしちゃったんだって」
「何回かダンスに誘われて踊ったりお話したりもしましたけど、確かに優しそうな印象でした。公爵家ですし、いいお話ではあるんですけど…」
「ナタリーちゃん、あんまり乗り気じゃないよねー」
「うふふ…」
少し眉を下げて笑うナタリー。
乗り気じゃないのか…
「…まぁ、もう少し考えてみます。返事は急がないと言っていただけてますし」
「そっかぁ。なんかあれば相談してね!」
「えぇ、ありがとう、ニコラちゃん」
「あ、そろそろあたし帰らなきゃ!ユージェ、送ってくれる?」
「え?あ、もう?わかった、いいよ」
「あら、もう行かれるんですね…また今度はゆっくりお茶しましょうね?」
「うん、ごめんね!ほらユージェ!」
「あー、はいはい。ナタリー、ニコラ送ったらまた戻ってくるから」
「はい、行ってらっしゃいまし。新しい紅茶を淹れて待ってますね」
「うん、行ってきます」
「まったねぇー」
ニコラと手を繋ぎ、指を鳴らす。
風景が変わって着いたのは、フラメンティール領の入口だった。
「んじゃ、ニコラ、また…」
「いいの?」
「え?何が?」
「バレてないとでも思ったの?ユージェともあろう人が動揺しすぎ」
「…ふふ、なんの事やら」
「…急に仲良し5人組で2人も結婚しそうになったら動揺するわよね?」
「んー、そうだね?」
「ユージェのそういうところ、あんまり好きじゃないわよ?」
「僕は勘のいいニコラの事、好きだよ?」
「知ってるわ」
僕に背を向けながらヒラヒラと手を振るニコラ。
ほーんと、観察力はレオ以上かもね。
僕は頭を掻きつつ、指を鳴らして王都へと戻るのであった。
「お帰りなさいまし、ユージェ君」
「ただいま、ナタリー」
「ちゃんとニコラちゃんを送っていただけまして?」
「勿論」
「遠い領地ですのに、まだ魔力は大丈夫なんですね」
「最近長距離の『ワープ』にも大分慣れてきたからねぇ。今度どこか遠くに連れてってあげるよ」
「まぁ、嬉しい。では今度海が見てみたいですわ。あまり行った事がないんです」
「いいよ、行こうか」
海かぁ、そういえば僕もゆっくりした事ないかも。
旅では海通らなかったしね。
多少見かけた程度か。
美味しい海鮮食べたいなぁ。