表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/363

商売事は商売人に

喉をやられました、めちゃくちゃ痛い。

時期が時期だからドキドキしました。

まぁ流石に今すぐその糞爺共を何かする事も出来ないし、お散歩続行です。

アレックス様達に別れを告げて、やってきたのはお馴染みの場所。


「こんにちはー」

「はぁーい?どちら様ぁ?」

「やだっ、ユズちゃんじゃないっ!そういえば帰って来てたのよねぇ!」

「やぁっだ、益々良い男になっちゃってぇ!ユズちゃんがこんなに良い男になったんだもの、きっとレオちゃんも素敵になってるんでしょうねぇ」


…うん、いつも通りの距離感だ、嬉しいな。

というか2人はレオが貴族だって知らないんだったな。


「レオは一応、伯爵家の跡継ぎとして今日もお仕事中ですよ」

「レオちゃん伯爵様になるの?!んもぉ、高嶺の花だわぁ!」

「絶対カッコよくなってるわよねぇ!」


…まさかの、レオ(伯爵家跡継ぎ)> 僕(侯爵家次男&愛し子)。

この2人もブレないなぁ。


「あら、そういえばユズちゃんは何しにここへ?」

「暫く休暇なので、遊びに来たんですよ。何かお手伝いする事とかありますか?」

「愛し子様直々にお手伝いとか、贅沢なお店ねぇ」

「そこはアタシ達の人徳よ♡」

「ははは…」

「じゃあ折角だから、前にいただいたデザイン画を実際に作って下さるかしら?」

「あれ?使わなかったんですか?」

「あんな素敵なデザイン、おいそれと使えるものじゃないわよ、流石にね。王城へ献上するような事があれば使うけど、別にうちは王室御用達じゃないもの」

「まぁ王妃様と王太子様はうちの装飾品お持ちだけどねぇ」


そういやそうだった。

でもそんな凄い素敵ってほどでもないと思うんだけどなぁ。

普段使い出来るタイプと、少しいいとこに行く時に付けるタイプと、パーティーで使えるタイプの3パターンだったんだけど。


「そういえば、ユズちゃんは錬金スキルとかそういうの持ってるの?」

「色々持ってますよ」

「あらあら、流石愛し子様」

「お2人は?」

「アタシが工作スキルと彫刻スキル、ディッキーが工作スキルと付与スキルを持ってるわ」

「へぇ、錬成スキルとかないんですか?」

「アタシ達は手で1から作る事が好きなのよぅ。あれは詠唱1つで出来るけど、魔法で作った量産品とは違う、味のある方がいいというか…1つとして同じものがないって、素敵じゃなぁい?」


ティッキーさんがウィンクしながら手元のラペルピンを見せてくれた。

確かにこのお店にあるのって、1つ1つ微妙な違いがあるんだよね。

あれだ、テディベアでも同じだよね。

あの子達って自分好みの顔があったりするし。


「成る程、では僕も今日は時間もありますし、1から作ってみます。部品は好きに使っても?」

「勿論よ、楽しみにしてるわね」


そこから数刻、結構没頭して作る事が出来た。

途中で何人かお客さんが来て、初見である僕の事を尋ねてたけど、2人は笑うだけで答える事はなかった。

本当にそういうところ、助かります。

そして夕日が窓から差し込み始めた頃、全ての装飾品が完成した。


「でっきたぁー!!」

「もう?!早いわねぇ!」

「規格外ってこう言う事を言うのねぇ!」


奥で作業していた2人が僕の声に反応して出てくる。


「あらあらあらぁ…デザインのものより、ずぅっと素敵じゃなぁい…!!」

「この精密な細工…まさに国宝級ねぇ…!!」

「え、えへへ、そんなにですか?嬉しいなぁ」

「やっぱりコレ、売れないわね」

「そりゃそうよ、売れないわよ」

「なんで?!」


折角作ったのに?!


「一般庶民…いいえ、これじゃ貴族だって簡単に買える値段が付けられないわ。せめて王族だけかしら…」

「もしやるとしても、これを参考にアタシ達が模造品作るしか売れないわねぇ」

「…ねぇユズちゃん、もし良ければこれ、外のショーウィンドウに飾ってもいいかしら?」

「ショーウィンドウ?」

「ユズちゃんが作った作品ですって展示して、みんなに見てもらうのよ。もしも同じデザインが欲しいって人にはアタシ達が模造品を作るわ。それで材料費を抜いた売り上げの8割…いえ、9割は貴方に渡す。それでどうかしら?」

「いやいや、9割って貰い過ぎでしょう?!」

「だって元々貴方が作った物なんだもの、なんなら売り上げ全部でもいいのよ?」

「普通は愛し子様が作った物を使って商売するのは処罰物よ?でもねぇ…折角こんな素敵なんだもの、色んな人と共有したいじゃない?」

「アタシ達はね、魅せる(・・・)事が好きなのよ。ユズちゃんがこんなに素敵な物を作れるんだって、みーんなに見てもらいたいの」


…この人達は、本当に好きなんだな、こういう装飾品なんかが。

そして僕をユズとして扱ってくれる。

まぁ悪用しないだろうし、今回はいいか。

後で父様達にも報告しておこう。

ベティ様とエドワーズ様はここを知ってるはずだから、わかってくれるよね。


「…では、僕から条件が3つ。1つ目はもし模造品が欲しいという人が現れたら、どこの誰なのかを僕にきちんと報告する事。2つ目はこの装飾品達には僕とお2人しか触れないように『バリア』を付与します。そして最後に…これが僕の作った物だという証明書を作ってサインを書きます。それはしまっておいて下さい、いいですか?」

「全然構わないんだけど…寧ろ2つ目と3つ目はやってもらっていいのかしら?ユズちゃんの名前にしようと思うんだけど…」

「盗まれても嫌ですしね。もし何かあればお2人が身に付ける事で害悪から守ってくれますから。証明書は何かあった時用ですよ」

「そうねぇ、もし何かあってこれが愛し子様の作品だと伝えなきゃいけなくなった時、アタシ達が本物だって言ってもすぐにはわからないでしょうし…」

「じゃあ、悪いんだけどお願いしようかしら」

「あ、もう1つお願いがあるんですけど」

「「何かしら?」」

「僕、とある製品を売りたいんです。愛し子って普段は仕事ないから、稼ぐ事も出来なくて。それでその製品を売るための隠れ蓑としてお2人を利用させて下さい」

「まぁ、ユズちゃんって偉いわねぇ」

「本当に。確か愛し子様って有事以外は遊んで暮らせるんじゃなくて?」

「レオ達が働いてるのに、1人だけ遊び呆けてるのも…心苦しくって。それと従者にもお給料払わなきゃですしね」

「本当に偉いわぁ!俄然協力しちゃう!焼くなり煮るなり好きにしてぇ!」

「ユズちゃん素敵ぃー!」

「レオとどっちが素敵?」

「「レオちゃん」」

「即答か」


どんだけレオの顔が好きなんだ、この2人。


「それで、何をすればいいのかしら?」

「僕が製品を定期的…月に5セットくらい卸すので、売っていただければいいです。もし誰が作ったか聞かれたら、『新進気鋭の作家、ユズノキという子だ』って言って下さい」

「ユズノキ?あぁ、アタシ達はユズちゃんって呼んでるものね、わかりやすいわ」

「愛し子様だと匂わせなければいいのね?」

「はい。あと性別も言わなくていいです。多分一部の貴族はその名を王妃様か騎士団長から聞いて知ってると思います。だからもしかしたら貴族の人が聞き付けて買いに来るかも…」

「それならついでにうちの装飾品も買ってって貰うからちょうどいいわね!」

「『ラペルピン発祥のお店』って言えば買ってくれるお客様も多そうね!」

「「やだ、一石二鳥じゃなぁ〜い♡」」


ポジティブぅ!


「では月5セットという単位は変えません。数量限定という付加価値を付けます」

「注文方法やお客様の優先順位なんかは?」

「平民、貴族問わずに先着順で。予約での次月持ち越しはしません。僕が納品するのは月に1回、日付は決めず、です。納品してお2人の手元に5セットある状態から注文を受けた5人まで。勿論1人1セット。貴族に関してはお金を多く払うから予約してくれ、とかもなし。脅してくる人は論外。その2つに抵触した場合は僕に連絡を。然るべき処置を取ります」

「うふふ、愛し子様がバックに付いてるって心強いわねぇ」

「たまぁにいる横暴貴族に歯向かえるなんて、滅多にないものねぇ」

「後は張り込んで待ったりする人がいたら騎士団に通報してもらって構いません。騎士団長には話を通しておきます。こちらは『待機禁止』などの看板を出して先手を打ちましょう」

「ねぇユズちゃん、ここまで聞いてなんだけど、そこまで大事になるような物を売るつもりなの?」

「いくらユズちゃんが作った物だとしても、身分隠してるんだしそこまで人が殺到するものなのかしら…?」

「まずはお2人で試してもらっていいですか?また数日後に感想を聞きに来ますので」


そう言って僕はアイテムボックスを背中で開き、中から紙袋を2つ取り出した。

そう、これは例の美顔器と専用化粧水!

まぁアイカット様に渡した物よりも美顔器は形を変えたりしたけどね。

化粧水も無香料にしました。


「どうやって使うの?」

「こっちの専用水を顔に塗って、この器械を顔に当てて動かします。顔全体をなぞる様に。すると…」

「「すると…?」」

「今までにないくらい、肌がうる艶ぴっかぴかのもっちもち赤ちゃん肌に」

「「やるわ!!!!」」


うわぉ、食い気味怖ぇ。


「顔だけなの?!」

「腕や足は?!」

「構いませんけど、専用水の減りが早いかもしれませんね。専用水は器械を持ってる人ならば別売りしましょう。空の容器を持ってきた人に詰め替えて売っていいです。予備の専用水はタンクにでも入れて持ってきますから」

「値段はどうするの?」

「正直、僕の手間隙除けば材料費はそこまででもないんです。だからお2人が使ってみて、適正価格を決めて貰えませんか?そこからお2人にも手数料を払いますので」

「わかった、やるわ!」

「今日から楽しみね!」

「お風呂上がりや洗顔後が効果得られやすいと思いますので」

「「じゃあ今日はもう店閉めてお風呂入ってくるわ!」」


2人が素早過ぎる。

まぁ元々売るつもりだったし、2人なら上手くやってくれるだろう。

あ、先にベティ様に1セット渡しておかないと殺られるかもしれない。

なんだかんだ渡してなかったわ。

後は母様にも渡して…

フローネにはまだ早いかな?

成人したらお祝いにあげよう。

あんまり身内に渡し過ぎるとバレるかもしれないしね。

これで収入面は解決、ジーンも未来の侍女さんも、奥さんだって養っていける。


…え、売れるよね…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ